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54 狭かった俺の世界
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「ホントに?まじで?嘘だろ?」
「いえ、ほぼ間違いなく」
獣人の医者はアライグマだったけど、アライグマは俺の腹の中に赤ちゃんがいるって言うんだよ。
はあ?嘘だろ??全然そんな気しねーし。
「そうですね、大体気づきません。あと3ヶ月もすれば嫌でも分かるでしょうが。出来れば産月にはこちらへ帰って来て頂きたいのです」
「なんで?」
「人族に男性妊娠の事例が少ないですからね。不測の事態に見舞われた時は経験がモノを言います」
ふむ、確かにそりゃそうだ。
「帝国までゆっくり行って、向こうでしばらく過ごして戻って来るつもりだ」
横からレントが口を挟んでくる。何だよ、偉そうだな。お前俺の旦那か?……旦那か。
「尻尾ともお別れですね」
アライグマがニヤリと笑えば
「まあ、代償としちゃ安いもんだろ?」
こちらもニヤリと笑い返すから
「くー!これだから新婚はぁーー!」
地団駄を踏まれてしまった。アライグマにも何かあったんだろうな、頑張れ。
「戻ってきたら、盛大な式をやろう。国中花で飾り立ててぱーっと酒を振る舞う!」
楽しそうに言うもんで、それも悪くないなーなんて思っちまう。不思議なモンだなあ、フランにフラれて酒飲んで1週間くらい遊んでて……そんで拉致されて、嫁にされて子供が出来た?どんなんだよ。
それでも俺を軽々と抱き上げて、嬉しそうに猫っぽい目を細めているレント。
「いや、でもリーヤは酒はやめとけ。お前色々酒で失敗してる気がする」
「お前が言うか!?」
そうだ、酔った勢いでつがい契約だとか、獣人族に伝わる子供を産めるようになる秘薬の「アジェントの酒」なんかをうやむやの内の飲んじまったりしたんだっけ。
「そうだなあ、俺の前でだけ飲んでも良いぜ」
なんだそりゃ?と思うけど、俺がなんかやらかしてもしっかり面倒見てくれるってことだよな。
「そうするかぁ……」
酔っ払うと楽しくなる、あれはとても楽しい。
「おう!そうしとけ!」
楽しそうに廊下を歩いて行く。すれ違う獣人たちもにこやかに見ていて、たまに「仲がイイッスねえ」なんて声をかけてくる。無条件に愛され、周りからも祝福されているコレは俺には甘すぎる蜜のようだった。
来る時とは全く違って乗り心地も最高で、美味いもんを食いながら帝国へ向かう旅は最高だった。
「あー頑張った甲斐もありました~」
今度はのんびりと鷹のハリーは人型のまま、護衛としてついてきた。ハリーの兄貴も騎士として死にかけていたらしい。いっぱい治したからどれだったか覚えてねーけど。
「兄貴が家を継ぐんで、俺はこうして命知らずな王子様の子分ですよ、全く苦労が絶えませんって」
なんて言ってるけど楽しそうだ。一つ困ったことは
「にーちゃま!リーヤちゃま!リュンだよ!」
「どわっ!?」
俺へと大量に持たされた服が入った箱の中から、一番末っ子娘のリュンが飛び出してきたことだ。
「リュンもご旅行して、リーヤちゃまのお国に行きます!」
「あぶねーから駄目!」
「リーヤちゃまは危ない所に住んでたの?リュンが守ってあげる!」
うおー……!?ちょっと正論じゃねーか?レントを見れば、王妃デリウス様そっくりな「諦めよう、絶対無理だから」な凪いだ顔をしている。
「このチビの頑固さは婆様譲りらしい。無理だ連れて行こう」
「お……おう……」
帝国につくまでの旅は賑やかでやかましくて、俺はこんな楽しい旅がある事を初めて知った。思えは俺の世界は狭かった。生まれ育った貧民街しか知らなかったのに。
フランのせいであの汚ねえゴミ溜めから出ることになり、帝国なんかに流れ着き……拉致られたり。そう考えるとフランのお陰ともいえんのか?
「おい、リーヤ。俺以外の男の事考えてたろ、お仕置きすんぞ!」
なんで分かるんだ!?
