【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ

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IF編 闇へ

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「シロウ……私のシロウ。もう誰にも渡さない」

「ぼ、僕の名前はロウです……」

「そうだったな」

 私は誰からも好かれる笑顔を選んで作った。この笑顔、魔王になってからもなかなか重宝する良いものだ。さて、シロウ……ロウを少ししないと我が家まで連れてはいけないだろう。何せ我が家は混沌渦巻く悪の中心だ。ただの人間の子供には少しきつすぎる。

「ティリス」

「そうですね。小さな魔石を埋め込むところから始めてみましょう」


 正体を隠し、人間の街で宿を取った。金はたっぷり払い、少しくらい騒いでも何もなかった顔をするだろう。

「ロウ、少し痛むが我慢せよ」

「え?な、なんですか?う、い、いたああああああっ!」

 ごりっと小さな魔石を首のへこんだ所に押し入れた。薄い皮膚が破れて、血がでる。ああ、シロウは痛がる声もまた愛らしい。

「い、痛い!痛いです!取って!取って!!」

「駄目だ。少しすれば馴染むからそれまで我慢しろ」

「痛いっいたいよおおっ!助けて……っ」

 魔石は私の力の塊みたいなものだ。人間が触れればやけどをしたように痛む。それを体の中に押し込まれてロウはボロボロ涙を流す。

「どうだ?」

 あまり一度にやれば、人間の体は死んでしまう。

「あと2.3個は大丈夫でしょう。流石魂の質が違いますね。普通の人間なら発狂している所です」

「流石だな」

 私が次の魔石を取り出すのを見て、ロウは恐怖に顔をゆがめた。ああ、なんて可愛いんだ。

「やめてやめて!!お願い許して!痛いのは嫌、いやああああああ!」

 へその下あたりに埋め込むと、やはりロウは泣き叫ぶ。なんて可愛らしい声なんだろう。三つ目を埋め込むと気を失ってしまった。

「ここらで限界か?」

「今日の所は。あと10個も入れておけばとりあえず城に連れていけるでしょう」

「そうか、楽しみだな。もうこんな危険な場所に置いておきたくない。早く安全な我が家に連れて帰りたいな」

 さようでございますね、とティリスはにっこり笑って同意した。


「私の名前はレンテドールという。そう呼ぶように」

「ひっ!」

 ロウは私の腕の中でガタガタと震えている。よっぽど魔石を打ち込まれるのが嫌だったのか、まだ6歳のロウの心は折れているようだ。

「青ざめ、震えているねロウ。私が怖いかい?」

「こ、こ、こわい、です……痛いの、いや、です……許して」

 ガタガタと震えるあまり肉のついていない頬を撫でる。

「必要なことだ。我慢しなさい」

「い、いやああああああ!」

 ロウの叫び声は私を満たす。ああ、なんと可愛らしい私のシロウ!これが愛しいものを腕に抱く喜びか!歓喜に打ち震えながら、気を失ったロウを我が家に運び込んだ。

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