【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
44 / 80
動物に異様に好かれる手

44

しおりを挟む
「ごめんね、戻ったよ」

 神殿から出るとたくさんの獣人達が心配そうにシロウを待っていた。先頭にレオセントが立っている。

「シロウ」

 何をどう聞くべきか、レオセントは悩んでいるように見えた。シロウの神殿、神の嫌いは有名な話だから、どれだけ機嫌を崩して出てくるか。
 最悪、国を出ると言い出したら?レオセントは力づくで止めなかった事を後悔してしていた。

「俺、あのお爺さんに謝りたいな。元気かな……いじめられたかな?死んじゃったりしてないかな?」

「お爺さん……とは?」

 レオセントは言葉を選ぶ。今のシロウは繊細なガラス細工より取り扱いが難しい。

「前に、俺の事を神子って呼んだお爺さんだよ。お爺さん、間違ってなかった。俺、やっぱり神子だった。だから、謝りたい」

「そう……か。すぐに人をやって様子を見てこよう。鳥獣人ならすぐ行けるからな」

「うん……お願いします」

「それでシロウ。どう、だった?」

 神子だと受け入れたシロウ。でも神との対話は?まだこの国を見捨てないでくれるのか?レオセントは言葉を慎重に選んだ。

 んー、と少し考えてから

「俺、アリルレオン様は好きかも」

「そうか!好きか!」

 その場に安堵の余り膝をつきそうになったが、レオセントは立場上堪えた。シロウはまだここにいてくれる。

「詳しい事はお爺ちゃまに聞いて。俺、少し疲れたよ」

「お爺ちゃま?まあ、疲れたなら、休んだ方が良い。パレードは仕切り直そう」

「うん」

「おら、帰るぞ」

 レジールに抱き上げられたまま、シロウは馬車に乗る。

「これから獣人が増えるって。仕事増やしてごめんね、王様」

「ん?どう言う事だ?」

「んー、レオセント国王がこの世界を治めるのかなーって」

「はは!規模の大きな話だな!」

 ただの夢物語も、神子であるシロウが口にすれば予言となるなど、レオセントも知らなかったし、シロウ自身も気付いてはいなかった。


 早めに城に戻ったシロウはレジールの横でお昼寝をし、夕食の時間にはいつもより少し多めに食べ、そして早めにベッドに入った。

「シロウ」

「ん……良いよ」

 夫婦の時間が始まった。

 シロウの白い体がレジールは好きだった。吸えばすぐに色がついてやり過ぎて怒られた事もある。獣人につけられたと言われていた傷はもう一つも残っていない。
 首の後ろ、頸の部分は真っ白でレジールが甘噛みして残した牙の痕がほんの少しだけついている。
 全身にまだ残る怪我の跡は人間に虐待されたのだと言っていた。さまざまな跡を醜いとは思わなかったが、痛むのではないかと心配だった。
 自らの傷跡をみて

「汚いでしょう?」

 と、呟くのもやめさせたかったし、跡を見てその時受けた暴力を思い出して身震いするのから救ってやりたかった。
 どれもレジールにはどうしようもなく、皮膚が引き攣った跡を撫でて、舐めてやる事しか出来なかった。

「シロウ……」

「ん、ちょうだい……」

 四つん這いになり、つんと突き出した小さな尻をひと撫でしてから、ぐっと押し入った。

「んっ。あんっ!」

 仕込まれた体はレジールを易々と受け入れて、可愛い声を上げる。中はくちゅくちゅと濡れて最高に気持ちが良い。ゆっくり侵入するだけで体の下で身悶えする妻はとてつもなく可愛らしかった。

「シロウ……シロウ!ない、ないぞ!」

「あんっ、な、何が?」

 最近伸びた髪を掻き分け、大きな鞭の跡が残るはずの小さな背中を曝け出す。

「ない!ここにあったあの傷が、ない!」

「え?」

 何度も何度も撫でて。舐めてこの傷を消してやれたら、シロウの心は少し穏やかになれるかと、悩んだあの大きな鞭の跡がなくなっている。

「いや、少しだけ残ってるな……薄っすら色が違う、ああ、でもほとんど分からん」

「え?何を、言って?」

 はぁはぁと荒い息のまま、シロウは首を少し後ろに回すが、自分の背中を見る事は出来ない。

「ああ、そうだな。背中は見えないものな!だが、ない。ないぞ!シロウ」

「え?う、うそ」

「嘘など、お前に言うものか!はは!良かったな!」

「え?でもだって!きゃん!」

 大きく突き込まれて、子犬のように声を上げる。もうレジールに全てを知られた体はどこをどう刺激すれば気持ち良くなれるかばれているのだ。

「ははっ!治したのは神様か?神殿に行く度にご褒美が貰えるようになってんのかな?何度もくるように!」

「やぁ!し、しらなっ!あん!あっ!やぁっ!そこぉ!いっちゃうーーーっ!」

「良いぞ!中に出すから」

「ちょうだいっ!なか、中に熱いのぉっ!あっ。あーーーーっ!」

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

完結「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」

まほりろ
恋愛
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...