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93 世界平和を望む男達
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老衰だけはどうしようもない。若い頃苦労した母さんの寿命はやはり短くなっていたんだろう。
母さんの葬儀はしめやかにはならず、大々的で華々しく送る事になる。
「フローラ様が本物の女神様になったぞ!」
「流石我らの女神様!」
涙は一瞬、あとは笑って飲んで大騒ぎだ。きっと母さんならこれが一番喜んでくれる。しかし母さんの遺体に縋り付いて全ての生気が抜けた男が一人。
「自殺はだめだ、自殺はフローラに叱られる、それだけは駄目だ……」
ほぼ、全員の予想通りカリウス父さんが抜け殻なのかゾンビなのか、何かよく訳の分からない物体に成り下がっていた。
「リーヤ、良いか」
アダライム義父様だ。何をどうしてどうするか何も言わなかったが、俺は分かってしまう。
かつて、肩をぶつけ合い、命を削り合った好敵手の落ちぶれに落ちぶれた姿を見るに耐えないんだろう。
俺ですら切な過ぎて直視出来ない姿格好のカリウス父さん。
「少し話して来ます」
俺は最後の別れの時間を貰う事にした。
「父さん」
「フローラ、何故私を置いて行ったのだ」
「父さん、俺だけど」
しばらく父さんは俺の顔をまじまじと見て
「フローラに似ている……!リーヤか!」
あ、だめな奴だ。息子の顔を母親に似ているかどうかで判別している。
「なあ父さん。俺の事好きだった?」
「半分フローラだし、かなりフローラに似ていたから好きだったぞ」
ブレない変態さんめ!
「俺、父さんの事嫌いじゃなかった。好きだったよ」
その時、やっと父さんは俺を見た。
「私もリーヤは好きだ。何せ私の息子だ。色々迷惑をかけたね、でもアダライムの奴の首を飛ばせなくてすまない。なかなかあいつは手強くてな」
「良いよ、もう怒ってないし。知ってるか?アダライム様は一応俺の義父なんだぞ」
「……そうだな」
やっと認めた。今までずっと認めないと騒ぎ立てて来たのに。そうか、もう良いのか父さん。
「さよならかな?」
「すまんな、お前よりやっぱりフローラの事が好きだ」
「父さんの一番になりたくないからそれで良いや!父さんは生まれ変わっても母さんと結婚しなよ!その方が世界は平和だ」
「私は世界平和を望む男だからな」
ここまで突き抜けていると、清々しい。世界よ、神様よ、頼むから今度は父さんから母さんを取り上げないでやってくれ。俺も世界平和を望む男の一人なんだ。
「母さんによろしく言っておいて。俺はしばらく死なないつもりだから」
「ああ、分かった」
棺桶って二人いっぺんに入れる大きさのあったっけ?無かったら特注??すぐに作ってくれるのかな??
