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23 母さんの過去
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「私は元公爵令嬢だった。でも私と婚約者の仲を引き裂こうとする王女の手下に襲われてね。知ってる?純潔を失った結婚前の令嬢は無価値なのよ、笑っちゃうでしょ。貴族って」
「酷え話だ」
「それで、婚約者様とお別れする時に一度だけ関係を持ったわ。ならず者なんか忘れたかったし、婚約者様の事好きだったのよ」
貴族同士の政略結婚なのに、どうも母さんと婚約者は気持ちを通わせていたらしい。だからこそ、婚約者は母さんより地位の高い王女に言い寄られてもそれを断り母さんを選んだ。
そして王女の怒りの矛先は母さんに向き……事件が起こった。
「婚約者様と寝た次の日から、母さんは驚くほど前向きになったの。それまで死ぬ事しか考えてなかったのによ?多分、あなたがお腹に宿ったんだわ」
俺にそんな力はないと思うんだけど、まあ今となっちゃ確かめようも無いけれど、母さんがそう信じてるならそれで良いか。
「私は公爵家から放逐されるまでの間に皆から沢山の事を学び、平民として生きていく術を身につけて、お金も作った。そして追い出されたけれど、女1人、まあ娼婦になるしかなかったわよね」
そうだな、結婚前の令嬢なら、20にはなっていないだろう。そんなお嬢様が一人でやっていけるわけがない。騙されて、結局行き着く所は体を売る事だった。
「家から出された時、もうリーヤがお腹にいた計算ピッタリで生まれて来たし……それにそのリーヤの瞳の色は私の婚約者様だったカリウス・ランドバード侯爵令息と同じ色よ」
手招きされ、母さんの横に座った。持っていたカップを横のテーブルに乗せ、冷えた両手が頬を包む。
「小さい頃は母さんそっくりで可愛かったけど、最近はカリウス様に似て来たわ……カリウス様も良い男なのよ……私のリーヤ」
「母さん……でも、どういう事なんだ……?新皇帝はカリウス・ランドバードって言うんだろう?侯爵じゃないじゃないか」
母さんは俺の顔をじっと見たまま首を横に振った。
「分からないわ……。私が家から放逐された時もカリウス様は手を尽くして私を守ろうとしてくれた……王家に何度も掛け合ってくれたし、汚れた私でも良いから結婚してくれと何度も言われたわ。でもランドバード家に迷惑をかけたくなかったし、私の家は追放を決めたし」
その先の貴族の事なんて母さんに知る術もなかったろう。
「リーヤ、私、その新皇帝に会いたいわ……会わなきゃいけない気がする」
「ふむ……」
これはかなり大変な事だ。まず今の平民の母さんが新皇帝に会えるのかという事。まず難しい事だろうな。
そして俺だ。俺がその皇帝とやらに会えば俺の運命は大きく変わるだろう。母さんは俺が似てきたと言った。
多分見る人が見れば気づいてしまうんだろうな。その話が本当なら俺は皇帝の息子なのか??
嫌だなー、違ってくれれば良いけど、まあ多分母さんの言っている事は真実なのだろう。
俺という存在が皇帝に知られない方が良い。
「良し、その皇帝とやらに逢いに行くか!」
「リーヤ、良いの?」
「おう」
俺の選択肢の中に母さんを一人で行かせるはない。なんだかんだ言って母さんと二人で生きてきた俺は、母さんを大事にしている。
そして母さんも俺を大事に思ってくれている。
「俺の父さんかもしれないんだろ?ちょっと興味あるよ」
本当はないけどな。でも辛そうな母さんを見ていたくは無いぞ。
「酷え話だ」
「それで、婚約者様とお別れする時に一度だけ関係を持ったわ。ならず者なんか忘れたかったし、婚約者様の事好きだったのよ」
貴族同士の政略結婚なのに、どうも母さんと婚約者は気持ちを通わせていたらしい。だからこそ、婚約者は母さんより地位の高い王女に言い寄られてもそれを断り母さんを選んだ。
そして王女の怒りの矛先は母さんに向き……事件が起こった。
「婚約者様と寝た次の日から、母さんは驚くほど前向きになったの。それまで死ぬ事しか考えてなかったのによ?多分、あなたがお腹に宿ったんだわ」
俺にそんな力はないと思うんだけど、まあ今となっちゃ確かめようも無いけれど、母さんがそう信じてるならそれで良いか。
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「家から出された時、もうリーヤがお腹にいた計算ピッタリで生まれて来たし……それにそのリーヤの瞳の色は私の婚約者様だったカリウス・ランドバード侯爵令息と同じ色よ」
手招きされ、母さんの横に座った。持っていたカップを横のテーブルに乗せ、冷えた両手が頬を包む。
「小さい頃は母さんそっくりで可愛かったけど、最近はカリウス様に似て来たわ……カリウス様も良い男なのよ……私のリーヤ」
「母さん……でも、どういう事なんだ……?新皇帝はカリウス・ランドバードって言うんだろう?侯爵じゃないじゃないか」
母さんは俺の顔をじっと見たまま首を横に振った。
「分からないわ……。私が家から放逐された時もカリウス様は手を尽くして私を守ろうとしてくれた……王家に何度も掛け合ってくれたし、汚れた私でも良いから結婚してくれと何度も言われたわ。でもランドバード家に迷惑をかけたくなかったし、私の家は追放を決めたし」
その先の貴族の事なんて母さんに知る術もなかったろう。
「リーヤ、私、その新皇帝に会いたいわ……会わなきゃいけない気がする」
「ふむ……」
これはかなり大変な事だ。まず今の平民の母さんが新皇帝に会えるのかという事。まず難しい事だろうな。
そして俺だ。俺がその皇帝とやらに会えば俺の運命は大きく変わるだろう。母さんは俺が似てきたと言った。
多分見る人が見れば気づいてしまうんだろうな。その話が本当なら俺は皇帝の息子なのか??
嫌だなー、違ってくれれば良いけど、まあ多分母さんの言っている事は真実なのだろう。
俺という存在が皇帝に知られない方が良い。
「良し、その皇帝とやらに逢いに行くか!」
「リーヤ、良いの?」
「おう」
俺の選択肢の中に母さんを一人で行かせるはない。なんだかんだ言って母さんと二人で生きてきた俺は、母さんを大事にしている。
そして母さんも俺を大事に思ってくれている。
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本当はないけどな。でも辛そうな母さんを見ていたくは無いぞ。
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