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37 それは眼鏡が撒いた餌
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「聖女姫」の存在はあり得ない速度で大陸中に広がった。しかも何の婉曲もされる事なく、正確に。
「なあ聞いたか?長年皇帝を騙していた「切断公爵」の被害者を救う姫の話」
「ああ!聞いたぜ。奇跡の力で取れた手や足を治すんだろう?」
無論、眼鏡と脳筋の仕業である。彼らの失う前の人脈、人望、人材全てを活かして、情報は広げられた。
「政治は腐敗するもの。しかし、最初から腐った部分を削り落として運用すれば幾らか長持ちするのではないか?」
「理想の政治論ですね。やってみたいと思っておりましたが」
「実現……出来ますね」
眼鏡の眼鏡は光っぱなしだし
「理想の君主といえば、理想なんだよなぁ」
「カリウス皇帝は確かに強い」
「しかも金にも権力にも執着はない。執着しているのはただ一人の女性だけ……跡取り息子もこんなんだし」
「こんなんで悪かったな!!」
こんなんが、清純可憐な品の良いドレスに身を包んでガニ股で現れましたよ!
「リーヤ様は男性なのに、肌の艶も良いですし、お顔立ちも可愛らしいですから、お化粧も映えますね!」
「流石に手は荒れていらっしゃいますから、ケアしましょうね」
事情を知った上で「皇帝の一人娘・聖女エリスリーヤ姫」に仕えてくれている侍女達だ。どこぞの良家の娘さんらしく、眼鏡がよりをかけて選んで来た。
「なるべく出身地も偏らないよう、満遍なく」
眼鏡達は本当に徹底していて
「自分が元いた国ではい所の者を連れてくる事にしています……貴族の思惑が絡まない理想的な政治を少しでも楽しみたいんです」
楽しみたい、そう言った。きっとどの眼鏡もどの眼鏡も、何度も自分の良かれと思って提案した物を「貴族の思惑」で潰されたんだろうな。金の為か、薄っぺらい名誉の為から。そんなもん犬も食わねーよ、と思うのは俺が名誉名声に興味がないからだろうな。
フローラ傭兵団は大抵、カリウス皇帝麾下に入った。自由を求める者はちんこ治して出て行った。
「見聞を広めると言ってくれや。舌戦がしたくなったら帰って来る」
なーんていう者もいたし
「もっと強い奴と闘いたい!が、ここが一番強者が集まっている気がする。大会にゃ間に合うように戻って来る」
って奴もいた。なんだ、結局帰って来るつもりなのか。お前らの家かよ!
それで俺の仕事だが、客寄せパンダ並みだ。城からわかりやすい馬車で数日に一回、近くの治療院に出向く。
勿論道すがら手を振ることも忘れない。笑顔を貼り付けながら、
「もっと上品に!」
「限界だ馬鹿っ!」
馬車の中のやり取りは、無邪気に手を振る子供達には聞かせられない。
治療院に着くと特別治療室に入り、厳選されたデズモンドの被害者を治療してゆく。デズモンドの被害者とは言え「使えない貴族」は後回し、もしくは治療されない事もある。
「ゴルド国王子は……」
「すまん!その国出身なんだが、ガラク王子ならちんこは治す必要ない!あいつもう20人は子供がいるクズだ」
「……そうだな」「もう良いな」
命は助けるし、手足も治すが「治らなかった」と、方便を使う事もある。
「申し訳、ございません……」
「な、な、な、な!貴様は!聖女であろう!私を!私を元の体にぃーーー!」
「きゃあっ!」
どうだ?この「きゃあ!」物凄く練習したんだ……演技派の眼鏡の指導は厳しかった。
「聖女殿!」「姫殿下!」「お助けしろ!」
あっという間に「皇帝近衛騎士団」の脳筋腕利きが現れて、元ゴルド国の代表になりそうだったガラク元王子は拘束される。
「エリスリーヤ様は治してくださっているのに!手足が戻っただけでも、感謝をすべきだろう!」
「元王子だからってなんて奴!」
治療院に来ていた国民達も怒りが溢れている。これも全部眼鏡の策略通りなんだから、眼鏡って本当に怖い。
眼鏡の仕掛けた罠通り、元ゴルド国、現ゴルド領は王族が代表にはならず、国の為に粉骨した辺境伯が招かれ、領主に据えられたらしい。
「裏金が大量に見つかり、指示を仰ぎたい」
それくらいしっかり中央に報告する清廉な人物であったのでゴルド領は次第に浄化されて行った。
「なあ聞いたか?長年皇帝を騙していた「切断公爵」の被害者を救う姫の話」
「ああ!聞いたぜ。奇跡の力で取れた手や足を治すんだろう?」
無論、眼鏡と脳筋の仕業である。彼らの失う前の人脈、人望、人材全てを活かして、情報は広げられた。
「政治は腐敗するもの。しかし、最初から腐った部分を削り落として運用すれば幾らか長持ちするのではないか?」
「理想の政治論ですね。やってみたいと思っておりましたが」
「実現……出来ますね」
眼鏡の眼鏡は光っぱなしだし
「理想の君主といえば、理想なんだよなぁ」
「カリウス皇帝は確かに強い」
「しかも金にも権力にも執着はない。執着しているのはただ一人の女性だけ……跡取り息子もこんなんだし」
「こんなんで悪かったな!!」
こんなんが、清純可憐な品の良いドレスに身を包んでガニ股で現れましたよ!
