【完結】廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!

鏑木 うりこ

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13 勝手に見出す価値

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 徐々に紫の目に光が戻る。正気を失っていた時より何倍も綺麗な目だった。何かを喋ろうとしていたから、止める。

「喋るな、多分喋る事は出来ない。なんせ舌がないからね」

 王子様ははやり顔色を失ってから、呆然とする。ま、両手両足もないしね。何で起こした、そう言いたそうだった。

「簡潔に言うと、俺は奴隷商で、別の奴隷商からあんた達3人を譲り受けた。娼館で客を取ってもらうために。一応やる気があるのか聞こうと思ってね。嫌なら別に売るけど、どうする?」

「そ、そんな、こ、と、させ、られ……ない!」

 這いずって来た一人が必死の形相で声を絞り出す。ふーん、感じが悪いな。俺も姉さんも眉根が寄ってしまう。

「あんたには聞いていない。さあ、どうする?ここで働く?」

 下を向く王子様は緩く首を振った。

「OK分かった。姉さん、母さんの上得意になんか良さそうな血筋の男を探してる奴いたろう?連絡とってもらえるように頼んでよ」

「分かった。顔もちんこも悪く無いけど、性格が悪いんじゃ要らないわ。きっと高く買ってくれるわよ、この見た目ならね」

「5000万くらい吹っかけてみる?」

「アリアリだわ、信憑性が出るもん」

 ナントカ王家の血筋に価値を見出す者はどこにでもいる。そう言う奴は大抵金持ちだからな。タダで貰ってきた奴隷を5000万は無いだろうって思うが、買取手がそれだけの価値を勝手に見出したのなら、俺に咎はない。

「早く取りに来てって伝えてくれる?ここで飼っておくの面倒だし。こっちの2人はその人に見せたら処分しよう」

「手を噛みそうだもんね」

「あう!あ……っ!」

 出て行こうとするローザ姉さんに王子様は必死で声をかけた。おーお、お心が優しいことで。

「どうした?男娼やるの?」

「あう、あうう……」

 コクコクと頷くけれど、こんな体では、と言っているように聞こえた。

「ああ、大丈夫。商売道具は治しておいたから。ほら、ついてるだろちんこ」

「えう?!」

 変色して腐りかけて折れ曲がっていないちゃんと元通りの奴がしっかり上を向いて自己主張している。

「ああ、ケツいじり回したからな。よく仕込まれてるケツでそっちは教える事ないんじゃない?」

「えう、ええあ、うう?」

 まさか、そんなとか何とか言っているのか何なのか。

「男が客取って寝るのにケツがユルユルのガバガバだったら逃げられるだろうが。馬鹿じゃねーの」

 これだから王子様は困るんだよ。何にも知らないくせに娼婦を馬鹿にしやがって。ここでどうやって必死に生きて来たかも知らない奴ら。あーやだやだ。

「でもリーヤ。これ以上はフローラ母さんに相談しないと駄目じゃないかな?母さん、本気で男娼雇う気があるのかも分かんないし」

 確かに母さんに聞いた方が良さそうだな。俺は姉さんに母さんを呼んでくるように頼んだ。
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