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オマケ リサイクル再び
8 ピンチに駆けつけるって言ってたもんな
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「ぎゃっ!」
くそっ!悪態をついてもこんな華奢な靴じゃ走れねえし、コルセットはきつくて息はつけないし、ドレスは重いし!俺はあえなく地面に転がった。かぶっていたヴェールも枝に引っかかって取れている。女性のふりをしているから、髪は長く伸ばしている。それが顔にかかって邪魔くせえ!いつもみたいにひとくくりにできないからうざってえよ。
「深窓の姫君…‥は!良くもまあ夜会になど出て来れたものだな!」
俺を嫌な目つきで見下ろしているのは、何番目かわからん兄の一人だろう。顔が側妃の誰かに似ているから王太子じゃないな。王太子ならあの会場で味方作りに精を出しているはずだ。というか全員味方作りに必死になるはずなのに、こんな中庭の奥まった所にまで俺を追いかけてやってくる馬鹿兄。
国王の寵愛が傾いているのに、自分の地盤固めに必死になっていないのは、母親の後ろ盾が堅固なのか、こいつ自体馬鹿なのか、きっとこいつ自身、頭が悪いんだろう、そんな顔してる。
「もう逃げないのかぁ?ん?ん?つまらんなぁ?お前の侍女はさっさと逃げ出したぞ!」
ティリーには助けを呼びに行ってもらったんだ馬鹿!二人で隠れるように中庭を歩いていたのに、途中からこいつが追いかけて来たんだ。訳が分からん。
「兎だってもう少し素早く逃げるぞ、ほら!逃げてみろよ!」
俺、体力ねえし!ついでにドレスの裾をこの馬鹿に踏まれて立ち上がる事も出来ない。クソ野郎が!もげちまえ!!
「捕まったら毛皮を剥がされちまうんだぞぉ!兎チャンよお!」
こいつほんとに馬鹿だ!俺は一応血のつながった妹だぞ!?それを兎とか呼んで更になんだよ!ドレスでも破ろうってのか!クソ変態死ね!
多分俺が泣いて声を上げて許しを請えばいいんだろうけど、なんでこいつなんかにそんなこと言わなきゃならん!俺はヤツが手を振り上げるのをぎりっ睨みつける。
「睨んだってこわかねえし!平民出で側妃に登っただけはあるなあ?あの女とそっくりな顔だ!」
割にビビってるじゃねえか!あの父さんの血が入っているのに、俺なんかに睨まれて、怖いのか!ばーかばーか!お前なんて怖くねえんだよ!俺はよ!
「その顔が醜くゆがむところが見てみてぇなあ!」
拳が振り下ろされる。一応王女の俺の顔をゲンコツで殴りつけるつもりか?クソ変態野郎!それでも俺はギリギリまでヤツを睨みつける、負けてたまるか!
「おっと、失礼」
ゴッと鈍い音がして、ヤツの体がくの字に折れたまま真横に吹っ飛んだ。そしてそのままかなり遠くの噴水まで吹き飛んでゆき、ゴガッ!といい音がして噴水が壊れた。あり得ない高さまで噴き出る水と、水の中に気絶して沈む名前も覚えていない兄。誰か、ひき上げてやらないとアレ、死ぬんじゃね?
「大丈夫ですか?姫、立てます?」
きれいなキックのフォームから体制を戻し、俺に手を差し出す。ああ、うん。お前はなんて言うか王子様だよな、フラン。流石だぜ、俺のピンチに駆けつけるっていっつも言ってたもんなあ。
「あ、ありがとうございます……」
あんまり喋りたくないな、痩せっぽっちだから俺達はまだ声変わりはしていないけど、バレると色々面倒だ。でも差し出された手を払いのける事も出来ないから、素直に掴まる。ゆっくり抱き起されるが、
「あ、あの……」
手を放してもらえなかった。
くそっ!悪態をついてもこんな華奢な靴じゃ走れねえし、コルセットはきつくて息はつけないし、ドレスは重いし!俺はあえなく地面に転がった。かぶっていたヴェールも枝に引っかかって取れている。女性のふりをしているから、髪は長く伸ばしている。それが顔にかかって邪魔くせえ!いつもみたいにひとくくりにできないからうざってえよ。
「深窓の姫君…‥は!良くもまあ夜会になど出て来れたものだな!」
俺を嫌な目つきで見下ろしているのは、何番目かわからん兄の一人だろう。顔が側妃の誰かに似ているから王太子じゃないな。王太子ならあの会場で味方作りに精を出しているはずだ。というか全員味方作りに必死になるはずなのに、こんな中庭の奥まった所にまで俺を追いかけてやってくる馬鹿兄。
国王の寵愛が傾いているのに、自分の地盤固めに必死になっていないのは、母親の後ろ盾が堅固なのか、こいつ自体馬鹿なのか、きっとこいつ自身、頭が悪いんだろう、そんな顔してる。
「もう逃げないのかぁ?ん?ん?つまらんなぁ?お前の侍女はさっさと逃げ出したぞ!」
ティリーには助けを呼びに行ってもらったんだ馬鹿!二人で隠れるように中庭を歩いていたのに、途中からこいつが追いかけて来たんだ。訳が分からん。
「兎だってもう少し素早く逃げるぞ、ほら!逃げてみろよ!」
俺、体力ねえし!ついでにドレスの裾をこの馬鹿に踏まれて立ち上がる事も出来ない。クソ野郎が!もげちまえ!!
「捕まったら毛皮を剥がされちまうんだぞぉ!兎チャンよお!」
こいつほんとに馬鹿だ!俺は一応血のつながった妹だぞ!?それを兎とか呼んで更になんだよ!ドレスでも破ろうってのか!クソ変態死ね!
多分俺が泣いて声を上げて許しを請えばいいんだろうけど、なんでこいつなんかにそんなこと言わなきゃならん!俺はヤツが手を振り上げるのをぎりっ睨みつける。
「睨んだってこわかねえし!平民出で側妃に登っただけはあるなあ?あの女とそっくりな顔だ!」
割にビビってるじゃねえか!あの父さんの血が入っているのに、俺なんかに睨まれて、怖いのか!ばーかばーか!お前なんて怖くねえんだよ!俺はよ!
「その顔が醜くゆがむところが見てみてぇなあ!」
拳が振り下ろされる。一応王女の俺の顔をゲンコツで殴りつけるつもりか?クソ変態野郎!それでも俺はギリギリまでヤツを睨みつける、負けてたまるか!
「おっと、失礼」
ゴッと鈍い音がして、ヤツの体がくの字に折れたまま真横に吹っ飛んだ。そしてそのままかなり遠くの噴水まで吹き飛んでゆき、ゴガッ!といい音がして噴水が壊れた。あり得ない高さまで噴き出る水と、水の中に気絶して沈む名前も覚えていない兄。誰か、ひき上げてやらないとアレ、死ぬんじゃね?
「大丈夫ですか?姫、立てます?」
きれいなキックのフォームから体制を戻し、俺に手を差し出す。ああ、うん。お前はなんて言うか王子様だよな、フラン。流石だぜ、俺のピンチに駆けつけるっていっつも言ってたもんなあ。
「あ、ありがとうございます……」
あんまり喋りたくないな、痩せっぽっちだから俺達はまだ声変わりはしていないけど、バレると色々面倒だ。でも差し出された手を払いのける事も出来ないから、素直に掴まる。ゆっくり抱き起されるが、
「あ、あの……」
手を放してもらえなかった。
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