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87 持って行きなさい
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「助けて……」
「……利也?」
俺の声が届いたのはどうやら日本の父さんだった。バサバサと沢山の医学書を持って来た。
「……利也が死んでから、利也が何で死ななきゃならなかったのか、色々調べたんだ。手遅れ、全部分かってたけれど、せずには居られなかった」
「にゃあん」
本当に沢山の専門書。一つ一つを手に取り広げ、日本の父さんは黒猫のリーヤに見せて行く。
「はは、こんな事でも凝り性でな。読めもしない専門書まで取り寄せたんだ。みてくれ、これロシア語で書かれてるんだぞ?」
「にゃああん」
「後で調べたら翻訳してあるのが出てた、高かったのに……」
「にゃ」
黒猫と額を突き合わせるように床に広げた本を眺めている。俺はそれを上から見ている。内容を一つでも覚えようと必死だ。
「持って行きなさい。必要なんだろう利也」
待て、これは俺が見ている夢のはずだ。何で父さんはそんな事言うんだ?
「お前の息子……孫との生活は楽しいよ。あるべきはずもなかった日々をありがとう」
「父さん……っ!」
何がどう、どうして、どうやってか分からなかったけれど、泣きながら朝、目を覚ますと日本の父さんの部屋に山積みになっていた医学書が俺の目の前にあった。
「リーヤ、これは……?」
「父さんが……くれたんだ……」
そうか……何も聞かずレントは俺を引き寄せる。聞かれても、何て答えれば良いか分からない。でもやれる事は確実に増えた筈だ。
「レントは俺みたいに死なないで」
「死ぬかよ、俺も……フランもな」
この本をこの世界に持ち込んで良いものか悪いものか俺にはわからない。でも好きな人の命を救う為に俺はできる事をしたい。
「うん……頼む、死なないで……」
「ああ」
俺のわがままだろうか、それでも死んで欲しくないんだ。俺は早速、本をアライグマ先生の所に持ち込んだ。
「読めません!」
「俺が読む!」
「このけんび?きょう?とか作れませんよ?!」
「あれだ、多分、試練の洞窟の恐竜から取れるに違いない!」
脳筋狂犬どもの出番だ!
「リーヤが望むなら、どんな竜でも狩ってやる。ふん、腰抜けの猫にはできん事だろうけどな!」
「ふざけるな!自分の息子を救う為なら何でも出来るわ!」
こんな時でも張り合っているが、頼もしいと言えば頼もしい。
「うう、リーヤ様!難しすぎです、よくわかりません!」
「俺もわかんねぇ!」
それでも色々発見はあって
「このれんとげん?は医療術の病気診断で代用できますね。病気は小さいから気をつけて見る必要がありますが。こんな小さな物が命に関わるなんて」
「元々自分の体の中にあった物が悪性になるなんて信じられませんよ」
「そんな事があるんですね、外部から何かしらの原因が入り込んだ訳じゃない、なんて……」
アライグマ先生を主任にした、獣人と人族の医療チームは今まであった神聖魔法と、医療術、そして俺が持ち込んだ現代日本の本を組み合わせる。
矛盾が出る部分もあるし、納得出来ないところもあるみたいだけど、大きな刺激と進歩になっている筈だ。
「レント……」
「ははっ!まだ生きてんぞ?げほっげほっ!」
レントは咳き込む事が多くなっている。間違いない、肺だ。
「なんだか胃の調子が悪い。コレがそうなんでしょうね」
フランはお腹をさすっている。そうだと思う……。
「どうするんだっけ?切り取るのか?」
「……そう、なんだけど」
なるべく早めに。転移して全身に広がる前に患部を切り取るんだ。
「切った後はリーヤが治してくれるんだろ?余裕だな」
「……そのつもりだけど……」
俺は治せるんだろうか。無くなったものを元に戻せる、もし俺がその通りの能力なら、切り取った悪性の部分も元に戻ってしまうんじゃないのか?俺が手を出さない方がいいんじゃないのか……?でも現代日本に比べたら設備も揃ってはいないこの世界で、腹を裂いて内臓にメスを入れて……フランもレントも無事でいられるのか……?
最悪手足は切っても生きていられる。でも腹の中身はそうはいかない。良いのかそんな事をして、そのせいで二人が死んでしまったら俺はどうしたら良い?
