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18 飛び級DEテンプレ

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「学園の制服です」
「シャト、可愛いな」
「えへへ」

 殿下が2年生の時に、俺は一年生へ飛び級で超早期入学した。帝国学園始まって以来の天才とか言われたけどそんなことない。先取勉強しただけだ。俺は頑張っただけだぜ。あとホルランド殿下の強い要望もあったとか聞いてるけれど、それは眉唾っぽい。出来る王太子のこの人がそんなわがままもどきを言うわけがない。

「一緒に学園へ通おうね」
「はい! 」

 学園の2年生ともなると殿下ももう16歳。夏に誕生日があるので17歳になる。もう、イケメン。すげーイケメン。昔より少し色が濃くなった銀髪がお日様に透けると本当にキラキラしてるし、青い目は青空かな? 海かな? ってくらい澄んでる。それでいて時期皇帝に相応しい力強さもあるし、何より笑顔がとても素敵だ。滅茶苦茶モテるらしい……だよね、分かるよ。そんな俺の元に懐かしの宰相さんからお手紙が届いた。

〈ホルランド殿下の婚約者を女性に変えたほうが良いのでは? という意見が帝国内から上がっているそうです。どう致しますか?〉

 それに俺は答える手紙を出す。

〈もちろんその方向で。俺が嫁じゃ子供出来ないじゃん。あんなイケメンの子孫が残らんなんてもったいないだろ?〉

〈……分かりました〉

 ってやり取りした。それで良いと思う。どうせ人質みたいな俺だし。それに学園につくと美人の令嬢がいっぱいいたし、当たり前ながら殿下モテモテだった。

「王太子殿下おはようございます」
「王太子殿下今日もご機嫌麗しゅう」
「王太子殿下~」

 ホルランド様が学園に着くとすぐに何人もの女生徒に囲まれる。貴族名鑑も暗記している俺はわかるけど、誰も彼も高位貴族のご令嬢達だ。彼女達にもきちんと婚約者はいるんだけれど、もし、王太子殿下に見初められたら当然鞍替え! って感じの意気込みを感じる。いいよ、俺、女の子にガン無視されちゃった。いいよいいよ。だよねだよね、分かるよ。
 まだ背も低い俺は彼女達のふわふわと広がったスカートの裾に押されて隅っこの方に追いやられる。も、もう少ししたら背も伸びるはずー! あわあわと慌てていると手が伸びて来て、追いやられる俺の体を支えてくれる。ああ、いつも繋いでいる温かくてちょっと大きな優しい手だ。俺のことを可愛い、可愛いって抱き寄せてくれる優しい人の温かい手。

「シャト、大丈夫かい? 一緒に行こう。一年生の教室まで案内してあげる」
「あ、はい……」

 殿下、女の子達を無視する。良くないですよ……でもちょっとだけ嬉しかった。しかも手をつないでくれた……俺、小っちゃいからね。なんせまだ11歳だからね。俺の誕生日は秋。秋になったら12歳。でも全然小っちゃいんだ。だから心配になったんだと思う。
 それでも俺は手を繋いでホルランド様と一緒に歩く。学園に来て良かったな、ってこう言う時は思った。

 俺の学園生活はあんまり楽しいものじゃなかったけれど、殿下と一緒に通ったり、お昼を食べたりするのは楽しかった。あと勉強も意外と簡単だったから大丈夫だったけど、剣術はダメだった……。俺、運動神経死んでた。その辺は剣術の教授も大目に見てくれて助かった。何せ年齢の差もあるせいか体の大きさが他の同級生とは違うんだ。俺だけ子供って感じで打ち合いなんて見ただけで無理だって判断された。
 どうも年齢だけじゃなくて血統的な物もあるっぽいと後から分かった。帝国人は俺の国の人達に比べて体が大きくて力が強いんだ。背の高さはあまり変わらないけれど、体つきがまるで違う……そのせいもあってか俺は女生徒達からかなり嫌われたようだ。まあ曲がりなりにも男の俺が彼女達の俺が追い求める理想の体型だったんだから仕方がない所はあるんだけどね。

「フン! 殿下の婚約者がこんな男なんて!」

 放課後、殿下のいない隙を見計らうように令嬢達に呼び出されるテンプレ頂きましたーーーー! 俺はちょっと心の中でワクワクしたのは内緒だぞ? それからテンプレをいっぱい貰った。凄い、本当にこんなこと言われちゃうし、こんな事されちゃうんだ。

「あ……」

 教室の俺の席だけ水浸しだった。教科書がなくなっていて、焼却炉で見つかった。燃える前でセーフ。ノートが池に浮かんでいて新しいのに書き写すのが大変だった。インク壺が消えてた。羽ペンが折れてた。むむむ。
 備品を買い直すのにお金がかかってしまう……俺のお小遣いそんなにないのに。何かアルバイトでもしないとまずいなあなんて思っていた矢先。

「あーら失礼!」
「あ……」

 学園の制服のブラウスにいっぱいインクをかけられちゃった……。インクって洗っても落ちないんだ。どうしよう……俺のお小遣いじゃ新しいブラウス、買えないぞ。困った困ったと思っているうちに放課後になってしまって、殿下と帰る時間になってしまう。
 何とか隠してみようとしても、隠せる大きさじゃない汚れ。じーっとホルランド様にインクで汚れたブラウスを見られてしまった……これ、なんて言い訳しよう、手が滑ったっていえばいいかな? 俺が何とか言い訳を考えていたら、真剣な目のホルランド様にちょっと怒られた。

「シャト。流石にもう見逃せないよ。シャトが訴えて来ないから今まで見守って来たけど、もう限界だ。私は怒っているんだからね?」
「……ごめんなさい」
「どうしてシャトは私に助けてっていわないの?」

 そこぉ?怒る所??

「だって、大したことないですし……この程度何でもないです」
「シャトが何でもなくてもシャトを軽く見る者があの学園にいるだけで私は腹立たしいよ? 」
「……ごめんなさい」

 俺がつい俯くと、頭をなでなでされてしまった。

「シャトは悪くないのに、謝らせちゃったね、ごめん」
「わ、私こそごめんなさい……ホルランド様の婚約者としてしっかりしていないのは駄目ですよね」
「シャト……シャトは可愛いなあ」

 いや、そう言う話じゃなかったよね?! 殿下ぁ!
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