上 下
7 / 69

7 抜き打ち検査

しおりを挟む
「デードン領の視察である!」
「ひいっ! そんな急に!」
「いらっしゃいませ、騎士様。おもてなしの準備は出来ていませんが、良ければこちらに」

 マチェット君の苗字はデードンという。マチェット・デードン子爵令息。これがマチェット君の本名ね。で、中央からデードン領に抜き打ち検査が来た。マチェット父は慌てて右往左往してるけど、マチェット君はちゃんと対応できたみたい。

「デードン領はあまり良い噂を聞かない。見回るぞ」
「もちろんでございます。私達の気の回らぬところがあればご指摘していただきたいです」

 すごい……マチェット君は騒ぐことなくきちんと対応できている。これが勉強の成果かー良かった良かった。

「マチェット・デードン。魔法が使えるようになったとは本当か?」
「はい。ある日突然ですが。まだ弱い力ながら日々鍛錬を繰り返しております」

 すげえなマチェット君、やるじゃんマチェット君。マチェット君が検査にきた騎士を案内して領内を歩けば、領民はそんなに変な顔しない。これがマチェット父なら皆嫌そうな顔をして騎士の印象は最悪だろうけど、マチェット君なら皆にこにこしてる。

「おや、坊ちゃん。随分かっこいいお連れ様ですね」
「査察にいらした騎士様だよ、皆挨拶して」
「うひゃあこれは都会の騎士様。こんな田舎にようこそおいで下さいました」
「……どうだ? ここの暮らしに不満はないか?」

 騎士様の問いかけに、領民は固くなるけどマチェット君が笑っているから素直に答えている。

「へえ、そりゃあここはあんまりお金持ちの領じゃないですから、大変なことは大変ですが、坊ちゃんのお陰でだいぶ住みよくなりました」
「ふむ……」

 騎士を連れてあちこち視察をしてマチェット君のお家に帰ってくる。使用人達は慌ただしく歓迎の準備をしているけれど、マチェット父とマチェット母だけ右往左往して焦ってなにもしてない。知らんけど邪魔だろうな。勿論、使用人に指示を出しているのはマチェット君だ。色々読み漁った本のお陰もあるし、メイドや執事とも連携が取れているから頷くだけで色々手配できている。

「デードン領が腐敗しているという話だったが……そうとは思えないな。君のお陰かな? マチェット」
「えっと……」

 そうだなあ、マチェット君が駄目だったころはデードン領駄目だったと思う。セイル誘拐事件みたいなの普通にあったしね。マチェット君がランニング始めて、見回るようになって……あの小悪党たちも改心させたりしてからちょっとづつ良くなってだし。
 田舎のデードン領の噂が都会に届くまで時差があったんだろう。良かったんじゃない? マチェット君や。

しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...