「リーヤ様は男性なのに、肌の艶も良いですし、お顔立ちも可愛らしいですから、お化粧も映えますね!」
「流石に手は荒れていらっしゃいますから、ケアしましょうね」
事情を知った上で「皇帝の一人娘・聖女エリスリーヤ姫」に仕えてくれている侍女達だ。どこぞの良家の娘さんらしく、眼鏡がよりをかけて選んで来た。
「なるべく出身地も偏らないよう、満遍なく」
眼鏡達は本当に徹底していて
「自分が元いた国ではい所の者を連れてくる事にしています……貴族の思惑が絡まない理想的な政治を少しでも楽しみたいんです」
楽しみたい、そう言った。きっとどの眼鏡もどの眼鏡も、何度も自分の良かれと思って提案した物を「貴族の思惑」で潰されたんだろうな。金の為か、薄っぺらい名誉の為から。そんなもん犬も食わねーよ、と思うのは俺が名誉名声に興味がないからだろうな。
フローラ傭兵団は大抵、カリウス皇帝麾下に入った。自由を求める者はちんこ治して出て行った。
「見聞を広めると言ってくれや。舌戦がしたくなったら帰って来る」
なーんていう者もいたし
「もっと強い奴と闘いたい!が、ここが一番強者が集まっている気がする。大会にゃ間に合うように戻って来る」
って奴もいた。なんだ、結局帰って来るつもりなのか。お前らの家かよ!
それで俺の仕事だが、客寄せパンダ並みだ。城からわかりやすい馬車で数日に一回、近くの治療院に出向く。
勿論道すがら手を振ることも忘れない。笑顔を貼り付けながら、
「もっと上品に!」
「限界だ馬鹿っ!」
馬車の中のやり取りは、無邪気に手を振る子供達には聞かせられない。
治療院に着くと特別治療室に入り、厳選されたデズモンドの被害者を治療してゆく。デズモンドの被害者とは言え「使えない貴族」は後回し、もしくは治療されない事もある。
「ゴルド国王子は……」
「すまん!その国出身なんだが、ガラク王子ならちんこは治す必要ない!あいつもう20人は子供がいるクズだ」
「……そうだな」「もう良いな」
命は助けるし、手足も治すが「治らなかった」と、方便を使う事もある。
「申し訳、ございません……」
「な、な、な、な!貴様は!聖女であろう!私を!私を元の体にぃーーー!」
「きゃあっ!」
どうだ?この「きゃあ!」物凄く練習したんだ……演技派の眼鏡の指導は厳しかった。
「聖女殿!」「姫殿下!」「お助けしろ!」
あっという間に「皇帝近衛騎士団」の脳筋腕利きが現れて、元ゴルド国の代表になりそうだったガラク元王子は拘束される。
「エリスリーヤ様は治してくださっているのに!手足が戻っただけでも、感謝をすべきだろう!」
「元王子だからってなんて奴!」
治療院に来ていた国民達も怒りが溢れている。これも全部眼鏡の策略通りなんだから、眼鏡って本当に怖い。
眼鏡の仕掛けた罠通り、元ゴルド国、現ゴルド領は王族が代表にはならず、国の為に粉骨した辺境伯が招かれ、領主に据えられたらしい。
「裏金が大量に見つかり、指示を仰ぎたい」
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