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動物に異様に好かれる手
51 聖剣とか伝説の剣は?
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混乱は世界中で起きていた。リリーシュアの力の喪失、アリルレオンの台頭。
リリーシュアを祀る神殿の失墜は止まるところを知らず、咳病は蔓延している。そして追い討ちをかけるように歪みと瘴気が吹き出始める。
「どうなって……ゴホゴホ」
ご主人様と呼ばれていた人間達は病に堕ち寝込んでいき、奴隷と蔑まれていた獣人達は生き生きと笑い合う。
「死ぬなぁー?」「ああ、もうすぐ死ぬなぁ!いい気味だ」
虐げられて来た獣人達は人間に慈悲の心を持たない。そんなものは擦り切れた。もちろん擦り切れさせたのは、人間だ。
「わ、私も死ぬのかしら?」
「大丈夫ですよ、お嬢様は私が守ってさしあげますから」
「マーカス……」
その少女と猫獣人はぎゅっと抱きしめあった。獣人と心を通わせた者に病は訪れないという噂は本当だった。
「俺も調子良いんだよなー」
「あら?アリルレオン様にお礼言っときなさいよ!」
獣人と結ばれた者にも、恩恵がある。
「わたくしの愛人してあげるわ!」
「はあ……」
「ゴホゴホっ!なんで、なんでよ!獣共とやれば病気にならないんじゃないの?!気持ち悪いけど仕方なく寝たのに!」
「こっちだって願い下げだ、売女め」
心が通わぬ者を女神の力は見逃さない。
「ちくしょう、なんで俺達がこんな目に」
いつか獣人達が漏らした同じ言葉が口から出ていることに何人の人間が気づいたのか。誰にもわからなかった。
負の心が瘴気や歪みを加速させる。アリルレオンはシロウに髪を整えて貰いながらため息をついた。
「汚れが広がって行くのが早いわ。早く支援出来るものを選ばなきゃ」
「勇者の?」
「そうよ、レジールとレンテドールを勇者にしてくれたのは嬉しいけど、あの二人じゃ危なかっしくて。このままじゃシロウがついていかないとケンカするじゃない」
「え!あれで勇者になっちゃったの?!あんな適当でいいの?!」
アリルレオンは良いの、良いの!と手をひらひらさせる
「シロウが認めたからね」
「ゆ、勇者なら聖剣とか伝説の武器とか引っこ抜くんじゃないの?!」
それにはアリルレオンはキョトンとした。
「どうして?立派な爪と牙がある大人の獅子なのに。武器なんて要らないじゃない」
「あ、そっか……そうなの?」
この世界の勇者はシロウが知ってる漫画の勇者とちょっと違うようだ。
「でも、これ以上シロウを危険な目に合わせたくないんだけど、なかなか適性がある子が現れないのよねー。レオセントの三つ子じゃ大きくなるまで待てないし」
つい先日、エリーゼ王妃は玉のように光る三つ子をコロコロコロと産み落とした。全員女の子だが、輝く金の髪に青い瞳でアリルレオンの寵愛を一身に受けたような子供達だった。
「……なんか凄い事になりましたよ、お城。なんかいっぱいあげたでしょ?」
「わ、わたくしだけではありませんよ!シロウが生まれる前からあの子達を可愛がり過ぎるから!」
「俺、何にもしてないよー!」
「シロウの何もしてないは信じませーん」
ぷいっと横を向かれてしまい吹き出すしかなかった。
「もし、どうしても間に合わなかったら……ううん、なんとか探し出すわ。シロウはこれから痛い目に合わせないんだからね!」
「……ベッドの中で合いましたが……」
ぼそりと呟いた言葉をのがしてもらえなかったようで、女神の権威が失墜してしまいそうなニヤァとする笑顔を向けられた。
「レジールにご褒美をやったのよ」
「ぎゃーーー!帰る!」
「あ!シロウシロウ!ごめん!お手入れありがと、」
ぶちん、と交信を切ってシロウは戻って来たがしばらく丸くなって蹲っていた。
「ううっ!恥ずかしい!」
