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動物に異様に好かれる手

41 光差す方へ

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「レジール様、下ろして」

「シロウ!」

「下ろして。大丈夫だけど、でも……一緒にいて」

 泣きそうな笑顔でそう言われ、レジールは馬車からシロウを下ろしてやった。ゆっくり、足を少し引きづりながらシロウは羊の少女の前についた。

「ねえ、俺が神が嫌いって知ってるよね?」

「知って……います……」

 少女は顔を上げず弱々しい声で答える。顔をあげないのではなく、顔を上げる力が残っていないのだ。

「どうして?君、死んじゃうよ。なのにどうしてこんな事したの?」

「もっと、もっとたくさんの人が死んでしまうからです……今なら間に合います。たくさんの、とてもたくさんの獣人達が死んだら、シロウ様、悲しむでしょ?」

「俺が、悲しむから……君はこんな事したの?」

 懸命に所は顔を上げ、腫れて原型がわからなくなった顔で微かに笑った。

「はい、シロウ様は私のお母さんとお父さんと弟を、治してくれました。優しい、シロウ様が、たくさん、獣人が死んだら絶対、泣いて、しまいます……私一人なら、大丈夫。だから、お願い、します。少し、で、良いから、アリルレオン様の、お、こと、ば、を」

「……もう、喋らないで」

「いえ、わ、たしは、だい、じょぶ、お、ことば、を」

 長い沈黙、そして口を開いた。

「……少し、だけだよ」

「ありが、と、ござ、いま、す」

 少女はかくんと糸が切れたように道に臥した。そのままシロウは何度か少女を撫でてやる。傷は消えてゆき、呼吸は規則正しくなった。

 きゅっとレジールの上着の裾を握って、シロウは小さな声でお願いをする。

「パレードの最中だけど、この、まま、神殿とやらに、い、行く。お願い、ついてきて」

「そんな所行かなくて良い!」

「ダメ……行く。その子も連れて、行かなくちゃ……本当は、行かなきゃって、思ってた。でも、嫌な気持ちになりそうで……でも、行かなくちゃ……」

「私もついて行かせてください」

 レンテドールをレジールは刺殺できるくらい鋭く睨みつける。

「余計な事してんじゃねぇよ」

「私は全てシロウの為に。それが私の生きている理由の全て」

 レンテドールのそれはもう盲信だった。

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