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15 ないぞ、クーリングオフ
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「あーん!」
「自分で食えよ!」
「スプーンが持てないので」
「リーヤ!フランにちゃんとご飯食べさせてあげて!」
「くそっ!」
何で俺がフランの口に飯を運ばなきゃならないんだ!
「お前の側近はどうした!」
「リーヤに食べさせて貰いたいんだ。その方が美味しいから」
にこっと笑うフランはとても美形だった。眩しい!イケメンと高貴オーラが合わさって輝いて見える。
抜かれたと言う歯も切られた舌も全部治したし、折れたまま放置された鼻も治した。ろくに飯が食えなかったせいで、痩せこけた顔や体はまだ元に戻らないが、それでもフランはとても美しい人だった。
「んな訳ねーだろ!」
母さんの料理は美味い!そのせいだ!
「そんな事、あるよ。リーヤ」
「ひっ!」
耳元で囁くな!何でまだ手足もないフランに押されなきゃならないんだ!フラン、本当に王子様か?!
「フローラ母さん。私、リーヤと結婚したいです。隙があったら襲って良いですか?」
「まあまあ!リーヤは隙だらけだからあまり目立つ所でしては駄目よ?後ちゃんと綺麗にしてからやる事。病気になるわよ」
「分かりました。確か綺麗にする魔道具ありましたよね。お金が貯まったらすぐ買う事にします」
「あ!そうね、それが良いわぁ~~きっとリーヤとフランの子供なら私に似てとっても可愛いでしょうねー!やだ!私、おばあちゃん?!いやーん!」
「ははは!子供達にはフローラお姉ちゃまって呼んで貰いますか?」
「お姉ちゃま!きゃー!可愛い!」
俺は男だからね?子供なんか産めないぞ。俺はどこに突っ込めばいいか分からなくなり、とぼとぼと食堂を後にした。え?なに、俺、マジでとんでもないモノ持って帰って来た……まさか、母さんのあのノリの人間が2人に増えるなんて……。
「く、クーリングオフってない、よな……」
この世界にきて、一番がっくり来た事だった。
めちゃくちゃ母さんと気が合ったフラン王子、もうフランでいい!は実際の所まだ手足が無い。自分で動けなくて、バランスを崩すと
「うえーん、助けて下さいー」
と、泣いている始末。なのに
「こっちがライード。こっちがレフィリー。どちらも私の大切な友達です。2人がいたから、私はまだ生きているんです」
穏やかな笑顔で笑う。普通は絶望して舌でも噛んで死ぬ所だろう。切られた手足は痛むだろうに、辛そうな顔一つせず、2人の前で穏やかに過ごしている。
「あいつ、馬鹿…いてっ……」
「私はリーヤをそんな馬鹿息子に育てた覚えはありませんよ!」
母さんに拳骨で殴られたが、大丈夫。俺だって分かってるよ。フランが色々な物に耐え、まだ命を繋いでいるのは、あの2人を死なせたくないだけだ。
フランが死ねばあの2人も死ぬだろう。フランが生きていればあの2人も石に齧り付いてでも生きる。その強い関係性が3人の命を繋いで来たんだ。
「母さん」
俺が次の言葉を言う前に母さんは口を開いた。
「母さんねーフラン君の事好きよ。それだけ」
フランを治して、ライードを治してレフィリーを治したら、彼らは何をするだろう。
彼ら自身が何もしなくても、彼らを取り巻く汚い陰謀は必ず巻き起こる。それは俺達も巻き込むだろう。そうすると俺のこのあり得ないおかしな能力は恐れられる。
死んでさえいなければ、全てを治せるんだから。
そうしたら、この暮らしはなくなる。母さんも人質にされるかも知れない。俺を自由に使う為に母さんは利用されるかも知れない。ローザ姉さんもメグ姉さんもだ。
「リーヤ。私は昔死んだんです。昔、公爵令嬢だったわたくしは、ならず者の手にかかり、令嬢としての全てを失いました。でもその後にあなたを授かり、また生きる事が出来ています。この二度目の命は貴方に貰った物。あなたの為に使うのは何も惜しくはないのです」
「かあさん」
「可愛いリーヤ。私の、私だけのリーヤ。親は子供の為に命をも投げ出します。更にもう一度あなたに貰った命。あなたが何か失敗しても私はそれを一緒に受け止める覚悟があります」
母さんは綺麗だ。汚れた服、化粧しない顔。家事で荒れた手。俺を全身で受け止めて、愛し育んでくれる人。俺より背が小さいのに大きな、とても大きな人。
「失敗したら、息子と愛の逃避行するんだっけ?」
「ふふ!そうなの!鞄一つ持って逃げるのよ!」
なんだそれ?恋愛小説の主人公みたいじゃねーか!でもにこにこと鞄に詰めるものを考える母さんは本当に楽しそうで、俺は自然と笑顔になる。
「母さん、鞄一つ買おうか」
「ええ!後上等な膝掛けを一つ欲しいわ!寒い時は一緒に肩にかけるのよ」
「分かった。鞄に入るやつにしてくれよ?」
俺はフラン達を治す事にした。
「自分で食えよ!」
「スプーンが持てないので」
「リーヤ!フランにちゃんとご飯食べさせてあげて!」
「くそっ!」
何で俺がフランの口に飯を運ばなきゃならないんだ!
