【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
99 / 113

99 新しい出発に

しおりを挟む
「好きです、リーヤ。もし、あの時リーヤを攫って行ったらリーヤは私を好きになってくれていたでしょうか」

「分からんなぁ……でも嫌いじゃなかったよ。帝国でフランに会えるって思った時は嬉しかったもん。……フラれたけど」

「これっぽっちも振ったつもりは無かったんですけどねぇ」

「俺もさ、貴族のやり取りとか体面みたいの、全然分かんなかったからな」

 あの貧民街での平民のやり取りがまたあるんだって思ってたからな。

「そうですね。私も少し考えればわかる事でした」

 フランが手を握っている。今度は俺が握られる番。あーこれが「見送られる」って感じか。

「で、ですね。次こそは結婚して欲しいんですよ。次こそは私の子供を産んでくださいよ」

「お前もしつこいね」

「はい!」

 死の空気を吹き飛ばすようなフランの笑顔。

「レントが死ぬ前からリーヤに張り付いて、何十年経ったと思ってるんですか!」

 ホントだよ、お前凄いよ。

「でもよー。レントと結婚するって言っちゃったよ。俺、嘘つきはやだなー」

 確かあの時、俺は約束しちゃったよフラン。

「ですからねーリーヤをふたつに割って貰おうかなって!」

「こえーな、おい」

「右側のミギーヤを私が貰って左側のヒダリーヤをレントに上げます」

 意味わかんねーし!

「俺、半分しかねーじゃん。どうすんの?残り半分」

 なんか猫っぽいものでも足しときゃ良いんじゃないですかね?その辺はあんまり考えてなかったのか、フランは適当だ。

「今度は無理矢理しません。ちゃんと同意を得てからヤりますね」

「お、おう……良い心掛けだな」

「毎日、またたびを持ち歩きますから」

「こら、そもそも最初にヤること考えるなよ」

「何言ってんですか!さっさとヤらないと盗られるって私は学んだんです!」

「うーん……」

 前例が良くないなぁ。

「じゃあ今度はちゃんとするから、フランもちゃんとしてくれ」

「分かりました!」

 何がちゃんとなのかよく分からないけれど、まあちゃんとお付き合いする事にしよう。

「それでね、リーヤ。お願いがあるんですけど」

「ん……なんだ……?」

 ああ、なんだか眠くなって来たなぁ。

「レントはあなたと結婚してたのに、私はあなたと結婚してないなんて悔しいんですよ!」

「ああ……そうだなぁ……」

 何かと張り合ってたもんなあ……。

「私と結婚して下さい、リーヤ」

「あー……良いよ、フラン」

 それが最後の言葉で悪かったな。その後の事はなんにも覚えていない。

「リーヤ、ありがとう」

 そしてフランも静かに目を閉じた。



 俺達の生きてきた時間は色々な脚色を加えて、後世に伝わるだろう。デズモンドがまだ生きていて、勇者と聖女が力を合わせて討ち取ったとか。

 試練の洞窟から出て来る竜達はまだまだ出続けるだろうし、帝国はリュンが暴れ回っているし、クォンツはリリージャが暴れている。暴れん坊だらけだ。きっとあいつらがいなくなっても誰かが暴れるんだろうけど。

 エルフローラ教とか言う宗教が台頭してきた。貧しい人からの支持が多くて、国で保護したりしている。女神エルフローラ様はいつも慈愛の瞳で皆を見つめているらしいけど、その神様の神託とかはとんでもない事を言い出しそうだから気をつけろよ。

 何かと波乱の時代の中心を生きてしまった気がするけれど、悪い人生ではなかった。多分次の人生もあって、また賑やかな人達と暮らしていく事になりそうだ。次もまた廃品でも直そうかな?誰かが捨てた物でも、直せば色々使い道があるしなあ。



 やっと来たわぁ!リーヤ!あのね、あのね!手伝って欲しいんだけどー!

 あ、やっぱり母さんが手招きしてる。やっぱりあの世界に俺を送り込んだのは母さんだったんだな、しょうがない人だ。

 で、ミギーヤとヒダリーヤってホント?

 ……嫌ですけど?

 だよねー!普通に双子のリーヤで良いじゃない!変な子達よね!次も母さんが気合入れて産んであげるわ!任せて頂戴!

 ああ、次も喧しい人生になりそうだな……退屈しなくていいか。俺の周りをワンコみたいにグルグル回っている魂が一つ。俺の頭の上に我が物顔で乗っかっているニャンコっぽい魂が一つ。またコイツらも一緒だし。母さんの足にべっとり張り付いている死神みたいな重苦しい魂も一つ。全部一緒だ。

 じゃあな、また会おうぜ。母さん、しょうがないから次行けるぜ。

 しょうがないって言いつつ結構楽しんでる癖に!さ、そこの穴に飛び込むわよー!


 俺達は色々引き連れて、ぴょいっと穴に飛び込む。ワンコとニャンコが俺を引っ張るもんで、案の定俺は右と左に分かれちゃった。ミギーヤとヒダリーヤじゃねえか!魂は同質に、そして違う人間に。


 皆、新しい人生に向かうんだ。




 廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!【終】

しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

処理中です...