【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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38 集金ってホントいい言葉ですよね

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「第一回エルセリーア杯のうき・・・ゴホン、剣術大会を開催~いたしま~す」

 わーわー!熱気が闘技場を包む。観客席は3層仕立て。一番いい所は流石に貴族、金持ち、座席の料金も高い。2番目は普通に。一番遠くはなんと無料で入れる。屋台が軒を連ね、貴族用入り口には馬車停車場もあり、お高いレストラン、サービス、風呂なんかもある巨大なエンターテイメント施設が完成してた。

「娯楽!集金!集金!素晴らしい施設です」

 集金2回言ったな?眼鏡よ。そして俺は悲しいかな、特別席で軽く手を挙げて立ち上がる。

「日頃の研鑽を存分に発揮してください。大きな怪我がありませんよう、お願い申しアゲマス」

 しまった、最後は感情がこもってない、傍で眼鏡がチッと舌打ちする。やめろ、地味に傷つく。そして脳筋たちの祭典脳筋祭りが開催された。男たちの熱いバトルに平民も貧民も熱狂するし、なけなしの金で焼き鳥が売れ、酒が飛び交い喧嘩が起こって、闘技場警備員が飛んでくる。
 ちなみに喧嘩をして捕まると、前座として闘技場に下ろされて、騎士団長に追い回される。しこたま尻を殴られて解放されると言う訳の分からん罰が待っている。

「捕らえて牢に入れておくのも金がかかりますからね。あー早くデスモンドの一味を始末したいところです」

 見せしめが行われることもあるが大体は皆、脳筋たちの卓越した戦いを楽しみにしている。

「隻眼のシュウ~!」

「魔法剣士カイザ!」

「やっぱジザに1000ゴールド!」

「いや、兄弟2点買いだ!」

 賭博、国営です。

「集金ってホントいい言葉ですよね~」

 眼鏡ェ……。娯楽の提供と脳筋達の称賛を集め、英雄とかカリスマを作って行く。そして入った金で眼鏡は学問の塔を作るらしい。足下に学園を抱え、魔術と真理に近づく眼鏡の塔を……。

 本当にすごいと思う。でも俺には実感はない。凄すぎて夢の中でふわふわと浮いている気がする。俺の中の現実は母さんと二人で汚い貧民街の片隅、食うものもなく寒さに震えて肩を寄せ合っている。母さんが客を取っている間、俺は隅っこで静かに丸まって耳を塞いでいた。
 俺が少し大きくなって自分でいろんなことが出来るようになって……。この能力をこっそり使って人を治したりしながら食いつなぎ、翡翠館を構えた。

 きれいな臭くない服を着て、毎日風呂に入り。世話をしてくれる人がいて、柔らかいベッドで寝て腹いっぱい食べられる。ともすれば前世より豪華な生活は俺には向いていない。
 母さんは父さんの横で笑っている。とてもいい笑顔で、美しい貴族の顔をしていると思う。こうしているとほんのちょっと前まで貧民街の娼館の女将だったなんて誰も信じないだろうな。

 みんなのお陰で俺の下にやってくるデズモンドの被害者は日に日に減っているようだ。やはりあのデズモンド・リストの書かれた者たちは大半が死んでいた。手足をもがれて生きている方が珍しいもんな。残った家族もほとんど見つからず、捜査が打ち切りになる事ばかりだと、アルベルト眼鏡がため息をついていた。





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