【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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42 脳筋は飛べるように出来てはいない

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「……」

 わぁ、俺、空飛んでるー。前世では学校の旅行で飛行機に乗った事があるけど、この世界で初めてー。わーすごーい……。

 楽しくも何とも無いけどな!ついでに言えば頭から麻袋を被せられた、伝統的な人攫いスタイルで外は何も見えないし!
 その割にスースーしまくって寒いし!ついでに言えば多分、鳥の獣人の小脇に抱えられてんだよ!
 
 後、二日酔いでまだ気持ち悪りぃんだよ!クソが!クソ野郎がーーー!元フローラ傭兵団の脳筋共は空を飛べるようにできてねーんだよ!追っかけてこれるわけねーだろ!バーカバーカ!

 と、言うわけで、俺、攫われちゃった。ごめん皆、助けてくれー。



 吐き気を我慢しながら、お勤め用の見せ物パンダ馬車に乗り、手を振りながら街の中にある治療院へ、一週間ぶりに出勤した俺。

「エリスリーヤ様!酷い風邪をお召しになっていたとか……おいたわしや」

「も、もう、大丈夫……ですから」

 いや、酔っ払って寝てただけとは口が裂けても言わない。護衛でついて来た脳筋が笑いを堪えるのに苦労している。ふっざけんなよ!

「あ、あの少し冷たいお水が飲みたいのですが……」

「持って来ましょう……ぷっ、やっぱり呑んだ次の日は水ッスよね」

「ほほほほほ!」

 何かぶつけてやりたかったが、手元に何も無かった。くそっ!
 そうして護衛が扉を閉めた瞬間だった。窓がガラリと音を立てて開いた。窓の近くには誰も居ない。そしてここは2階なんだよな。

「え?」

「御身、失礼します!」

「ひゃ」

 頭から麻袋を被せられるとそのまま拉致られた訳。その間、僅か3分。もーどうしろってのよ。いやーこんな方法で来られるとはさしもの俺も対処出来ねーぞ。
 うん、これは俺じゃなくても無理なやつね、うんうん。わかる?わかってくれるかなーー?絶対に俺が悪くない奴ね!!

 どこをどう飛んだのか知らないし、結構飛んでいたとは思うけど、そのうち地上に降ろされた。
 大人しく麻袋を外してくれるのを待っていると、どうも数人に取り囲まれているようだ。
 するりと外されると、うん、ある程度予想通り。強そうな肉食獣人の輪の真ん中にいたわ、俺。どうしようちょっと怖いなー。

「お前が聖女エリスリーヤ姫か?」

「違います」

 ここいらで眼鏡の眼鏡が光るんだよな。

「嘘をつくな!」

「本当です。だって俺、男ですもん」

「そんなはずは!確かにエリスリーヤ姫と呼ばれて居たぞ!」

「まさか偽物?!替え玉か!」

 うんうん、そうそう。そう言う事でーす。やっぱ眼鏡強い、眼鏡凄い!帰ったらボーナス出してもらえるように頼んで上げなくちゃな!

「何と言う事!これでは親父の怪我は……お袋の命は……?リッテも、ガーヴェも死んでしまう!」

 はあ?何か大変な事が起こってるんだね。俺も大変な事が起こったよ、おあいこかな?ねーよ!クソが!

「おい!お前!お前は手足を治せんのか!」

「治せる訳ないでしょー。俺はただの替え玉だもん」

「くそっ!くそっ!!くそーーーー!」

 ライオンの獣人のお兄さんが地面に四つん這いになって拳で殴りつけている。なんか……ちょっと可哀想なくらい泣いちゃってる……。やばいやばい!同情しちゃいそうだった!俺は帰らなくちゃ。母さんが発狂してしまう!きっと母さんが発狂したら、父さんも発狂して、あの帝国が壊れちゃうかもしれないからね。
 そんなことを考えていたら何やら寒気がして、

 ぐおおおおぉぉーーー!

 結構近くから獰猛な叫び声が聞こえて来た。ひゃっ?!これなんかの魔物かぁ?!

「まずいです!王子!ヒュージサーベルタイガーの臭いが!」

「まずい!来ます!」

「くそっ!抜刀!」

 それと同時に近くの茂みから巨大な物が飛び出して、空を覆った大きな大きな、体長は5メートルもあろうかと言う巨大な牙を生やした虎だった。

 え?こんなのこの世界にいたの?俺ってば貧民街生まれ貧民街育ちだから外の事なんも知らなかったよ。こわ!

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