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36 デズモンド・ザサード
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デズモンド・ザサード。元を辿れば貴族でもなかった。少し裕福な商人の出で、カリウス・ランバードが王族達を殺し回ったのに便乗し、捏造の子爵位を賜った。
そこから、行為はエスカレートして行く。商才があったが故に、戦争に乗じて富を築く。金のばらまき、悪事や汚れ仕事も喜んで引き受けた為、貴族達に重宝されたようだ。
「自分より強い者には媚びへつらい、弱い者は徹底的に搾取した……この男が増長したきっかけはユバル国の内戦でしょう」
聞いた事がある名前が出てきて俺は眼鏡を見た。アルベルト・ブロウ。デズモンドに手足以外に家族も屋敷も奪われた眼鏡。
「第一王子が第二王子を妬んだのが発端の内戦です。第一王子が助力を頼んだ隣国王家が、フローラ様を陥れた王女の妹であったが為にカリウス様の怒りに触れました。
内戦で疲弊していたユバルはあっという間に踏み潰され、運悪く第二王子のフランはデズモンドの元に運び込まれてしまいます」
その先は誰も聞きたくないでしょう。とアルベルトは一度溜息をついた。
「フランと言う貴人を好きに出来る事を知った奴は、タガを外してしまったのです。行為はエスカレートし、被害者は増え続けました。特に貴族を狙っている……まさに気狂い」
ぱん、と分厚い書類の束を右手で叩く。
「しかも理解できん事に、手にかけた名のある者は全て記録してあるのです。怖気と吐き気がします」
「……それに元我が名もあるのか?」
馬車の前に立ちはだかったリグロイ団長が眉と眉の間に何本も皺を寄せて聞くとアルベルトはやはり首を縦に振る。
「ええ、調べましたらフローラ傭兵団の全員の名前がありましたよ、勿論私も含めてね」
「首を跳ねろ!」
誰かが言う。
「そんなすぐに楽にして良いのか?!」
「苦しんで、苦しんで死ぬべきだ!」
「1秒たりとも生かしておく必要はない!」
デズモンドの処分は中々決まらない。
「少しづつ獣にでも食わせてやれ!」
「折角光を見た我々が、あんな奴のせいでまた闇に手を突っ込んで良いのか?!」
「同じように手足を……!」
「奴と同じ事をするのか?!怖気が走る!」
現在、デズモンドは城の中庭に設置された小さな檻の中に閉じ込められ生かされている。
「助けて……助けてくれぇ……」
ずっと繰り返しているが、周囲には遮音の魔法が張ってあってよっぽど檻に近づかなければ聞こえない。
「助けてくれ、お前にそう訴えて来た人間を助けた事はあるか?ないだろう。そんなお前を誰が助けるのだ?笑わせる!」
デズモンドに怒りを向ける者がそんな言葉を投げつけている。
「積極的に処分したい者、楽になどさせたくない者、姿を見るのも嫌な者、やり返したい者。何せ奴に借りを返さなければならない者が多すぎて判断がつかない現状です」
アルベルトの言葉は苦い。デズモンドはやり過ぎた。奴の家族や部下も全て拘束され、処分待ちだ。
3人いると言う妻達は何も知らない、助けてくれと懇願しているようだが、何も知らないわけがない。毎日人の悲鳴が響いていた屋敷に住んでいたのだから。
「悪いのはデズモンドで妻や子供、部下は関係ない」
何て綺麗事を言う奴は誰もいなかったし
「奴の息子などは積極的に参加しておりましたからね。情状酌量の余地はないし、更生など笑わせます」
地獄を無理矢理見せられ、そこで笑い尽くされた者の怒りは深い。
「被害者をなるべく見つけてやりたいですが、奴の蛮行期間は長い……特に最初の方に犠牲になった者など、生きてはいないでしょう」
「フランとライードとレフィリーなら元気だぞ。そのうち来るんじゃねーか?俺、治したもん」
アルベルトの眼鏡がズルリとずり落ちたが、直ぐに元に戻った。
「はぁ、なるほど、なるほど。元ユバル方面に人を向かわせましょう。是非彼の意見を聞いてみたいですからね。あと、何か隠していることなどありませんか?!リーヤ様っ!」
か!隠してなんかないぞ!知らなかったし、聞かれなかっただけだ!!もしかしたら何かやってるかもしれねーけど、覚えてないからわかんねーよ!
