【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ

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動物に異様に好かれる手

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「詳しい話を聞きたい」

 レジールは言い、レンテドールは頷いた。

「そうだな、王弟殿がシロウの伴侶というなら、全て話さねばならない。そのつもりでここに来た」

 別室にはレオセントとレジール、そしてシロウ。レンテドールと兎獣人熊獣人。そしてアライグマ獣人の子供がいる。

「すべて話そう。この国ジェストも人間に負けただろう……?同じ頃レースールも負けたんだ。理由は同じ、横合いから首を突っ込んできた人間にやられたのさ。しかもレースールは大敗した……私達は散り散りに逃げた。レースールは連邦国であったから、その時いくつもの代表が奴隷にされたり殺されたり……私もその一人だった」

 何もかもボロボロにされ、見世物になり死ぬしかないと思っていたその時、馬車に放り込まれた一人の少年、それがシロウだった。

「驚いたよ、どうしてそんなことが出来るのか。考える前にポンポン治されてしまったからね……言葉を失ったよ……そして私達は国へ戻ることができて、立て直した。
 シロウは……すまない。あの時戻って助けるべきだった……何度も後悔した、返しきれない恩がある人を見殺しにしたんだ。酷い目に、合わされたんだろう」

「……」

 シロウは無言だった。隣に守るように座っているレジールがまだ細い体を抱き寄せる。

「一目見て分かったさ。最初に出会った時と目の色が全く違う……。たくさん辛い目に、酷い目に遭わされたんだね。……私達は助けてやれたはずなんだ。体を治して貰った私達が人間なんかに負ける訳がないんだから」

 全員が目を伏せた。

「あの時、すっかり心が折れて奴隷根性が染み付いていた……ああ、全て言い訳だ。私達は過去を変えられない」

 レンテドールは本当に辛そうに顔を歪めた。

「私の言いたい事は一つ。シロウ、私に出来る事があったら何でも言って欲しい。何でも、だ。もしお前がライオンの敷物が欲しいなら、私の生皮を剥がしてあげよう」

「そ、そんなの要りません!」

 そうか、と自重気味に笑った。

「それくらい私は君にしてあげたいと思っている。レースールも落ち着いた。もう私と言う元首がいなくともやって行ける。だから、私はシロウが望む事に全てを捧げたい。それが私の願いなんだ」

「私も!私もシロウのためなら火に飛び込む!」

 兎獣人は言い、熊も頷く。

「僕も、僕もだよ!あの時、あいつらの足に噛み付いてでもシロウを連れてこなかった事、ずっと後悔してる。シロウ、何か僕に出来る事はない?何でもいいんだ!」

 必死で尋ねるアライグマの少年に、シロウはどうして良いか分からなくなる。

「あ、あの、特に……何もない、です。ここでとても良くして貰ってるので……痛いとか寒いとか……一つもないので……大丈夫……です」

「そうか」

 レンテドールはアライグマの少年をやんわり制して、微笑んだ。

「良くしてもらっているんだな?レジール王弟殿下は優しいんだな?」

 怯えさせないよう、優しくシロウに聞き返す。
 小さくだが、しっかり頷くのを見て笑みを深くした。

「ならば、私達の出る幕はないな。ただ、覚えていて欲しい。私達の気持ちを。シロウ、君がこの先思うままに生きるよう手助けしたい者がいる事を、覚えておいて欲しい」

 レンテドールは自己満足を押し付ける事はなかった。この四人はずっと罪悪感に苛まれるかもしれない。
 それでもシロウの気持ちを優先するのだ。シロウが要らないと言えば要らないのだから。

「ありがとう……ございます」

 小さく返事をするシロウに、四人は笑顔で答えた。

「私達の方こそありがとう。救ってくれてありがとう」

 と。
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