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6 笑ってなかったら許さない
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「カノンちゃんに~身請けのお話が3個きていまーす」
「おー、誰すか?」
「リメル伯爵の妾、レメトル子爵の第二夫人、ゴイズ子爵の夫人でーす」
「レメトル一択だろ?」「そうだな」「それしかない」
カノンの意見は一つも聞かずに俺達の考えは一致した。
「私は皆さんがそういうならその方が一番だと思います」
当のカノンですら自分の事なのに、にこりと笑って俺達の意見を全肯定する。おい!自分の将来だぞ、ちょっとは考えろよ!って言いたい。
「レメトル子爵って、レイさんだよ」
メグ姉がそういうと
「まあ!」
とカノンも顔を赤くしたら、まんざらでもないんだろうな。娼館を利用する貴族は身分や名前を偽るものも多いからね。
「レメトル子爵の夫人はお身体が弱くて、子供が望めないそうです。仮に妊娠しても出産する体力がなく、絶対に子供は作ってはいけないとお医者様から止められているんですって」
どこで仕入れて来たのか知らないが、ローザ姉はレメトル子爵の情報を持っていた。レイさんか、俺も何度か会ったことがある、温和な紳士だ。俺達に土産の菓子とかをくれるいい人で、俺達を見下さない数少ない貴族だ。
「なるほど、レイさんの家で跡継ぎを作ればよいのですね?」
「ええ、奥様もご了承済みです。子育ても奥様一人では無理なので、子供が生まれたからといって取り上げる事も絶対にしませんとお手紙も頂いています」
母さんが質のいい封筒をカノンに手渡す。花の匂いがする手紙を受け取り、隅々までカノンは読んでいる。ぽとりとカノンの目から涙がこぼれた。
「レメトル夫人は……とてもお悩みなのですね。愛し合う方と結婚できただけで幸せです、どうか旦那様をわたくしの死後も支えてくださいませんかと書かれています……奥様、自身の死が近づいている事をご存じのようです」
「5年生きられたら、持った方だと言われているそうです」
「私、行きます。そして奥様をお救いしてきます!」
それには俺達は全員でため息をついた。おーい、カノンー?
「カノン、奥様の為に行くのかい……レイさんに泣かれるぞ?」
「あっ!つい……」
カノンは笑顔でレイさん……レメトル子爵と共に旅立っていった。目立つから馬車は使わずにレメトル子爵のみ来てもらった。何度も客として足を運んでいる場所だから問題なかったようだ。
「はい、100万。残りは分割で宜しいですよ」
「大切にします……妻がいる私の所に……カノンには申し訳ないと思っていますが」
レメトル子爵……いや、ここではレイさんでいい。レイさんはとてもまじめな人だった。
「娼婦が日の当たる所に出してもらえるのです。しかも貴族の家になんて感謝こそすれ、恨むことはまったくありません……私のような死ぬしかなかった奴隷が、こんなきれいな服を着せてもらい、教育もしっかりしてもらえるなんて……フローラ母さん、リーヤ、ローザ姉様、メグ姉様。私、夢みたいです」
「そう言う事は借金を全部払ってからにしろ。払えなくなったら引き取りに行くからな」
いくらかけたと思ってるんだ?……俺が治したから実質かかってねえけど。
「それはいつでも帰ってきていいってことですか?リーヤ」
「カノンは割と稼ぎがいいからな。ここに置いておいても無駄にはならんだろ」
「あ、ありがとう……リーヤ」
カノンは泣き笑いしながらレイさんに手を引かれ、貧民街を出て行った。きっとここには戻ってこない、そして幸せになるだろう。ふん、そのうち集金の時にでも顔でも見に行ってやる。
笑ってなかったら、許さねぇんだからな!!
「おー、誰すか?」
「リメル伯爵の妾、レメトル子爵の第二夫人、ゴイズ子爵の夫人でーす」
「レメトル一択だろ?」「そうだな」「それしかない」
カノンの意見は一つも聞かずに俺達の考えは一致した。
「私は皆さんがそういうならその方が一番だと思います」
当のカノンですら自分の事なのに、にこりと笑って俺達の意見を全肯定する。おい!自分の将来だぞ、ちょっとは考えろよ!って言いたい。
「レメトル子爵って、レイさんだよ」
メグ姉がそういうと
「まあ!」
とカノンも顔を赤くしたら、まんざらでもないんだろうな。娼館を利用する貴族は身分や名前を偽るものも多いからね。
「レメトル子爵の夫人はお身体が弱くて、子供が望めないそうです。仮に妊娠しても出産する体力がなく、絶対に子供は作ってはいけないとお医者様から止められているんですって」
どこで仕入れて来たのか知らないが、ローザ姉はレメトル子爵の情報を持っていた。レイさんか、俺も何度か会ったことがある、温和な紳士だ。俺達に土産の菓子とかをくれるいい人で、俺達を見下さない数少ない貴族だ。
「なるほど、レイさんの家で跡継ぎを作ればよいのですね?」
「ええ、奥様もご了承済みです。子育ても奥様一人では無理なので、子供が生まれたからといって取り上げる事も絶対にしませんとお手紙も頂いています」
母さんが質のいい封筒をカノンに手渡す。花の匂いがする手紙を受け取り、隅々までカノンは読んでいる。ぽとりとカノンの目から涙がこぼれた。
「レメトル夫人は……とてもお悩みなのですね。愛し合う方と結婚できただけで幸せです、どうか旦那様をわたくしの死後も支えてくださいませんかと書かれています……奥様、自身の死が近づいている事をご存じのようです」
「5年生きられたら、持った方だと言われているそうです」
「私、行きます。そして奥様をお救いしてきます!」
それには俺達は全員でため息をついた。おーい、カノンー?
「カノン、奥様の為に行くのかい……レイさんに泣かれるぞ?」
「あっ!つい……」
カノンは笑顔でレイさん……レメトル子爵と共に旅立っていった。目立つから馬車は使わずにレメトル子爵のみ来てもらった。何度も客として足を運んでいる場所だから問題なかったようだ。
「はい、100万。残りは分割で宜しいですよ」
「大切にします……妻がいる私の所に……カノンには申し訳ないと思っていますが」
レメトル子爵……いや、ここではレイさんでいい。レイさんはとてもまじめな人だった。
「娼婦が日の当たる所に出してもらえるのです。しかも貴族の家になんて感謝こそすれ、恨むことはまったくありません……私のような死ぬしかなかった奴隷が、こんなきれいな服を着せてもらい、教育もしっかりしてもらえるなんて……フローラ母さん、リーヤ、ローザ姉様、メグ姉様。私、夢みたいです」
「そう言う事は借金を全部払ってからにしろ。払えなくなったら引き取りに行くからな」
いくらかけたと思ってるんだ?……俺が治したから実質かかってねえけど。
「それはいつでも帰ってきていいってことですか?リーヤ」
「カノンは割と稼ぎがいいからな。ここに置いておいても無駄にはならんだろ」
「あ、ありがとう……リーヤ」
カノンは泣き笑いしながらレイさんに手を引かれ、貧民街を出て行った。きっとここには戻ってこない、そして幸せになるだろう。ふん、そのうち集金の時にでも顔でも見に行ってやる。
笑ってなかったら、許さねぇんだからな!!
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