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16 俺、えらーい
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ホルランド様とシャトルリア、俺は結構仲良く暮らし始めた。勝手知らない帝国の宮廷だったけど、俺は勉強頑張ってるから、大人からのウケがいい。だって人生2周目なら気が付くだろ? 勉強は早いうちにこなすに限るって。逃げてたってやらなきゃならないし、どうせやるなら叱られる前にやれ。頭の柔らかい子供のうちにやっとけば効率がいいってやつだ。
「シャトルリア様は本当にお利口さんですわ」
「えへへ、ありがとうございます」
家庭教師に逆らっても何にもいいことないからね。それより真面目にやって覚えちゃえば、公認で遊べたりいろんなもの買ってもらえたりいいことずくめだろ? 俺、えらーい。ていうか、本物のシャトルリアならちゃんとやったんじゃねえかな? って思うこともあるんだよね。
無邪気そうに見える笑みを浮かべながら時々考えるんだ、あの時色々話した赤子の、本物のシャトルリアの魂。死ぬしかない短い運命だったのに、あいつお母さんの顔が見たいってだけで頑張った。最後なんて息も詰まって苦しかったろうに、頑張って頑張って苦しいのを耐えて……ほんのちょっとだけお母さんの顔をみて、満足して天に昇ってしまった。望みは叶ったんだろうけどさ、もうちょっとあの努力に対するご褒美を上げてもいいんじゃねえかって思うよ。あの神ムカつくし。俺をポイ捨てしやがったし!
で、このシャトルリアの体に入ったらあんまりちゃらんぽらんな生き方もできねえかなぁ~とか思うわけじゃん。天国へ行った 本物のシャトルリアが馬鹿にされないくらいの生きざまをしないとな、って……。
「今日のお勉強はここまでにしましょう」
「ありがとうございます、ひっこりー夫人」
俺はちゃんと子供らしく振る舞ったり子供らしく喋たりしてるぞ、俺擬態してるえらーい。座っていた椅子から降り、ぺこりと頭を下げると、行儀にもうるさいヒッコリー夫人は満足そうに頷く。今日も無事、大人達から満点を貰い、ほっと一安心だ。早めに部屋から出ると別の部屋でホルランド様がお勉強していた。頑張ってるな!
「シャトルリア様、ちょっと覗いてみましょうか?」
「でんかのおじゃまになることはボク、したくないです……」
「大丈夫ですよ。失礼します」
ヒッコリー夫人はウインクして扉をノックして開けた。え、いいのか? 俺も続いてご挨拶をする。俺達が現れたのでホルランド様はびっくりして目を丸くしている。
「おじゃまいたします……」
「シャト!?」
「でんか、おべんきょうちゅうしつれいいたします。すぐかえりますね」
「ううん、シャトも隣にきて? 一緒に教授のお話を聞いてくれたら嬉しいな」
何か知らんが俺まで追加勉強か? と思ったけど、どうせそのうち習うんだ。聞いておこうと思って殿下のお隣に腰をかけさせてもらった。やけにニコニコして殿下は嬉しそうだ。教授はあまり良い顔をしなかったけれど、殿下の上機嫌が半端なかったのでそのまま続けることになった。
「では続きを始めますよ、さて……」
教授の話は流石に難しかったけれど、殿下が色々教えてくれたのでなんだか分かりやすかった。
「それで、その年に洪水が起こったんだ」
「だからかわをこうじしたんですね」
「そうなんだ。そこからランツ川は氾濫しなくなって東の穀倉地帯が安定したんだ」
「でんかはなんでもおしりになられるんですねえ、すごい」
「そ、そうかな?」
殿下とはいえまだ11歳。褒めたら褒めただけ伸びる子だった。いっぱい褒めてやろ……どうも殿下のお勉強を見てくれる教授は厳しくする人みたいであまり褒めてくれないらしい。しょうがねえ、俺が褒めて伸ばすぜ。俺が質問すると殿下が丁寧に答えてくれる。こういうのって復習になったり、暗記しやすくなるって俺知ってる、俺えらーい。
教授も俺には早すぎる内容で、理解できずホルランド様の邪魔になると思っていた。しかし俺は大人しく話を聞いているし、しかもホルランド様の注釈を聞きながら内容を理解していると分かったようだ。
「たまにシャトルリア様がやって来られると殿下のやる気が伸びるようですわ」
「むう……」
教師たちの中でそう結論付けられたらしく、俺は週に何度か殿下のお勉強にお邪魔することになってしまった。まあしゃあない……どうせ後で覚えるんだ、今覚えても一緒だと思うことにした。いや、本当に難しいんだよ?!
