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58 分からないよ
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「レント……」
知ってたのか。
「昼間に誰かが来た気配がすればそちらを向き、夜には空を見上げて、誰か俺の知らない奴を待っている!俺に心を傾けつつも、忘れ切れずにため息をついていた!何で迎えに来なかった!リーヤの居所は教えた筈だ!最短ルートも渡した!10日も駆ければついた筈だ!」
「う、うう……」
フランは俯くばかりだった。
「リーヤより優先するもんがあったんだろ、だから絶対に帰ると言う言葉を頼りにしたんだろう?!リーヤが一番でない奴にリーヤは渡せない!俺はリーヤが一番だ。あいつを一番にできない奴には絶対に渡さない!」
「レント……」
「分かるか?俺はほんの少しの護衛しか伴わずにここに来た。これでもクォンツの跡継ぎ、王太子だが俺はリーヤと離れたくない。こんな敵国の真ん中に行く事は皆に反対されたさ!それでも来た。囲まれて首を落とされたとしても、リーヤのそばを離れたくないんだ。俺は俺の国より、俺の命よりリーヤが一番なんだ」
俯くフランの鼻先に剣を突きつけ、レントは自分の心を吐き出す。
「何よりリーヤを一番に出来ねぇお前に、俺は絶対に負けない」
沈黙が流れる。そう言えば、レントが連れてきた護衛は少ない。鷹のハリーとあと二人か。多分そいつらは俺につけた護衛なんだろう。レントだって王様の1番の息子だから、守られる立場の奴なのに。レント自身に護衛は無かったんだ。
「本当はね、レントちゃんからいっぱいお手紙貰っていたのよ」
母さんがポツリポツリと呟く。
「リーヤが気にしてる奴は誰なのか、そいつはこっちに向かっているのか。治してもらっているが、リーヤの体調は問題ないのか。毎回結婚を申し込みたい、許して欲しいと書いてあったわ」
「そんな、事。レントは一言も言ってない」
「ハリーちゃんとメリーちゃんが一生懸命往復したのよ」
母さんは少しだけ笑った。メリーちゃんは鳩の獣人らしい。俺は会ったことがないけど。
「一生懸命過ぎて母さんも父さんも笑っちゃったわ。リーヤがお肉のソースを顔に飛ばした事も書いてあったのよ。獣人族はマナーとか大雑把でも気にしないから、口が悪くても、育ちが悪くても問題ないって。帝国の貴族社会でリーヤは生きては行けない、そうでしょう?」
「……そう、だな。きっと無理だ。俺、字も下手くそだし」
「だから、母さん…それも良いかなって思ったの」
なんだ、母さん公認かよ。言えよ、すげー驚いたじゃねーか。
「父さんは絶対に許さんって認めてなかったけど。折角出来た息子をすぐに取られたくなかったのよ」
「そう、なのか」
「ええ、絶対に殴ってやる!って言ってたけど返り討ちにあったわね。レントちゃんも手を抜かずに全力で行ったのね……それで良いと思うわ」
父さんは修練場の隅で座り込んでレントとフランを静かに見ている。答えを待っているようだ。
「リーヤが欲しければ俺を殺して奪い取れ!それしか方法はない。出来ねえならすっぱり諦めて貰う!」
つがい契約は相手が死ぬまで続く、そう言っていた。だから、相手が死ねば契約は無効になるんだ。
「私は……リーヤが好きだった……」
嘘だ。あれが好きな奴にする態度か?好きなら好きって言ってくれないと俺はわからない。
分からないよ、フラン……。
知ってたのか。
「昼間に誰かが来た気配がすればそちらを向き、夜には空を見上げて、誰か俺の知らない奴を待っている!俺に心を傾けつつも、忘れ切れずにため息をついていた!何で迎えに来なかった!リーヤの居所は教えた筈だ!最短ルートも渡した!10日も駆ければついた筈だ!」
「う、うう……」
フランは俯くばかりだった。
「リーヤより優先するもんがあったんだろ、だから絶対に帰ると言う言葉を頼りにしたんだろう?!リーヤが一番でない奴にリーヤは渡せない!俺はリーヤが一番だ。あいつを一番にできない奴には絶対に渡さない!」
「レント……」
「分かるか?俺はほんの少しの護衛しか伴わずにここに来た。これでもクォンツの跡継ぎ、王太子だが俺はリーヤと離れたくない。こんな敵国の真ん中に行く事は皆に反対されたさ!それでも来た。囲まれて首を落とされたとしても、リーヤのそばを離れたくないんだ。俺は俺の国より、俺の命よりリーヤが一番なんだ」
俯くフランの鼻先に剣を突きつけ、レントは自分の心を吐き出す。
「何よりリーヤを一番に出来ねぇお前に、俺は絶対に負けない」
沈黙が流れる。そう言えば、レントが連れてきた護衛は少ない。鷹のハリーとあと二人か。多分そいつらは俺につけた護衛なんだろう。レントだって王様の1番の息子だから、守られる立場の奴なのに。レント自身に護衛は無かったんだ。
「本当はね、レントちゃんからいっぱいお手紙貰っていたのよ」
母さんがポツリポツリと呟く。
「リーヤが気にしてる奴は誰なのか、そいつはこっちに向かっているのか。治してもらっているが、リーヤの体調は問題ないのか。毎回結婚を申し込みたい、許して欲しいと書いてあったわ」
「そんな、事。レントは一言も言ってない」
「ハリーちゃんとメリーちゃんが一生懸命往復したのよ」
母さんは少しだけ笑った。メリーちゃんは鳩の獣人らしい。俺は会ったことがないけど。
「一生懸命過ぎて母さんも父さんも笑っちゃったわ。リーヤがお肉のソースを顔に飛ばした事も書いてあったのよ。獣人族はマナーとか大雑把でも気にしないから、口が悪くても、育ちが悪くても問題ないって。帝国の貴族社会でリーヤは生きては行けない、そうでしょう?」
「……そう、だな。きっと無理だ。俺、字も下手くそだし」
「だから、母さん…それも良いかなって思ったの」
なんだ、母さん公認かよ。言えよ、すげー驚いたじゃねーか。
「父さんは絶対に許さんって認めてなかったけど。折角出来た息子をすぐに取られたくなかったのよ」
「そう、なのか」
「ええ、絶対に殴ってやる!って言ってたけど返り討ちにあったわね。レントちゃんも手を抜かずに全力で行ったのね……それで良いと思うわ」
父さんは修練場の隅で座り込んでレントとフランを静かに見ている。答えを待っているようだ。
「リーヤが欲しければ俺を殺して奪い取れ!それしか方法はない。出来ねえならすっぱり諦めて貰う!」
つがい契約は相手が死ぬまで続く、そう言っていた。だから、相手が死ねば契約は無効になるんだ。
「私は……リーヤが好きだった……」
嘘だ。あれが好きな奴にする態度か?好きなら好きって言ってくれないと俺はわからない。
分からないよ、フラン……。
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