【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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67 前の父親

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 母さんが怪我をさせた女の子?俺の知らない話だ。
 絶対に見た事がないはずなのに、その当時の様子が脳裏に描かれる……。俺を乗せた車が事故を起こしていた。運転手は母さんで被害者がいた。当時5歳位の女の子だ……。

 盛大に叩かれていた。同乗していた俺が無傷で、そして母さんは事故で死んだ。勿論罪は母さんとその家族の俺たちに全部やってきた。
 
 チャイルドシートの俺に気を取られてのよそ見事故。言い逃れのしようもない。

 残った俺と父さんには、色々な物が残された。責任を取るという名目で俺の婚約者みたいな扱いだったお嬢さん。
 向こうの怒りも何もかも父さんは受け入れ、賠償金の為に死ぬ気で働きはじめる。

 幸いなのか、なんなのか。お嬢さんにほとんど後遺症は出ず少し跡は残ったが、好きな人が出来、結婚式を挙げた。
 その時俺は婚約者と言う肩書を失くせたようだ。一つも知らない事だった。

「折角、お前の自由が手に入ったのに……死んでしまうなんて……」

 父さんは小さくなって泣いていた。俺の葬式はこじんまりと行われ、魂の抜けたような父さんは惰性で働いている。


「……なんでだ、父さん」

 俺はもう会えない前世の父さんを見て悲しくなった。なんで言わないんだ、なんで一人で背負うんだ。
 最初は小さかっただろう、でも死んだ時俺はもう社会人で大人だった。

「言えよ、どうして一人で背負うんだ……家族だろ?」

 父さんは俺のことを思ってやっていたっていうのは分かる。でも、どうして俺の気持ちを無視したんだ。

「俺は……一緒に頑張りたかったよ」

 もう会えない前世の父さん。もう取り戻せない俺の過去の人。

「俺さ、この世界の為に頑張るから、あの父さんを少し助けてやってくれよ。……父さんなんだ」

 きっと神様とか言う奴が見せたんだろ?俺が記憶があるままにここに居る理由と、このとんでもない力を持たされた理由。
 
 この世界をお願いします

 そんな優しい声が聞こえた気がした。ああ、俺が出来ることをするから、父さんを頼むよ。



 長い夢だった。俺は全部覚えていて、もう少しこの世界でしっかり生きてみようと思った。

 皇帝の息子の俺だけど、朝は一人で起きてくるし、この城はメイドさんがあんまり居ない。勿論着替えも一人でする。一番手のかかる貴族様は父さんだけど、一緒にいる母さんがお世話しているみたいだ。
 部屋から出て食堂に向かう途中で、ヨレヨレのレントが向から歩いて来た。

 目の下はクマがあるし、髪の毛はぼろぼろでげっそりしている。良い男が台無し。だいぶ脳筋に揉まれたようだな?

「負けねぇ……俺はフランには負けねぇ……」

「あーはいはい。俺は飯行くから寝てなよ」

「……うん……」

 馬鹿なレントだ。俺を放置して、ムキになってフランに突っかかって行くから、俺と父さんの間で密約が結ばれちゃったのにな!

「フランに勝ったの?」

 一応聞いてみると

「引き分けだ!」

 俺は思う。フランもレントもまともに張り合える友達がいなかったんじゃないのか?仲が良いもんな。

 少しだけフランとレントが羨ましい。





 
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