【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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88 帝国一のやり手の名君

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「ふむ。私を先に切ってください。私の方が病状が進んでいそうだ。死にたくないのでお願いします」

 フランは、真剣な顔でそう言う。

「あー……そう、ですね。フラン様の方が先に違和感があったんでしたっけ」

「そうなんだよ、アライグマ先生!私はねぇ生き残ってリーヤに結婚を申し込むんだ」

「ひえ!リーヤ様はレント様と結婚してますよ?!り、略奪?!」

「うんうん!レントが病気で弱ってる間にこう、さっと!」

「ひえええー!帝国のやり手の名君は違いますねぇ!」

「でしょう!でしょう!だからね、レントより先に病気を治さないといけないんです。だから、私が先。ね?いいでしょう?」

 うむむ!そんな理由でしたら、フラン様の予定を先にしますね、アライグマ先生がメモを取りながら聞いているが、おい!こら!そんな理由でもダメだろ!

「フラン、馬鹿な事言わなくていい」

 手術。俺達が初めてやる手術だ。それの一番最初なんて、実験もいい所なのに。
 フランは自分で試し斬りをしろって言ってるんだ。

「嫌ですよ、リーヤ。こう見えて私はね、まだあなたの事を諦めてないんですよ!隙あらばレントから奪って逃げようと企んでいるんです」

「フラン……」

 言っているセリフと表情が一致しない。穏やかな、包むような優しい顔でそんなこと言われても困るんだ。
 フランは優しい、優しすぎる。そんなお前の優しさに俺は答えてやれないのに。

「ん、でもリーヤを奪って逃げるとなると、カリウス様からも追いかけられますね……。うーん、あの人に勝てるでしょうか?!」

 真剣に悩んで見せているのが、笑いを誘うんだ。俺はお前の優しさや強さを尊重して良いんだろうか。俺はお前に甘え過ぎじゃないのか?

「点数稼ぎですよ、リーヤ」

 またお前はそんな事を言う。

「成功したら、私と浮気してくださいね」

 成功させるに決まってるけど、成功した所で、そんな誘いしないんだろ?お前は。

「私も死にたくないですし」

 それは本心っぽいけどさ。

「……あなたの 役に立ちたいんですよ」

「フラン……」

「絶対に謝らないでリーヤ。私が欲しい言葉はそれじゃない。ありがとうか、大好きですから」

 帝国一の名君だと言うフラン。そんな奴に俺は勝てないよ。

「フラン……お前の体で試し切りをさせてくれ……」

「痛くしないようにお願いしますね」

「ああ、そこら辺は任せて欲しい」

 麻酔という概念と、麻酔薬の開発は薬師の協力もあって早めに出来ていた。それを吸ったり外側から当てるのでなく、内部にぶち込む事。
 そのための高純度の麻酔も完成していた。


 若い体はあっという間に病が進む。俺達はすぐに決断をした。

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