そこから、行為はエスカレートして行く。商才があったが故に、戦争に乗じて富を築く。金のばらまき、悪事や汚れ仕事も喜んで引き受けた為、貴族達に重宝されたようだ。
「自分より強い者には媚びへつらい、弱い者は徹底的に搾取した……この男が増長したきっかけはユバル国の内戦でしょう」
聞いた事がある名前が出てきて俺は眼鏡を見た。アルベルト・ブロウ。デズモンドに手足以外に家族も屋敷も奪われた眼鏡。
「第一王子が第二王子を妬んだのが発端の内戦です。第一王子が助力を頼んだ隣国王家が、フローラ様を陥れた王女の妹であったが為にカリウス様の怒りに触れました。
内戦で疲弊していたユバルはあっという間に踏み潰され、運悪く第二王子のフランはデズモンドの元に運び込まれてしまいます」
その先は誰も聞きたくないでしょう。とアルベルトは一度溜息をついた。
「フランと言う貴人を好きに出来る事を知った奴は、タガを外してしまったのです。行為はエスカレートし、被害者は増え続けました。特に貴族を狙っている……まさに気狂い」
ぱん、と分厚い書類の束を右手で叩く。
「しかも理解できん事に、手にかけた名のある者は全て記録してあるのです。怖気と吐き気がします」
「……それに元我が名もあるのか?」
馬車の前に立ちはだかったリグロイ団長が眉と眉の間に何本も皺を寄せて聞くとアルベルトはやはり首を縦に振る。
「ええ、調べましたらフローラ傭兵団の全員の名前がありましたよ、勿論私も含めてね」
「首を跳ねろ!」
誰かが言う。
「そんなすぐに楽にして良いのか?!」
「苦しんで、苦しんで死ぬべきだ!」
「1秒たりとも生かしておく必要はない!」
デズモンドの処分は中々決まらない。
「少しづつ獣にでも食わせてやれ!」
「折角光を見た我々が、あんな奴のせいでまた闇に手を突っ込んで良いのか?!」
「同じように手足を……!」
「奴と同じ事をするのか?!怖気が走る!」
現在、デズモンドは城の中庭に設置された小さな檻の中に閉じ込められ生かされている。
「助けて……助けてくれぇ……」
ずっと繰り返しているが、周囲には遮音の魔法が張ってあってよっぽど檻に近づかなければ聞こえない。
「助けてくれ、お前にそう訴えて来た人間を助けた事はあるか?ないだろう。そんなお前を誰が助けるのだ?笑わせる!」
デズモンドに怒りを向ける者がそんな言葉を投げつけている。
「積極的に処分したい者、楽になどさせたくない者、姿を見るのも嫌な者、やり返したい者。何せ奴に借りを返さなければならない者が多すぎて判断がつかない現状です」
アルベルトの言葉は苦い。デズモンドはやり過ぎた。奴の家族や部下も全て拘束され、処分待ちだ。
3人いると言う妻達は何も知らない、助けてくれと懇願しているようだが、何も知らないわけがない。毎日人の悲鳴が響いていた屋敷に住んでいたのだから。
「悪いのはデズモンドで妻や子供、部下は関係ない」
何て綺麗事を言う奴は誰もいなかったし
「奴の息子などは積極的に参加しておりましたからね。情状酌量の余地はないし、更生など笑わせます」
地獄を無理矢理見せられ、そこで笑い尽くされた者の怒りは深い。
「被害者をなるべく見つけてやりたいですが、奴の蛮行期間は長い……特に最初の方に犠牲になった者など、生きてはいないでしょう」
「フランとライードとレフィリーなら元気だぞ。そのうち来るんじゃねーか?俺、治したもん」
アルベルトの眼鏡がズルリとずり落ちたが、直ぐに元に戻った。
「はぁ、なるほど、なるほど。元ユバル方面に人を向かわせましょう。是非彼の意見を聞いてみたいですからね。あと、何か隠していることなどありませんか?!リーヤ様っ!」
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