【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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22 うーん、どうしたもんかな

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「酷い戦争が続いているんだ」

「……奴隷にゃ事欠かないって?」

「いや、それがな?切断公爵ってやばい奴が皇帝の下で幅を利かせていて……そいつが捕虜やら奴隷やらの手足を切りまくるもんだから、使えねーやつばっかり流れてくる」

「うへ」

「みろよ、ここにも沢山溢れてる……」

 俺は奴隷商に来ていた。

「なんて酷い……」

 母さんも一緒だ。2人で遠くに逃げるにしても、護衛が必要だ。俺は剣の腕なんてからきしだし、母さんは刃物は包丁しか持った事がない。

 奴隷商の捨て売り奴隷達、少しまともそうな奴は足が無かったり、手がなかったり……。

「なんでそんな事するんだ?」

「人間を不具にして喜ぶなんて人間のやる事じゃねえーよ。こっちも使えない奴隷ばっかりで商売上がったりさ!」

「はー人間を売り捌く奴隷商に言われるとは、その切断公爵はよっぽどだなぁ」

 俺もため息をつく。直せば使えるけれど、人にあまり知られたくない俺の能力だからなぁ。出来れば直すのは少なく行きたい。
 男なのに聖女とか言われるのも嫌だし、自由に好きな時に作業したいんだ。

「なんでも新皇帝カリウスの下で随分と幅を利かせてるらしい。皇帝は戦争は好きだが、その後の事はその切断公爵に任せてしまうから、もう好き放題らしいぞ」

 はあ。新皇帝カリウスね。どうもそいつが近くの国に戦争を吹っかけまくっていて、連戦戦勝なもんで、戦火が絶えないらしい。俺たちは戦争から逃げる様に遠ざかっているが、いつ火が飛んで来るか分からない。
 早く使える奴隷を仕入れて逃げたいもんだ。

「……ねえ、その皇帝の名前、カリウスって言うの?下の……下の名前はなあに?」

 珍しく母さんが話に割って入った。多分きちんとした教育を受けている母さんは男同士の話に加わる事はあまりない。それなのに、今日は珍しい。しかもなんだか顔色も良くない様な気がする。

「えーと何だっけなぁ……カリウス……、ああ!カリウス・ランドバード皇帝だ」

「カリウス……っ!」

「母さん?!」

 気を失う寸前でしゃがみ込んだ母さんを支える。奴隷商には今日は帰ると伝えて、母さんに肩を貸しながら泊まっている安い宿屋に帰ってきた。

 母さんの顔色はずっと悪く、下を向いて何かを考え込んでいる。

「母さん、あったかい飲み物貰って来た」 

 俺が宿屋に併設されている食堂から温めたミルクをもらって来た。こういう物を飲むと良いだろう?流石にココアはないからね。
 パタンと建て付けの悪い扉を閉め、ベッドに座っている母さんに暖かいカップを手渡した。
 母さんは無言で受け取る。俺も母さんが何か喋るまで黙って居るつもりだ。そして母さんが言った言葉にとりあえず俺は驚くしかなかった。

「カリウス・ランドバードは貴方の父親よ、リーヤ」

 うーん……どうしたもんかな……。
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