【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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21 毛ほどに軽い物

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 母さんが鞄に膝掛けをしまっている。

「んじゃ、ローザ姉さんもメグ姉さんも早くここを出ろよ」

「んー……本当にリーヤに返しにきた借金、貰って良いんだな?」

 何だよ、姉さん。居座るつもりか?やめとけ、やめとけ。

「良いけど、翡翠館は捨てなよ」

「んーー」

 ローザ姉さんの返事は渋い。こりゃ居座るつもりだな?

「……あとは姉さん達の判断に任せるからね?」

「ローザちゃんもメグちゃんも、こんなボロ屋捨てて自由に暮らしましょう?大丈夫よ、私達はまた会えるんだから」

「フローラ母さん、私達はここで母さんに拾われて生きてきた。リーヤに治して貰ってまだ生きてる……母さん、私は離れなくない」

 いつも明るいローザ姉さんとメグ姉さんがそんな事を言うなんて馬鹿な姉さん達だ。娼館の女将が女の子を拾ってくるのは当たり前だし、その女の子が病気だったり、怪我をしていたら治すのは当たり前だろう。
 大事な商売道具なんだから!そんな女将とその息子に大きな恩義を感じる事なんてないのにな!

「姉さん、多分ここにお偉いさんが俺の行方を探しにくると思う。お偉いさんは娼婦の命なんて毛程にも気に留めず消してしまうよ」

 フランはきっと国へ帰るだろう。そして日の当たる場所に出るはずだ。両手両足が揃ったフランを見て、必ず探りを入れる者が出る。
 そしていつか俺に辿り着く。だから、俺と母さんは逃げる。フランの滅んだ国とは逆の方向に。沢山の人数で逃げれば見つかり易いし、俺と一緒にいる事は格段に危険度が上がるけれど。

「絶対にリーヤと離れないの!」

 と、ジタバタ暴れる母さんと俺は一緒に逃げるけど、姉さん達は好きに逃げてほしいと思ったのに。

「なんていうか頑固だからなぁ。自分で決めたらテコでも動かないし」

「そいう事」

 どんな男でも見惚れるような、艶やかな笑みを浮かべるローザ姉さん。その隣で初夏の風に揺れる様に微笑むメグ姉さん。
 俺があんな面倒な奴隷を買って来なければ、ずっとこの暮らしは続いていたのに。誰も俺を責めないし、こうなることは分かっていた。

 体の治ったフランは必ずここを出て行く。冒険者として稼ぎまくっていたライとレフィは旅立つ為の資金と情報を集めていたんだろう。旅の準備をしながら、ウチに金を入れていた。あの2人はどれだけ稼いでいたんだろう。

「命は大切にしてね。死んだら許しませんよ!」

「あはっ!フローラ母さんに言われたら言う事聞くしかないじゃん!」

 それでもここに残るという姉さん達に別れを告げて、俺と母さんは慣れ親しんだ貧民街から逃げ出した。
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