「お前の側近はどうした!」
「リーヤに食べさせて貰いたいんだ。その方が美味しいから」
にこっと笑うフランはとても美形だった。眩しい!イケメンと高貴オーラが合わさって輝いて見える。
抜かれたと言う歯も切られた舌も全部治したし、折れたまま放置された鼻も治した。ろくに飯が食えなかったせいで、痩せこけた顔や体はまだ元に戻らないが、それでもフランはとても美しい人だった。
「んな訳ねーだろ!」
母さんの料理は美味い!そのせいだ!
「そんな事、あるよ。リーヤ」
「ひっ!」
耳元で囁くな!何でまだ手足もないフランに押されなきゃならないんだ!フラン、本当に王子様か?!
「フローラ母さん。私、リーヤと結婚したいです。隙があったら襲って良いですか?」
「まあまあ!リーヤは隙だらけだからあまり目立つ所でしては駄目よ?後ちゃんと綺麗にしてからやる事。病気になるわよ」
「分かりました。確か綺麗にする魔道具ありましたよね。お金が貯まったらすぐ買う事にします」
「あ!そうね、それが良いわぁ~~きっとリーヤとフランの子供なら私に似てとっても可愛いでしょうねー!やだ!私、おばあちゃん?!いやーん!」
「ははは!子供達にはフローラお姉ちゃまって呼んで貰いますか?」
「お姉ちゃま!きゃー!可愛い!」
俺は男だからね?子供なんか産めないぞ。俺はどこに突っ込めばいいか分からなくなり、とぼとぼと食堂を後にした。え?なに、俺、マジでとんでもないモノ持って帰って来た……まさか、母さんのあのノリの人間が2人に増えるなんて……。
「く、クーリングオフってない、よな……」
この世界にきて、一番がっくり来た事だった。
めちゃくちゃ母さんと気が合ったフラン王子、もうフランでいい!は実際の所まだ手足が無い。自分で動けなくて、バランスを崩すと
「うえーん、助けて下さいー」
と、泣いている始末。なのに
「こっちがライード。こっちがレフィリー。どちらも私の大切な友達です。2人がいたから、私はまだ生きているんです」
穏やかな笑顔で笑う。普通は絶望して舌でも噛んで死ぬ所だろう。切られた手足は痛むだろうに、辛そうな顔一つせず、2人の前で穏やかに過ごしている。
「あいつ、馬鹿…いてっ……」
「私はリーヤをそんな馬鹿息子に育てた覚えはありませんよ!」
母さんに拳骨で殴られたが、大丈夫。俺だって分かってるよ。フランが色々な物に耐え、まだ命を繋いでいるのは、あの2人を死なせたくないだけだ。
フランが死ねばあの2人も死ぬだろう。フランが生きていればあの2人も石に齧り付いてでも生きる。その強い関係性が3人の命を繋いで来たんだ。
「母さん」
俺が次の言葉を言う前に母さんは口を開いた。
「母さんねーフラン君の事好きよ。それだけ」
フランを治して、ライードを治してレフィリーを治したら、彼らは何をするだろう。
彼ら自身が何もしなくても、彼らを取り巻く汚い陰謀は必ず巻き起こる。それは俺達も巻き込むだろう。そうすると俺のこのあり得ないおかしな能力は恐れられる。
死んでさえいなければ、全てを治せるんだから。
そうしたら、この暮らしはなくなる。母さんも人質にされるかも知れない。俺を自由に使う為に母さんは利用されるかも知れない。ローザ姉さんもメグ姉さんもだ。
「リーヤ。私は昔死んだんです。昔、公爵令嬢だったわたくしは、ならず者の手にかかり、令嬢としての全てを失いました。でもその後にあなたを授かり、また生きる事が出来ています。この二度目の命は貴方に貰った物。あなたの為に使うのは何も惜しくはないのです」
「かあさん」
「可愛いリーヤ。私の、私だけのリーヤ。親は子供の為に命をも投げ出します。更にもう一度あなたに貰った命。あなたが何か失敗しても私はそれを一緒に受け止める覚悟があります」
母さんは綺麗だ。汚れた服、化粧しない顔。家事で荒れた手。俺を全身で受け止めて、愛し育んでくれる人。俺より背が小さいのに大きな、とても大きな人。
「失敗したら、息子と愛の逃避行するんだっけ?」
「ふふ!そうなの!鞄一つ持って逃げるのよ!」
なんだそれ?恋愛小説の主人公みたいじゃねーか!でもにこにこと鞄に詰めるものを考える母さんは本当に楽しそうで、俺は自然と笑顔になる。
「母さん、鞄一つ買おうか」
「ええ!後上等な膝掛けを一つ欲しいわ!寒い時は一緒に肩にかけるのよ」
「分かった。鞄に入るやつにしてくれよ?」
俺はフラン達を治す事にした。
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