【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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18 諦めた物が戻ると言う事

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「フラン様!」「フラン様!」

「ライ、レフィ……良かった」

 主人とお供の麗しい抱擁、良かったね~。

「お前らでフランを運べよ」

「えー!リーヤに抱っこしてもらいたい~」

「だ、そうです。リーヤ様お願いします!」「そのようにお願いします」

 こ、こいつら使えねえぞ!

「私はフローラ様のお料理のお手伝いに行って参ります」「私はローザ様のマッサージに行って参ります」

「わあ二人とも凄いなあ。もう仕事見つけてきてるの?」

 フランのお供は有能だった……俺が文句をつけられない人達に仕事を貰って働いている。つまり、ライードにもレフィリーにも俺は文句を言えない!くそっ!
 そして2人は本当に良く働いた。

「薪割り終わりましたよ」「こっちもです」

 どんな仕事もにこにこと笑顔でこなす。殴られて変形した顎や鼻、顔も全部治してやったら2人ともやっぱり男前で、この貧民街のババァどももすっかり夢中になってしまっている。

 ライさん、ライさん。家の屋根を直してくれんかねぇ? すぐ行きますよ、少々お待ち下さいね。

 レフィさん、うちの庭の木を切るのを手伝ってくれませんか? 上手に出来るか分かりませんが、やってみましょう。

 2人とも物腰が柔らかく、貴族特有の威圧感もないから皆ホイホイ声をかけてくる。

「捕まっている間に、ね」

 思い出したくもない過去だろう。俺も深くは聞く気もない。2人の体が落ち着いて、問題なく動かせるのを確認してからフランに取り掛かった。

「いっぺんにゃ、出来んからな」

「うん」

「痛いとか気持ち悪くなったら言ってくれ」

「分かった」

 外から見えないように雨戸を閉め、俺はまず腕から取り掛かる。

「まずは肘まで」

 ゆっくりゆっくり時間をかけ、俺はフランの手足を治して行った。

「私の、腕」

「そうだな」

 不便だし、リハビリの事もあるから腕から生やした。

「腕」

 もう絶対に戻らないと思った体の一部が戻って来る。どんな気持ちか俺には分からない。嬉しいんだろうか、それとも欲深くなるんだろうか……。

 迷いながらも俺はフランの手足を完全に治した。少しぎこちなくも全部の指は動くし、スプーンも持てる。
 最初は歩く事が出来なかったけれど、一歩一歩進めるようになり、今はゆっくりなら一人で歩けるまでに回復した。

「リーヤ!」

「おう」

 俺に抱きついてくる腕にも力が戻っている。多分、もう自由に動かせるだろう。

「ただいま戻りました。これ、今日の稼ぎです。お納め下さい」

「まあ!ありがとう」

 ライードとレフィリーは昼間は冒険者としてバンバン魔物を狩っていて、夕方少なくない稼ぎを母さんに渡している。うちの食卓も豪華になって毎日肉が乗っている、凄い。

「住む所、食事、そして治療代。全て稼がなければなりませんからね!任せて下さい。ドラゴンでも狩ってみせますよ」

「あらぁ~良いわねぇ!じゃあ夜の仕事まではしなくて良いかしらねぇ?」

「その方が助かります」

 母さんは残念そうに

「二人とも良い男だから、すぐ常連様がつきそうなんだけどねぇ~流石に昼間あれだけ働いて夜まではねぇ」

 なんてぶつぶつ言っていたから、やっぱり男娼を扱う気満々だったじゃねーか!

 そして綺麗な満月の夜、それは起こった。

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