上 下
16 / 69

16 俺、えらーい

しおりを挟む
 ホルランド様とシャトルリア、俺は結構仲良く暮らし始めた。勝手知らない帝国の宮廷だったけど、俺は勉強頑張ってるから、大人からのウケがいい。だって人生2周目なら気が付くだろ? 勉強は早いうちにこなすに限るって。逃げてたってやらなきゃならないし、どうせやるなら叱られる前にやれ。頭の柔らかい子供のうちにやっとけば効率がいいってやつだ。

「シャトルリア様は本当にお利口さんですわ」
「えへへ、ありがとうございます」

 家庭教師に逆らっても何にもいいことないからね。それより真面目にやって覚えちゃえば、公認で遊べたりいろんなもの買ってもらえたりいいことずくめだろ? 俺、えらーい。ていうか、本物のシャトルリアならちゃんとやったんじゃねえかな? って思うこともあるんだよね。
 無邪気そうに見える笑みを浮かべながら時々考えるんだ、あの時色々話した赤子の、本物のシャトルリアの魂。死ぬしかない短い運命だったのに、あいつお母さんの顔が見たいってだけで頑張った。最後なんて息も詰まって苦しかったろうに、頑張って頑張って苦しいのを耐えて……ほんのちょっとだけお母さんの顔をみて、満足して天に昇ってしまった。望みは叶ったんだろうけどさ、もうちょっとあの努力に対するご褒美を上げてもいいんじゃねえかって思うよ。あの神ムカつくし。俺をポイ捨てしやがったし!
 で、このシャトルリアの体に入ったらあんまりちゃらんぽらんな生き方もできねえかなぁ~とか思うわけじゃん。天国へ行った 本物のシャトルリアが馬鹿にされないくらいの生きざまをしないとな、って……。

「今日のお勉強はここまでにしましょう」
「ありがとうございます、ひっこりー夫人」

 俺はちゃんと子供らしく振る舞ったり子供らしく喋たりしてるぞ、俺擬態してるえらーい。座っていた椅子から降り、ぺこりと頭を下げると、行儀にもうるさいヒッコリー夫人は満足そうに頷く。今日も無事、大人達から満点を貰い、ほっと一安心だ。早めに部屋から出ると別の部屋でホルランド様がお勉強していた。頑張ってるな!

「シャトルリア様、ちょっと覗いてみましょうか?」
「でんかのおじゃまになることはボク、したくないです……」
「大丈夫ですよ。失礼します」

 ヒッコリー夫人はウインクして扉をノックして開けた。え、いいのか? 俺も続いてご挨拶をする。俺達が現れたのでホルランド様はびっくりして目を丸くしている。

「おじゃまいたします……」
「シャト!?」
「でんか、おべんきょうちゅうしつれいいたします。すぐかえりますね」
「ううん、シャトも隣にきて? 一緒に教授のお話を聞いてくれたら嬉しいな」

 何か知らんが俺まで追加勉強か? と思ったけど、どうせそのうち習うんだ。聞いておこうと思って殿下のお隣に腰をかけさせてもらった。やけにニコニコして殿下は嬉しそうだ。教授はあまり良い顔をしなかったけれど、殿下の上機嫌が半端なかったのでそのまま続けることになった。

「では続きを始めますよ、さて……」

 教授の話は流石に難しかったけれど、殿下が色々教えてくれたのでなんだか分かりやすかった。

「それで、その年に洪水が起こったんだ」
「だからかわをこうじしたんですね」
「そうなんだ。そこからランツ川は氾濫しなくなって東の穀倉地帯が安定したんだ」
「でんかはなんでもおしりになられるんですねえ、すごい」
「そ、そうかな?」

 殿下とはいえまだ11歳。褒めたら褒めただけ伸びる子だった。いっぱい褒めてやろ……どうも殿下のお勉強を見てくれる教授は厳しくする人みたいであまり褒めてくれないらしい。しょうがねえ、俺が褒めて伸ばすぜ。俺が質問すると殿下が丁寧に答えてくれる。こういうのって復習になったり、暗記しやすくなるって俺知ってる、俺えらーい。
 教授も俺には早すぎる内容で、理解できずホルランド様の邪魔になると思っていた。しかし俺は大人しく話を聞いているし、しかもホルランド様の注釈を聞きながら内容を理解していると分かったようだ。

「たまにシャトルリア様がやって来られると殿下のやる気が伸びるようですわ」
「むう……」

 教師たちの中でそう結論付けられたらしく、俺は週に何度か殿下のお勉強にお邪魔することになってしまった。まあしゃあない……どうせ後で覚えるんだ、今覚えても一緒だと思うことにした。いや、本当に難しいんだよ?!
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...