【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
54 / 113

54 狭かった俺の世界

しおりを挟む
「ホントに?まじで?嘘だろ?」

「いえ、ほぼ間違いなく」

 獣人の医者はアライグマだったけど、アライグマは俺の腹の中に赤ちゃんがいるって言うんだよ。
 はあ?嘘だろ??全然そんな気しねーし。

「そうですね、大体気づきません。あと3ヶ月もすれば嫌でも分かるでしょうが。出来れば産月にはこちらへ帰って来て頂きたいのです」

「なんで?」

「人族に男性妊娠の事例が少ないですからね。不測の事態に見舞われた時は経験がモノを言います」

 ふむ、確かにそりゃそうだ。

「帝国までゆっくり行って、向こうでしばらく過ごして戻って来るつもりだ」

 横からレントが口を挟んでくる。何だよ、偉そうだな。お前俺の旦那か?……旦那か。

「尻尾ともお別れですね」

 アライグマがニヤリと笑えば

「まあ、代償としちゃ安いもんだろ?」

 こちらもニヤリと笑い返すから

「くー!これだから新婚はぁーー!」

 地団駄を踏まれてしまった。アライグマにも何かあったんだろうな、頑張れ。

「戻ってきたら、盛大な式をやろう。国中花で飾り立ててぱーっと酒を振る舞う!」

 楽しそうに言うもんで、それも悪くないなーなんて思っちまう。不思議なモンだなあ、フランにフラれて酒飲んで1週間くらい遊んでて……そんで拉致されて、嫁にされて子供が出来た?どんなんだよ。

 それでも俺を軽々と抱き上げて、嬉しそうに猫っぽい目を細めているレント。

「いや、でもリーヤは酒はやめとけ。お前色々酒で失敗してる気がする」

「お前が言うか!?」

 そうだ、酔った勢いでつがい契約だとか、獣人族に伝わる子供を産めるようになる秘薬の「アジェントの酒」なんかをうやむやの内の飲んじまったりしたんだっけ。

「そうだなあ、俺の前でだけ飲んでも良いぜ」

 なんだそりゃ?と思うけど、俺がなんかやらかしてもしっかり面倒見てくれるってことだよな。

「そうするかぁ……」

 酔っ払うと楽しくなる、あれはとても楽しい。

「おう!そうしとけ!」

 楽しそうに廊下を歩いて行く。すれ違う獣人たちもにこやかに見ていて、たまに「仲がイイッスねえ」なんて声をかけてくる。無条件に愛され、周りからも祝福されているコレは俺には甘すぎる蜜のようだった。

 

 来る時とは全く違って乗り心地も最高で、美味いもんを食いながら帝国へ向かう旅は最高だった。

「あー頑張った甲斐もありました~」

 今度はのんびりと鷹のハリーは人型のまま、護衛としてついてきた。ハリーの兄貴も騎士として死にかけていたらしい。いっぱい治したからどれだったか覚えてねーけど。

「兄貴が家を継ぐんで、俺はこうして命知らずな王子様の子分ですよ、全く苦労が絶えませんって」

 なんて言ってるけど楽しそうだ。一つ困ったことは

「にーちゃま!リーヤちゃま!リュンだよ!」

「どわっ!?」

 俺へと大量に持たされた服が入った箱の中から、一番末っ子娘のリュンが飛び出してきたことだ。

「リュンもご旅行して、リーヤちゃまのお国に行きます!」

「あぶねーから駄目!」

「リーヤちゃまは危ない所に住んでたの?リュンが守ってあげる!」

 うおー……!?ちょっと正論じゃねーか?レントを見れば、王妃デリウス様そっくりな「諦めよう、絶対無理だから」な凪いだ顔をしている。

「このチビの頑固さは婆様譲りらしい。無理だ連れて行こう」

「お……おう……」

 帝国につくまでの旅は賑やかでやかましくて、俺はこんな楽しい旅がある事を初めて知った。思えは俺の世界は狭かった。生まれ育った貧民街しか知らなかったのに。

 フランのせいであの汚ねえゴミ溜めから出ることになり、帝国なんかに流れ着き……拉致られたり。そう考えるとフランのお陰ともいえんのか?

「おい、リーヤ。俺以外の男の事考えてたろ、お仕置きすんぞ!」

 なんで分かるんだ!?

「嫉妬に狂った獅子は恐ろしいからな?忘れるなよ」

「お、おう。怖そうだな……」

「怖いわよぉ!がおーっ!」

 リュンのは可愛いだけだが、それを見てまた目を補足しているのをこんなのも良いな、なんて見てるから俺も相当レントの事が気に入っているみたいだ。


しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...