でも喜んでいたなぁと思い出したり、記憶は無くならないけど、体は……
「お前の中も全部俺の物だ」
囁きを思い出して、亀獣人より固く丸くなった。
リリーシュアを祀る神殿の失墜は止まるところを知らず、咳病は蔓延している。そして追い討ちをかけるように歪みと瘴気が吹き出始める。
「どうなって……ゴホゴホ」
ご主人様と呼ばれていた人間達は病に堕ち寝込んでいき、奴隷と蔑まれていた獣人達は生き生きと笑い合う。
「死ぬなぁー?」「ああ、もうすぐ死ぬなぁ!いい気味だ」
虐げられて来た獣人達は人間に慈悲の心を持たない。そんなものは擦り切れた。もちろん擦り切れさせたのは、人間だ。
「わ、私も死ぬのかしら?」
「大丈夫ですよ、お嬢様は私が守ってさしあげますから」
「マーカス……」
その少女と猫獣人はぎゅっと抱きしめあった。獣人と心を通わせた者に病は訪れないという噂は本当だった。
「俺も調子良いんだよなー」
「あら?アリルレオン様にお礼言っときなさいよ!」
獣人と結ばれた者にも、恩恵がある。
「わたくしの愛人してあげるわ!」
「はあ……」
「ゴホゴホっ!なんで、なんでよ!獣共とやれば病気にならないんじゃないの?!気持ち悪いけど仕方なく寝たのに!」
「こっちだって願い下げだ、売女め」
心が通わぬ者を女神の力は見逃さない。
「ちくしょう、なんで俺達がこんな目に」
いつか獣人達が漏らした同じ言葉が口から出ていることに何人の人間が気づいたのか。誰にもわからなかった。
負の心が瘴気や歪みを加速させる。アリルレオンはシロウに髪を整えて貰いながらため息をついた。
「汚れが広がって行くのが早いわ。早く支援出来るものを選ばなきゃ」
「勇者の?」
「そうよ、レジールとレンテドールを勇者にしてくれたのは嬉しいけど、あの二人じゃ危なかっしくて。このままじゃシロウがついていかないとケンカするじゃない」
「え!あれで勇者になっちゃったの?!あんな適当でいいの?!」
アリルレオンは良いの、良いの!と手をひらひらさせる
「シロウが認めたからね」
「ゆ、勇者なら聖剣とか伝説の武器とか引っこ抜くんじゃないの?!」
それにはアリルレオンはキョトンとした。
「どうして?立派な爪と牙がある大人の獅子なのに。武器なんて要らないじゃない」
「あ、そっか……そうなの?」
この世界の勇者はシロウが知ってる漫画の勇者とちょっと違うようだ。
「でも、これ以上シロウを危険な目に合わせたくないんだけど、なかなか適性がある子が現れないのよねー。レオセントの三つ子じゃ大きくなるまで待てないし」
つい先日、エリーゼ王妃は玉のように光る三つ子をコロコロコロと産み落とした。全員女の子だが、輝く金の髪に青い瞳でアリルレオンの寵愛を一身に受けたような子供達だった。
「……なんか凄い事になりましたよ、お城。なんかいっぱいあげたでしょ?」
「わ、わたくしだけではありませんよ!シロウが生まれる前からあの子達を可愛がり過ぎるから!」
「俺、何にもしてないよー!」
「シロウの何もしてないは信じませーん」
ぷいっと横を向かれてしまい吹き出すしかなかった。
「もし、どうしても間に合わなかったら……ううん、なんとか探し出すわ。シロウはこれから痛い目に合わせないんだからね!」
「……ベッドの中で合いましたが……」
ぼそりと呟いた言葉をのがしてもらえなかったようで、女神の権威が失墜してしまいそうなニヤァとする笑顔を向けられた。
「レジールにご褒美をやったのよ」
「ぎゃーーー!帰る!」
「あ!シロウシロウ!ごめん!お手入れありがと、」
ぶちん、と交信を切ってシロウは戻って来たがしばらく丸くなって蹲っていた。
「ううっ!恥ずかしい!」
でも喜んでいたなぁと思い出したり、記憶は無くならないけど、体は……
「お前の中も全部俺の物だ」
囁きを思い出して、亀獣人より固く丸くなった。
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