「シャトルリア様は本当にお利口さんですわ」
「えへへ、ありがとうございます」
家庭教師に逆らっても何にもいいことないからね。それより真面目にやって覚えちゃえば、公認で遊べたりいろんなもの買ってもらえたりいいことずくめだろ? 俺、えらーい。ていうか、本物のシャトルリアならちゃんとやったんじゃねえかな? って思うこともあるんだよね。
無邪気そうに見える笑みを浮かべながら時々考えるんだ、あの時色々話した赤子の、本物のシャトルリアの魂。死ぬしかない短い運命だったのに、あいつお母さんの顔が見たいってだけで頑張った。最後なんて息も詰まって苦しかったろうに、頑張って頑張って苦しいのを耐えて……ほんのちょっとだけお母さんの顔をみて、満足して天に昇ってしまった。望みは叶ったんだろうけどさ、もうちょっとあの努力に対するご褒美を上げてもいいんじゃねえかって思うよ。あの神ムカつくし。俺をポイ捨てしやがったし!
で、このシャトルリアの体に入ったらあんまりちゃらんぽらんな生き方もできねえかなぁ~とか思うわけじゃん。天国へ行った 本物のシャトルリアが馬鹿にされないくらいの生きざまをしないとな、って……。
「今日のお勉強はここまでにしましょう」
「ありがとうございます、ひっこりー夫人」
俺はちゃんと子供らしく振る舞ったり子供らしく喋たりしてるぞ、俺擬態してるえらーい。座っていた椅子から降り、ぺこりと頭を下げると、行儀にもうるさいヒッコリー夫人は満足そうに頷く。今日も無事、大人達から満点を貰い、ほっと一安心だ。早めに部屋から出ると別の部屋でホルランド様がお勉強していた。頑張ってるな!
「シャトルリア様、ちょっと覗いてみましょうか?」
「でんかのおじゃまになることはボク、したくないです……」
「大丈夫ですよ。失礼します」
ヒッコリー夫人はウインクして扉をノックして開けた。え、いいのか? 俺も続いてご挨拶をする。俺達が現れたのでホルランド様はびっくりして目を丸くしている。
「おじゃまいたします……」
「シャト!?」
「でんか、おべんきょうちゅうしつれいいたします。すぐかえりますね」
「ううん、シャトも隣にきて? 一緒に教授のお話を聞いてくれたら嬉しいな」
何か知らんが俺まで追加勉強か? と思ったけど、どうせそのうち習うんだ。聞いておこうと思って殿下のお隣に腰をかけさせてもらった。やけにニコニコして殿下は嬉しそうだ。教授はあまり良い顔をしなかったけれど、殿下の上機嫌が半端なかったのでそのまま続けることになった。
「では続きを始めますよ、さて……」
教授の話は流石に難しかったけれど、殿下が色々教えてくれたのでなんだか分かりやすかった。
「それで、その年に洪水が起こったんだ」
「だからかわをこうじしたんですね」
「そうなんだ。そこからランツ川は氾濫しなくなって東の穀倉地帯が安定したんだ」
「でんかはなんでもおしりになられるんですねえ、すごい」
「そ、そうかな?」
殿下とはいえまだ11歳。褒めたら褒めただけ伸びる子だった。いっぱい褒めてやろ……どうも殿下のお勉強を見てくれる教授は厳しくする人みたいであまり褒めてくれないらしい。しょうがねえ、俺が褒めて伸ばすぜ。俺が質問すると殿下が丁寧に答えてくれる。こういうのって復習になったり、暗記しやすくなるって俺知ってる、俺えらーい。
教授も俺には早すぎる内容で、理解できずホルランド様の邪魔になると思っていた。しかし俺は大人しく話を聞いているし、しかもホルランド様の注釈を聞きながら内容を理解していると分かったようだ。
「たまにシャトルリア様がやって来られると殿下のやる気が伸びるようですわ」
「むう……」
教師たちの中でそう結論付けられたらしく、俺は週に何度か殿下のお勉強にお邪魔することになってしまった。まあしゃあない……どうせ後で覚えるんだ、今覚えても一緒だと思うことにした。いや、本当に難しいんだよ?!
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