【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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80 あれ?なんか

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「リーヤはもともと細っこくて、小さいからほんとでかく見えるな」

「小さくない!普通サイズだ!」

 ガキの頃の栄養事情があまり良くなかったから、俺は確かにがっしりとはしていないが、身長はそれなりにある。仕方がないだろう、背の高さなんて人それぞれだ。

「それにしても立派に膨らんでますね~二人位でしょうか?もう生れてもおかしくない大きさです」

 アライグマ先生も俺の腹を撫でながら目を細めている。しかし、俺には実感はない。確かに中からボコスカと蹴飛ばされるけれど、腹の中に生物が入ってるなんてよくわかんねえ。出てきたら実感が湧くんだろうか?

「そうなのか?俺にゃよくわかんねえよ……って先生、なんか……」

 あれ?なんか、なんか……。

「せんせ、俺……お腹、痛い」

「お?おお?!始まった?!」



《リーヤ、リーヤ、利也。私の選んだ愛し子。筋肉をつける前にそんな無茶して……まだこっちへ来る時じゃないのに、もう!》

 あれ?俺は聞いた事がある声に怒られている。この声は俺に日本の父さんの事を教えてくれた声だ。

《そうよ、リーヤ。利也のお父さんは仕事も辞めちゃって今はリーヤの残した物を直して、必要な人に渡す仕事をしているわ。リサイクルショップっていう名前の骨董屋をやってるのよ。ちょっと面白いでしょう?》

 えっ!?あの父さんが仕事を辞めた!?どういう事?

《もう必死になる理由もないからね。余生は退職金で何とかなるし……今はあなたが心を寄せていた物を大切にしている、そんな感じ。それよりリーヤよ!死にかけちゃって、駄目よ?無理しちゃ》

 お、俺死にかけてるの!?ちょっとまだ死にたくないんだけど……!

《三匹も欲張るからよ……そうね、一匹貰って行こうかしら。最初の子は日本のお父さんにお預けしましょう。その子が出ればあとはスルスルっと出てくるでしょう》

 俺から光の玉が一つだけ抜け出て飛んで行ってしまう。ああ、ごめん。そして父さんを頼むね。

《もう少しあの世界を慈しんであげて。お願いね》

 いいよ、その代わりその子と日本の父さんを見てあげてくれよ。女神様。

《任せなさい、リーヤ》

 少しだけフローラ母さんに似ていて、そして日本の母さんに似ている。そんな人がふわりと浮かび消えていった。おお、なるほどフローラ母さん女神っぽいってマジだったんだな。その人は背中に大きな羽があって、白い羽が一枚抜け落ち、俺の鼻をそわっとくすぐっていった。

「……へ、へっくしょい!」

「呼吸が戻りました!」「ついでに赤ちゃん出ました!」「リーヤ様!?」「もう一発!」

「ふぇ……ふぇっくしょーーーーいっ!」

「でましたーーーー!」

 は?何が?

「みぎゃーーーーーー!」
「みぎゃーーーーーー!」

 なんだかとてつもなくでかい声で叫ぶ何かが、近くにいるようだ。な、なんだ……?

「え、と……?」

 あ、もしかして

「男の子ですよ!リーヤ様!」「とてつもなくお元気です!」「うわ!暴れすぎ!」「落ちる落ちる~~!」

 あー……そうか、赤ちゃんかあ……。

「危なかったですよ!ほんと、ほんとご無事でよかったあああああ!」

 アライグマ先生が泣きながら俺を見ている。その垂れ目の顔を見たら、なんだか安心してしまった。

「良いですよ、もう寝ても。後はお任せください」

「あ、うん……。なんかすげー疲れたから……頼むね」

 よくわからないけれど、良いみたい。スッキリしたし、もう寝ちゃお。おやすみなさい、後の事は起きてからなんとかしようっと。

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