【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ

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動物に異様に好かれる手

10 俺が怖いのは

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「シロウ……どうしよう、皆んながシロウを狙ってる……!」

「ジェスさん、何を言って……?」

 がるるる……低い声で牙を見せて周りを威嚇している。勿論、俺にしっかり抱きつきながら。

「そんなこと、あるわけ無いじゃないですか。大丈夫ですよ、落ち着いて?」

 茶色と黒の髪の毛をわしゃわしゃと撫でてやるとだらしなく笑う。

「えへーーーありがとう!シロウ!ねぇ、どうする?どうする?ボール投げる?枝投げる??」

 え?そんな事しませんけど……。

「あの、俺、どこかに部屋を貰えるらしいって。そこに行きたいんですが」

 ぴん、と耳が伸びて

「そうだった!」

 抱きつかれたまま、基地を案内してくれる。

「こっちが偉い人のいる所。こっちは人間の隊員がいて、獣人はこっち。シロウは人間だから、人間の……」

「い、いやだ!人間怖い……っ!」

「シロウ?!」

 ガタガタと震え出す俺にジェスは驚いた。

「人間、怖い……!怖い……いやだ、いやだ……」

 あああ!人間は俺を殴る。人間は俺を蹴飛ばす。腕が折れた時もあった。皮膚が内出血で何日も真っ黒になった事もあった。
 歯が折れるくらい殴り飛ばされた事もあった。セックスも物すごく自分勝手で血が沢山出た。

 それをいい気味だと言って笑う。

 可哀想な獣人を俺の前に引き摺って来て治せと言う。治せばまた酷い目に合わせる。俺が嫌がれば俺が酷い目に合わされる。 

 怖い!怖い!怖い!

 俺はかくんと意識を捨てた。もう嫌だ、俺は痛めつけられる為に獣人を治したくないのに……。

「シロウ!?シロウ!!」

 何も、何も聞こえない。ずっと何も聞こえなければ良いのに!!

 俺の耳は音を拾う事を拒否した。
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