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85 それって
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「仕事したくねー」
「大して働いてない癖に」
「……歴代のクォンツの王の中では働いてる方だ!」
元々あまり他国との交流が無かったのに、帝国との頻繁なやり取りが出来てしまった。他国にも注目されるようになり、ついでに俺の存在も尾鰭がついて広がっているらしい。
「どんな病人でも治す奇跡の聖女ってなんだよ。俺は病気は治せねーよ。もげたもんだけだ」
「やれば出来るんじゃねぇの?」
書類にハンコを押しながら、レントは呑気に言うけれど全然違うじゃねーか。
「んな訳ねぇだろ。怪我と病気は別もんだ。レント、病気にはなんなよ」
そういえば俺も病気で死んだんだっけ。まだ若かったからあっという間だったなぁ。熱が出て……ちょっと怠いなって思ったら入院して。
「へっ!そんなもんなんねぇよ。風邪だって大して引いたことねぇのに」
獣人は体が丈夫だ!なんて言う。確かに俺より丈夫だけどな!
「なら良いんだけど」
「おう、仕事はしたくねーけど、あいつにゃ負けたくねぇ」
あいつ、フランの事だ。子供が産まれるたびにおめでとうとメッセージカードは来たけど、やっぱりフランには会っていない。
フランの名君ぶりはクォンツにまで届いていて、帝国領で一番住み良い国はユバルらしい……けど、フランが結婚したとか子供が産まれたとか言う話は聞いた事が無い。
あの時、帝国に残ったリュンが帝国の次期女帝に確定していて、そのリュンから熱烈な求愛を受けているとか、いないとかは小耳に挟んだけど。
フランはちゃんと幸せなんだろうか。本人に聞いてみたいが、俺にはそれを聞く権利がない気がする……。
「ま、レントが書類なんて、頭から煙が出る前に止めろよ?知恵熱が出るぞ」
脳筋系の奴だからなぁ。机に黙って座っているだけでも苦痛を感じるタイプだ。
「んなもん出る訳ねーだろ!ガキじゃねぇんだし。でもまあ、少し頭はいてーから休憩だな」
俺をぎゅっと抱き寄せる。執務室だぞ!ここは。と、思いつつも
「なあ、レント。やっぱり少し熱があるんじゃねぇ?」
元々体温は高めだと思ってるけど、いつもより熱い気がする。
「ま、まさかマジで知恵熱……嘘だろ……?」
「子供かよ」
レントの熱は下がらなかった。あの時の俺と一緒だった。
「大して働いてない癖に」
「……歴代のクォンツの王の中では働いてる方だ!」
元々あまり他国との交流が無かったのに、帝国との頻繁なやり取りが出来てしまった。他国にも注目されるようになり、ついでに俺の存在も尾鰭がついて広がっているらしい。
「どんな病人でも治す奇跡の聖女ってなんだよ。俺は病気は治せねーよ。もげたもんだけだ」
「やれば出来るんじゃねぇの?」
書類にハンコを押しながら、レントは呑気に言うけれど全然違うじゃねーか。
「んな訳ねぇだろ。怪我と病気は別もんだ。レント、病気にはなんなよ」
そういえば俺も病気で死んだんだっけ。まだ若かったからあっという間だったなぁ。熱が出て……ちょっと怠いなって思ったら入院して。
「へっ!そんなもんなんねぇよ。風邪だって大して引いたことねぇのに」
獣人は体が丈夫だ!なんて言う。確かに俺より丈夫だけどな!
「なら良いんだけど」
「おう、仕事はしたくねーけど、あいつにゃ負けたくねぇ」
あいつ、フランの事だ。子供が産まれるたびにおめでとうとメッセージカードは来たけど、やっぱりフランには会っていない。
フランの名君ぶりはクォンツにまで届いていて、帝国領で一番住み良い国はユバルらしい……けど、フランが結婚したとか子供が産まれたとか言う話は聞いた事が無い。
あの時、帝国に残ったリュンが帝国の次期女帝に確定していて、そのリュンから熱烈な求愛を受けているとか、いないとかは小耳に挟んだけど。
フランはちゃんと幸せなんだろうか。本人に聞いてみたいが、俺にはそれを聞く権利がない気がする……。
「ま、レントが書類なんて、頭から煙が出る前に止めろよ?知恵熱が出るぞ」
脳筋系の奴だからなぁ。机に黙って座っているだけでも苦痛を感じるタイプだ。
「んなもん出る訳ねーだろ!ガキじゃねぇんだし。でもまあ、少し頭はいてーから休憩だな」
俺をぎゅっと抱き寄せる。執務室だぞ!ここは。と、思いつつも
「なあ、レント。やっぱり少し熱があるんじゃねぇ?」
元々体温は高めだと思ってるけど、いつもより熱い気がする。
「ま、まさかマジで知恵熱……嘘だろ……?」
「子供かよ」
レントの熱は下がらなかった。あの時の俺と一緒だった。
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