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33 姫殿下の聖女様
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真っ白な簡素なドレスとヴェールを深々と被り、声音を作って呼ぶ声に応える。
「聖女様!」「聖女姫様!」
ああああーーどうしてこうなったぁーーーー!
「皆さん、順番に」
俺は……俺は……女装して立派に聖女をやっている。泣きたい!
「家族のさ、失敗はぁ……家族で、だろ」
俺が恥ずかしくて目を見ながら言えない事を口にした時、母さんは
「リーヤ!ありがとう、リーヤ」
って大感激するし、カリウス皇帝……まあ、父さん、な?は
「すまない……」
って頭を下げるし。前世で家族に恵まれたとは言えないから、こっちではって思っちゃった訳だよ。
そして俺の気持ちが固まると、フローラ傭兵団の眼鏡達の眼鏡がキラーンと光る訳。
「リーヤ様はぼんやりですから、警備が必要になりますね」
「ええ、何とかしないと10分で攫われそうです」
それに脳筋が追い討ちをかける。
「おいおい毎日攫われたリーヤを探しに行くのか?任せとけ」
お、お前ら!人を何だと思ってるんだ?!?!俺は貧民街生まれの貧民街育ち、荒事だってなんなくこなすんだぞ!
「攫われたりしないし!!」
眼鏡も脳筋もこっちを一瞬でも見たが
「そうですね、もう聖女としましょう」
「あーこの見た目ですから、皇帝の娘でいいでしょう。ヴェールでも被せて?」
おい!人の話を聞け!丸っと無視すんな!
「そうです。皇帝の娘自ら奇跡を起こせば、これまでの悪行は緩和される……」
「そして業務以外は男に戻れば日々の安全も守れますかね」
え?どう言う事?
「聖女かつ皇帝の娘なんてどれだけ価値がある存在だと思うんですか?」
「美味しすぎるカモですよ。しかも弱いし」
カモ?!弱い?!俺はネギなんて背負っちゃいねーからな?!
「良いですか?公務は女性で通すのです。そうすれば皇帝の子供は女と認識されます。そして公務外は元に戻れば危険度は下がります。何せ狙われるのは娘ですからね」
「な、なるほど……!流石眼鏡は頭が良いな!」
「伊達に20年、眼鏡と共に過ごしていませんよ?」
流石だぜ……そして皆、俺の事心配してくれているんだな……任せろ、もう母さんの願いも叶ったし、最後の一本は気合入れて治してやるよ!!
「あらーー!リーヤの女装が毎日みれるのねぇ!リーヤ可愛いからきっと似合うわぁ!母さん、娘も欲しかったのよーー!ドレス!ドレス選びましょう!!」
「え?」
俺は母さんの一声に現実に戻された。じ、女装……?ドレス……?
「ぷ」「気づいた」「女装頑張れよ」
よく見れば脳筋は笑ってるし、眼鏡も
「だから、リーヤ様は騙されて易いんですよ」
わ、笑ってやがる!!てめえら!!
「お、お、お、お前らのちんこ!一回り小さく治してやるうーーーー!」
「ぎゃーーーーーー!」
笑われつつも女装という案は、悪くないと決定した。貧民街生まれ、貧民街育ちの俺が王宮なんかでやっていくには無理がある。
表に出るのは少なくするに限るし、自由に生きたいとも思う。
「この先、どうするかはまだ決められないけど、人は治してやりたいかな……」
理不尽に奪われた物を取り返す手伝いくらいは、してやりたいんだ。
「ありがとう!ありがとう!エリスリーヤ王女殿下!」
ご大層な名前をつけられて、俺は厚いヴェールの下から無理矢理笑みの口元を作った。
「聖女様!」「聖女姫様!」
ああああーーどうしてこうなったぁーーーー!
「皆さん、順番に」
俺は……俺は……女装して立派に聖女をやっている。泣きたい!
「家族のさ、失敗はぁ……家族で、だろ」
俺が恥ずかしくて目を見ながら言えない事を口にした時、母さんは
「リーヤ!ありがとう、リーヤ」
って大感激するし、カリウス皇帝……まあ、父さん、な?は
「すまない……」
って頭を下げるし。前世で家族に恵まれたとは言えないから、こっちではって思っちゃった訳だよ。
そして俺の気持ちが固まると、フローラ傭兵団の眼鏡達の眼鏡がキラーンと光る訳。
「リーヤ様はぼんやりですから、警備が必要になりますね」
「ええ、何とかしないと10分で攫われそうです」
それに脳筋が追い討ちをかける。
「おいおい毎日攫われたリーヤを探しに行くのか?任せとけ」
お、お前ら!人を何だと思ってるんだ?!?!俺は貧民街生まれの貧民街育ち、荒事だってなんなくこなすんだぞ!
「攫われたりしないし!!」
眼鏡も脳筋もこっちを一瞬でも見たが
「そうですね、もう聖女としましょう」
「あーこの見た目ですから、皇帝の娘でいいでしょう。ヴェールでも被せて?」
おい!人の話を聞け!丸っと無視すんな!
「そうです。皇帝の娘自ら奇跡を起こせば、これまでの悪行は緩和される……」
「そして業務以外は男に戻れば日々の安全も守れますかね」
え?どう言う事?
「聖女かつ皇帝の娘なんてどれだけ価値がある存在だと思うんですか?」
「美味しすぎるカモですよ。しかも弱いし」
カモ?!弱い?!俺はネギなんて背負っちゃいねーからな?!
「良いですか?公務は女性で通すのです。そうすれば皇帝の子供は女と認識されます。そして公務外は元に戻れば危険度は下がります。何せ狙われるのは娘ですからね」
「な、なるほど……!流石眼鏡は頭が良いな!」
「伊達に20年、眼鏡と共に過ごしていませんよ?」
流石だぜ……そして皆、俺の事心配してくれているんだな……任せろ、もう母さんの願いも叶ったし、最後の一本は気合入れて治してやるよ!!
「あらーー!リーヤの女装が毎日みれるのねぇ!リーヤ可愛いからきっと似合うわぁ!母さん、娘も欲しかったのよーー!ドレス!ドレス選びましょう!!」
「え?」
俺は母さんの一声に現実に戻された。じ、女装……?ドレス……?
「ぷ」「気づいた」「女装頑張れよ」
よく見れば脳筋は笑ってるし、眼鏡も
「だから、リーヤ様は騙されて易いんですよ」
わ、笑ってやがる!!てめえら!!
「お、お、お、お前らのちんこ!一回り小さく治してやるうーーーー!」
「ぎゃーーーーーー!」
笑われつつも女装という案は、悪くないと決定した。貧民街生まれ、貧民街育ちの俺が王宮なんかでやっていくには無理がある。
表に出るのは少なくするに限るし、自由に生きたいとも思う。
「この先、どうするかはまだ決められないけど、人は治してやりたいかな……」
理不尽に奪われた物を取り返す手伝いくらいは、してやりたいんだ。
「ありがとう!ありがとう!エリスリーヤ王女殿下!」
ご大層な名前をつけられて、俺は厚いヴェールの下から無理矢理笑みの口元を作った。
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