「嫉妬に狂った獅子は恐ろしいからな?忘れるなよ」
「お、おう。怖そうだな……」
「怖いわよぉ!がおーっ!」
リュンのは可愛いだけだが、それを見てまた目を補足しているのをこんなのも良いな、なんて見てるから俺も相当レントの事が気に入っているみたいだ。
「いえ、ほぼ間違いなく」
獣人の医者はアライグマだったけど、アライグマは俺の腹の中に赤ちゃんがいるって言うんだよ。
はあ?嘘だろ??全然そんな気しねーし。
「そうですね、大体気づきません。あと3ヶ月もすれば嫌でも分かるでしょうが。出来れば産月にはこちらへ帰って来て頂きたいのです」
「なんで?」
「人族に男性妊娠の事例が少ないですからね。不測の事態に見舞われた時は経験がモノを言います」
ふむ、確かにそりゃそうだ。
「帝国までゆっくり行って、向こうでしばらく過ごして戻って来るつもりだ」
横からレントが口を挟んでくる。何だよ、偉そうだな。お前俺の旦那か?……旦那か。
「尻尾ともお別れですね」
アライグマがニヤリと笑えば
「まあ、代償としちゃ安いもんだろ?」
こちらもニヤリと笑い返すから
「くー!これだから新婚はぁーー!」
地団駄を踏まれてしまった。アライグマにも何かあったんだろうな、頑張れ。
「戻ってきたら、盛大な式をやろう。国中花で飾り立ててぱーっと酒を振る舞う!」
楽しそうに言うもんで、それも悪くないなーなんて思っちまう。不思議なモンだなあ、フランにフラれて酒飲んで1週間くらい遊んでて……そんで拉致されて、嫁にされて子供が出来た?どんなんだよ。
それでも俺を軽々と抱き上げて、嬉しそうに猫っぽい目を細めているレント。
「いや、でもリーヤは酒はやめとけ。お前色々酒で失敗してる気がする」
「お前が言うか!?」
そうだ、酔った勢いでつがい契約だとか、獣人族に伝わる子供を産めるようになる秘薬の「アジェントの酒」なんかをうやむやの内の飲んじまったりしたんだっけ。
「そうだなあ、俺の前でだけ飲んでも良いぜ」
なんだそりゃ?と思うけど、俺がなんかやらかしてもしっかり面倒見てくれるってことだよな。
「そうするかぁ……」
酔っ払うと楽しくなる、あれはとても楽しい。
「おう!そうしとけ!」
楽しそうに廊下を歩いて行く。すれ違う獣人たちもにこやかに見ていて、たまに「仲がイイッスねえ」なんて声をかけてくる。無条件に愛され、周りからも祝福されているコレは俺には甘すぎる蜜のようだった。
来る時とは全く違って乗り心地も最高で、美味いもんを食いながら帝国へ向かう旅は最高だった。
「あー頑張った甲斐もありました~」
今度はのんびりと鷹のハリーは人型のまま、護衛としてついてきた。ハリーの兄貴も騎士として死にかけていたらしい。いっぱい治したからどれだったか覚えてねーけど。
「兄貴が家を継ぐんで、俺はこうして命知らずな王子様の子分ですよ、全く苦労が絶えませんって」
なんて言ってるけど楽しそうだ。一つ困ったことは
「にーちゃま!リーヤちゃま!リュンだよ!」
「どわっ!?」
俺へと大量に持たされた服が入った箱の中から、一番末っ子娘のリュンが飛び出してきたことだ。
「リュンもご旅行して、リーヤちゃまのお国に行きます!」
「あぶねーから駄目!」
「リーヤちゃまは危ない所に住んでたの?リュンが守ってあげる!」
うおー……!?ちょっと正論じゃねーか?レントを見れば、王妃デリウス様そっくりな「諦めよう、絶対無理だから」な凪いだ顔をしている。
「このチビの頑固さは婆様譲りらしい。無理だ連れて行こう」
「お……おう……」
帝国につくまでの旅は賑やかでやかましくて、俺はこんな楽しい旅がある事を初めて知った。思えは俺の世界は狭かった。生まれ育った貧民街しか知らなかったのに。
フランのせいであの汚ねえゴミ溜めから出ることになり、帝国なんかに流れ着き……拉致られたり。そう考えるとフランのお陰ともいえんのか?
「おい、リーヤ。俺以外の男の事考えてたろ、お仕置きすんぞ!」
なんで分かるんだ!?
「嫉妬に狂った獅子は恐ろしいからな?忘れるなよ」
「お、おう。怖そうだな……」
「怖いわよぉ!がおーっ!」
リュンのは可愛いだけだが、それを見てまた目を補足しているのをこんなのも良いな、なんて見てるから俺も相当レントの事が気に入っているみたいだ。
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