「安心しろ、二人仲良く入れる棺桶ならば私が注文しておいた」
あらまぁ、なんて手際のいい事で。ずいっとアダライム様が出てくる。
「貴様との決着はつかなんだ。続きは来世で死合おうぞ」
「断る、私は世界平和を望む男だからな」
「戯言を」
「さらばだ、アダライム。その獅子頭飛ばせなんだは心残り。だがリーヤが許すと言うからまだ繋げて置いてやる」
「負け犬が獅子に吠え掛かるな、カリウス。独り立ちを覚え損ねたのが貴様の敗因よ」
母さんの葬儀の場に剣を持ち込むのもどうかと思うが、その葬儀の場で父さんの首をぽん!と飛ばしてしまうのもどうかと思うよ、義父様。
「あーやっちまいましたか」
「まー予想通りとはいえ、あのカリウス様は見たく無かったっすからねー」
居合わせた者は皆、冷静だったのは少し驚いたぞ。母さん、父さんもそっちに送っちゃった。ついでに死後も一緒にくっ付けて埋葬することになっちゃった。できれば嫌わないであげて欲しい。
母さんの葬儀はしめやかにはならず、大々的で華々しく送る事になる。
「フローラ様が本物の女神様になったぞ!」
「流石我らの女神様!」
涙は一瞬、あとは笑って飲んで大騒ぎだ。きっと母さんならこれが一番喜んでくれる。しかし母さんの遺体に縋り付いて全ての生気が抜けた男が一人。
「自殺はだめだ、自殺はフローラに叱られる、それだけは駄目だ……」
ほぼ、全員の予想通りカリウス父さんが抜け殻なのかゾンビなのか、何かよく訳の分からない物体に成り下がっていた。
「リーヤ、良いか」
アダライム義父様だ。何をどうしてどうするか何も言わなかったが、俺は分かってしまう。
かつて、肩をぶつけ合い、命を削り合った好敵手の落ちぶれに落ちぶれた姿を見るに耐えないんだろう。
俺ですら切な過ぎて直視出来ない姿格好のカリウス父さん。
「少し話して来ます」
俺は最後の別れの時間を貰う事にした。
「父さん」
「フローラ、何故私を置いて行ったのだ」
「父さん、俺だけど」
しばらく父さんは俺の顔をまじまじと見て
「フローラに似ている……!リーヤか!」
あ、だめな奴だ。息子の顔を母親に似ているかどうかで判別している。
「なあ父さん。俺の事好きだった?」
「半分フローラだし、かなりフローラに似ていたから好きだったぞ」
ブレない変態さんめ!
「俺、父さんの事嫌いじゃなかった。好きだったよ」
その時、やっと父さんは俺を見た。
「私もリーヤは好きだ。何せ私の息子だ。色々迷惑をかけたね、でもアダライムの奴の首を飛ばせなくてすまない。なかなかあいつは手強くてな」
「良いよ、もう怒ってないし。知ってるか?アダライム様は一応俺の義父なんだぞ」
「……そうだな」
やっと認めた。今までずっと認めないと騒ぎ立てて来たのに。そうか、もう良いのか父さん。
「さよならかな?」
「すまんな、お前よりやっぱりフローラの事が好きだ」
「父さんの一番になりたくないからそれで良いや!父さんは生まれ変わっても母さんと結婚しなよ!その方が世界は平和だ」
「私は世界平和を望む男だからな」
ここまで突き抜けていると、清々しい。世界よ、神様よ、頼むから今度は父さんから母さんを取り上げないでやってくれ。俺も世界平和を望む男の一人なんだ。
「母さんによろしく言っておいて。俺はしばらく死なないつもりだから」
「ああ、分かった」
棺桶って二人いっぺんに入れる大きさのあったっけ?無かったら特注??すぐに作ってくれるのかな??
「安心しろ、二人仲良く入れる棺桶ならば私が注文しておいた」
あらまぁ、なんて手際のいい事で。ずいっとアダライム様が出てくる。
「貴様との決着はつかなんだ。続きは来世で死合おうぞ」
「断る、私は世界平和を望む男だからな」
「戯言を」
「さらばだ、アダライム。その獅子頭飛ばせなんだは心残り。だがリーヤが許すと言うからまだ繋げて置いてやる」
「負け犬が獅子に吠え掛かるな、カリウス。独り立ちを覚え損ねたのが貴様の敗因よ」
母さんの葬儀の場に剣を持ち込むのもどうかと思うが、その葬儀の場で父さんの首をぽん!と飛ばしてしまうのもどうかと思うよ、義父様。
「あーやっちまいましたか」
「まー予想通りとはいえ、あのカリウス様は見たく無かったっすからねー」
居合わせた者は皆、冷静だったのは少し驚いたぞ。母さん、父さんもそっちに送っちゃった。ついでに死後も一緒にくっ付けて埋葬することになっちゃった。できれば嫌わないであげて欲しい。
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