「……利也?」
俺の声が届いたのはどうやら日本の父さんだった。バサバサと沢山の医学書を持って来た。
「……利也が死んでから、利也が何で死ななきゃならなかったのか、色々調べたんだ。手遅れ、全部分かってたけれど、せずには居られなかった」
「にゃあん」
本当に沢山の専門書。一つ一つを手に取り広げ、日本の父さんは黒猫のリーヤに見せて行く。
「はは、こんな事でも凝り性でな。読めもしない専門書まで取り寄せたんだ。みてくれ、これロシア語で書かれてるんだぞ?」
「にゃああん」
「後で調べたら翻訳してあるのが出てた、高かったのに……」
「にゃ」
黒猫と額を突き合わせるように床に広げた本を眺めている。俺はそれを上から見ている。内容を一つでも覚えようと必死だ。
「持って行きなさい。必要なんだろう利也」
待て、これは俺が見ている夢のはずだ。何で父さんはそんな事言うんだ?
「お前の息子……孫との生活は楽しいよ。あるべきはずもなかった日々をありがとう」
「父さん……っ!」
何がどう、どうして、どうやってか分からなかったけれど、泣きながら朝、目を覚ますと日本の父さんの部屋に山積みになっていた医学書が俺の目の前にあった。
「リーヤ、これは……?」
「父さんが……くれたんだ……」
そうか……何も聞かずレントは俺を引き寄せる。聞かれても、何て答えれば良いか分からない。でもやれる事は確実に増えた筈だ。
「レントは俺みたいに死なないで」
「死ぬかよ、俺も……フランもな」
この本をこの世界に持ち込んで良いものか悪いものか俺にはわからない。でも好きな人の命を救う為に俺はできる事をしたい。
「うん……頼む、死なないで……」
「ああ」
俺のわがままだろうか、それでも死んで欲しくないんだ。俺は早速、本をアライグマ先生の所に持ち込んだ。
「読めません!」
「俺が読む!」
「このけんび?きょう?とか作れませんよ?!」
「あれだ、多分、試練の洞窟の恐竜から取れるに違いない!」
脳筋狂犬どもの出番だ!
「リーヤが望むなら、どんな竜でも狩ってやる。ふん、腰抜けの猫にはできん事だろうけどな!」
「ふざけるな!自分の息子を救う為なら何でも出来るわ!」
こんな時でも張り合っているが、頼もしいと言えば頼もしい。
「うう、リーヤ様!難しすぎです、よくわかりません!」
「俺もわかんねぇ!」
それでも色々発見はあって
「このれんとげん?は医療術の病気診断で代用できますね。病気は小さいから気をつけて見る必要がありますが。こんな小さな物が命に関わるなんて」
「元々自分の体の中にあった物が悪性になるなんて信じられませんよ」
「そんな事があるんですね、外部から何かしらの原因が入り込んだ訳じゃない、なんて……」
アライグマ先生を主任にした、獣人と人族の医療チームは今まであった神聖魔法と、医療術、そして俺が持ち込んだ現代日本の本を組み合わせる。
矛盾が出る部分もあるし、納得出来ないところもあるみたいだけど、大きな刺激と進歩になっている筈だ。
「レント……」
「ははっ!まだ生きてんぞ?げほっげほっ!」
レントは咳き込む事が多くなっている。間違いない、肺だ。
「なんだか胃の調子が悪い。コレがそうなんでしょうね」
フランはお腹をさすっている。そうだと思う……。
「どうするんだっけ?切り取るのか?」
「……そう、なんだけど」
なるべく早めに。転移して全身に広がる前に患部を切り取るんだ。
「切った後はリーヤが治してくれるんだろ?余裕だな」
「……そのつもりだけど……」
俺は治せるんだろうか。無くなったものを元に戻せる、もし俺がその通りの能力なら、切り取った悪性の部分も元に戻ってしまうんじゃないのか?俺が手を出さない方がいいんじゃないのか……?でも現代日本に比べたら設備も揃ってはいないこの世界で、腹を裂いて内臓にメスを入れて……フランもレントも無事でいられるのか……?
最悪手足は切っても生きていられる。でも腹の中身はそうはいかない。良いのかそんな事をして、そのせいで二人が死んでしまったら俺はどうしたら良い?
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