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66 父親
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「リーヤ、私の息子。すまない私の尻拭いばかりをさせている」
ここは父さんの執務室。がらーんとしていて何もない殺風景な部屋だ。積まれているのかと思った書類もない。多分書類仕事は全部眼鏡任せなんだろうな!
「……良いよ、家族だもん」
「そんなお前から私はエルフローラを取り上げた」
はぁ違うけど?父さんの感覚だとそうなるのか??
「違うぞ、父さん。俺が父さんに母さんを押し付けたんだ。俺は一人で自由に生きる……予定だった」
レントに捕まったけど。まあそれは俺のミスだし。
「私がデズモンドに気づかず居たせいで、お前を前に出さなければならなくなった」
「……うん、まあ……」
そうなんだけど……俺は前世、日本の父さんの事を思い出していた。俺は日本の父さんとまともに会話をした記憶がない。
いつでも仕事仕事で、家にほとんど居なかったし、帰って来てもすぐに寝てしまう。
それを思うと今の父さんは俺と向き合ってくれる気はあるんだ。母さんも居て話を聞いてくれる父さんもいるんだ。俺は前より家族に恵まれているよ。
「すまない」
「良いよ、家族だもん。母さん今まですげー苦労したんだ。楽させてやってくれよ……俺はレントの国に行くから」
「リーヤ、行かなくて良い。お前を獣人から守る力を私は持っている。契約だとか何とかは皆が全力をもって解除の方法を探してくれている。お前は皇帝の息子であり、私の息子なんだ……父親らしい事を少しはさせてくれないか?」
父さんの目は本気で、少し怖い。この人の強さは狂気だ。庇護する母さんの為にしか使わない狂気の愛の欠片を俺にくれるのか。
父さんからの確かな愛を見せて貰った気がする。
「ありがとう、父さん。でも俺は結構レントの事気に入ってるんだ。あいつライオンになると毛がすげーんだぜ。厚っ苦しい!てか俺の子供もライオンか!」
あんたの孫はライオンだ!その狂気の目はしまってくれないか?俺はこんな良い両親を授けて貰って幸せ者だよ。ずっと良い両親でいてくれ。俺の為に、血の雨を降らすような事はしないでくれ。
「……私にはいつでも息子の伴侶の首を飛ばす準備がある。ああ見えても、戦いの狡猾さは少ない男であった。実戦で私は負けぬよ」
「うっは!父さん怖い!レントが浮気したら速攻頼むわ!」
「ふ、任せよ」
その夜、俺は夢を見た。懐かしいような思い出したくないような日本の夢だった。
父さんは誰かの結婚式を遠くから見ていた。そして誰かに何か手渡している。大きさからして金だろう。
その足で車を飛ばし、病院へ。ああ、俺が入院して一人で死んで行った病院だ。
「……小山さんの御関係者の方ですか?こちらです」
地下の霊安室に俺は置かれている。自分の死体をみる気持ち悪さ。そして久しぶりに聴いた父親の声。
「利也……」
そうだ、小山利也。俺の名前だった。
「利也、お前の母さんが怪我をさせたお嬢さんの結婚式を見て来たよ。お嬢さんへの賠償金も全て払い終わった。利也……もうお前は何も背負わなくて良い」
父さんは泣いていた。
「どうして、どうしてこんな事に……折角自由になれたのに、利也……死んでしまうなんて」
ここは父さんの執務室。がらーんとしていて何もない殺風景な部屋だ。積まれているのかと思った書類もない。多分書類仕事は全部眼鏡任せなんだろうな!
「……良いよ、家族だもん」
「そんなお前から私はエルフローラを取り上げた」
はぁ違うけど?父さんの感覚だとそうなるのか??
「違うぞ、父さん。俺が父さんに母さんを押し付けたんだ。俺は一人で自由に生きる……予定だった」
レントに捕まったけど。まあそれは俺のミスだし。
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「……うん、まあ……」
そうなんだけど……俺は前世、日本の父さんの事を思い出していた。俺は日本の父さんとまともに会話をした記憶がない。
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それを思うと今の父さんは俺と向き合ってくれる気はあるんだ。母さんも居て話を聞いてくれる父さんもいるんだ。俺は前より家族に恵まれているよ。
「すまない」
「良いよ、家族だもん。母さん今まですげー苦労したんだ。楽させてやってくれよ……俺はレントの国に行くから」
「リーヤ、行かなくて良い。お前を獣人から守る力を私は持っている。契約だとか何とかは皆が全力をもって解除の方法を探してくれている。お前は皇帝の息子であり、私の息子なんだ……父親らしい事を少しはさせてくれないか?」
父さんの目は本気で、少し怖い。この人の強さは狂気だ。庇護する母さんの為にしか使わない狂気の愛の欠片を俺にくれるのか。
父さんからの確かな愛を見せて貰った気がする。
「ありがとう、父さん。でも俺は結構レントの事気に入ってるんだ。あいつライオンになると毛がすげーんだぜ。厚っ苦しい!てか俺の子供もライオンか!」
あんたの孫はライオンだ!その狂気の目はしまってくれないか?俺はこんな良い両親を授けて貰って幸せ者だよ。ずっと良い両親でいてくれ。俺の為に、血の雨を降らすような事はしないでくれ。
「……私にはいつでも息子の伴侶の首を飛ばす準備がある。ああ見えても、戦いの狡猾さは少ない男であった。実戦で私は負けぬよ」
「うっは!父さん怖い!レントが浮気したら速攻頼むわ!」
「ふ、任せよ」
その夜、俺は夢を見た。懐かしいような思い出したくないような日本の夢だった。
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その足で車を飛ばし、病院へ。ああ、俺が入院して一人で死んで行った病院だ。
「……小山さんの御関係者の方ですか?こちらです」
地下の霊安室に俺は置かれている。自分の死体をみる気持ち悪さ。そして久しぶりに聴いた父親の声。
「利也……」
そうだ、小山利也。俺の名前だった。
「利也、お前の母さんが怪我をさせたお嬢さんの結婚式を見て来たよ。お嬢さんへの賠償金も全て払い終わった。利也……もうお前は何も背負わなくて良い」
父さんは泣いていた。
「どうして、どうしてこんな事に……折角自由になれたのに、利也……死んでしまうなんて」
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