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IF編 闇へ
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「しんじらんない!!」
リリーシュアは自分が創造した大地の上に立っていた。
「……でも悪くないわね。何せ自分で作ったんだし!」
鼻歌を歌いながら、歩き出す。ガマの穂みたいなものを振り回しながらご機嫌だったが、すぐにうずくまった。
「靴とかないし……」
足が痛んだ。なんとか道らしき場所に出ると、遠くから馬車が来るのが見えた。
「のせてー!」
リリーシュアは手を振って、馬車を止める。
「へぇ、可愛いじゃねーか!」
野蛮そうな男達だったが、リリーシュアは気を良くした。
「そりゃそうよ!私は女神だからね!」
「女神ぃ?へぇ……なるほどなぁ……」
「ん?」
男達の下卑た笑いが深くなる。
「じゃ、女神様の御慈悲でも貰おうかぁ?」
「え?い、いやあああーーー!」
この世界で女神といえば、娼婦の事だ。リリーシュアは堕ちて行く。
自分の身を証明する物がない。お金もない。そして顔が良い若い女。リリーシュアはすぐに娼館に売られた。
「……嫌だけど、悪くない、かも?」
リリーと呼ばれるようになり、娼館でも人気者になった。リリーには貴族の客もつき、贈り物も貰った。
「ふふん、やっぱり私ってば女神じゃない?」
ただ、リリーシュアは忘れていた。人は老いると言うことを……。
「なんでよ」
リリーは歳をとっていった。娼館の一番は若い子に移る。リリーに贈り物をくれた貴族も他の若い子に移る。
「何よ!私の事を身請けしてくれるっていったのに!」
「うるさい!」
薹が立ったリリーに見向く者はない。
「何で早目に貰われておかなかったのよ」
「だって、私可愛いからまだいけるって思ったんだもん」
そういうと、娼館の仲間はギャハハ!と下品に笑った。
「ババァが可愛いとか!終わってるー!」
とうとうリリーは娼館からも追い出される。何せ周りと上手くやる事が出来ないのだ。
空気は読めない、自分勝手。
「出ておいき!」
「うっさい!こっちから出てってやるわ!」
リリーは放り出され街角に立つ生活を強いられる。
「なんで、何でこんなことに……」
寒さに震えて、飢え、暴力に涙する。
「もう嫌だ……誰か、誰か……」
そう言いながら、食べ物を買わず酒を浴びる。
痛みも苦しみも老いも、怪我もするし病気もするのに、リリーは死ななかった。
「し、しんじらんない……」
リリーはある日、子供ができた事を知った。
「私が、子供を??ありえないわ!」
リリーの腹はどんどん膨らんでいき、客が取れない日が続く。
「なんで!なんで、こいつ!死なないの?!」
無事にリリーは子供を産んだ。
「不細工」
誰の子供が分からない男の子をリリーは産んだ。
「要らないんだけど?!」
「馬鹿をお言いでないよ!リリー」
「ふん!育ったらそこそこで売るわ。金になるかしら?」
「あんた……本当に人の子かい?!」
街角に立つ仲間にすらリリーは言われたが悪びれなかった。
「私は女神なんだから!」
祈る者はもはや誰もいなかったが。
リリーシュアは自分が創造した大地の上に立っていた。
「……でも悪くないわね。何せ自分で作ったんだし!」
鼻歌を歌いながら、歩き出す。ガマの穂みたいなものを振り回しながらご機嫌だったが、すぐにうずくまった。
「靴とかないし……」
足が痛んだ。なんとか道らしき場所に出ると、遠くから馬車が来るのが見えた。
「のせてー!」
リリーシュアは手を振って、馬車を止める。
「へぇ、可愛いじゃねーか!」
野蛮そうな男達だったが、リリーシュアは気を良くした。
「そりゃそうよ!私は女神だからね!」
「女神ぃ?へぇ……なるほどなぁ……」
「ん?」
男達の下卑た笑いが深くなる。
「じゃ、女神様の御慈悲でも貰おうかぁ?」
「え?い、いやあああーーー!」
この世界で女神といえば、娼婦の事だ。リリーシュアは堕ちて行く。
自分の身を証明する物がない。お金もない。そして顔が良い若い女。リリーシュアはすぐに娼館に売られた。
「……嫌だけど、悪くない、かも?」
リリーと呼ばれるようになり、娼館でも人気者になった。リリーには貴族の客もつき、贈り物も貰った。
「ふふん、やっぱり私ってば女神じゃない?」
ただ、リリーシュアは忘れていた。人は老いると言うことを……。
「なんでよ」
リリーは歳をとっていった。娼館の一番は若い子に移る。リリーに贈り物をくれた貴族も他の若い子に移る。
「何よ!私の事を身請けしてくれるっていったのに!」
「うるさい!」
薹が立ったリリーに見向く者はない。
「何で早目に貰われておかなかったのよ」
「だって、私可愛いからまだいけるって思ったんだもん」
そういうと、娼館の仲間はギャハハ!と下品に笑った。
「ババァが可愛いとか!終わってるー!」
とうとうリリーは娼館からも追い出される。何せ周りと上手くやる事が出来ないのだ。
空気は読めない、自分勝手。
「出ておいき!」
「うっさい!こっちから出てってやるわ!」
リリーは放り出され街角に立つ生活を強いられる。
「なんで、何でこんなことに……」
寒さに震えて、飢え、暴力に涙する。
「もう嫌だ……誰か、誰か……」
そう言いながら、食べ物を買わず酒を浴びる。
痛みも苦しみも老いも、怪我もするし病気もするのに、リリーは死ななかった。
「し、しんじらんない……」
リリーはある日、子供ができた事を知った。
「私が、子供を??ありえないわ!」
リリーの腹はどんどん膨らんでいき、客が取れない日が続く。
「なんで!なんで、こいつ!死なないの?!」
無事にリリーは子供を産んだ。
「不細工」
誰の子供が分からない男の子をリリーは産んだ。
「要らないんだけど?!」
「馬鹿をお言いでないよ!リリー」
「ふん!育ったらそこそこで売るわ。金になるかしら?」
「あんた……本当に人の子かい?!」
街角に立つ仲間にすらリリーは言われたが悪びれなかった。
「私は女神なんだから!」
祈る者はもはや誰もいなかったが。
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