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2 売られた奴隷をすぐに売る
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「僕は、ここに売られたんですか」
少しでも見た目を良くするために、兎を洗っていたら、ぽつりと呟いた。
「ああ、俺が買った」
汚い奴隷を洗う為の浴室だが、結構広くいい作りになっている。ひねればお湯が出る高価な魔道具も仕込まれている。上からさあささと暖かいお湯をかけられ、兎は項垂れながら抵抗はしない。
「僕はまた売られるんですか」
「ああ、もう少ししたら買い手が来る」
淡々と全てを諦めた兎はそうですか、とだけ呟いた。涙も流さない。きっともうとっくの昔に使い切ったんだろう。だが、そんな事は俺には関係ない。俺はこの安く仕入れた奴隷を高値で捌く、それだけだ。
兎には大小様々な怪我があり、傷も古い物から新しい物まで所狭しと並んでいる。苛立ちのはけ口に奴隷を殴るなんて日常茶飯事だしな。
「やはり耳と腕と……ふむ」
泥や垢なんかを洗い流して石鹸で洗い、白い上から被るワンピースを適当に着せた。
「……こんなきれいな服、久しぶりです」
「……」
折れていない方の手を引く、やはり歩き方がおかしい。その辺は客の要望に従うか。
「リーヤ!リーヤ!頼んでた子が入ったって!!見せてーー!」
騒がしい女の声が狭い店に響く。リンダめ、もう来たか。
「ほら、お前をご所望のご主人様だ」
兎はぎゅっと顔を顰め、握っている手に力を込めた……俺に助けを求めたって無駄だ。俺はお前を売り払う悪い奴隷商なんだからな。
「きゃーーー!超可愛い!買う買う!」
「兎か、狐獣人の若いの一匹。確かに」
リンダは兎をぎゅっと抱きしめた。
「好みー!超可愛い!お姉さんが可愛いがって上げるからねー!」
そう言われて、兎はすくみ上がった。買い主がまだ若い女だとしても、どんな目に合わせられるか分かったものでは無いからな。可愛がられる、その言葉はこの兎にとっては恐怖の言葉だろう、どういう「可愛がられ方」をしたのか一目瞭然の体をしているんだから。
「リンダ基本料金は50万ゴールドからだ」
「オッケー!オプション頼むわ」
「どうする?」
7000で仕入れた奴隷を50万で売るんだ、どうだ、汚いだろう?
「腕は基本に入れていい。使えなきゃ仕事にならん」
「わお!リーヤ太っ腹!じゃあ、耳とこのお肌は見た目が悪いわ、顔だけ……やっぱり全身治して!お姉さん頑張って稼ぐから!」
俺は販売記録にメモをしていく。
「名前は?」
俺たちの会話を聞いていたかいないのか分からないが、兎はぶんぶんと首を振った。ないのか、忘れるよう言われたのかまあどうでもいい。
「リンダの弟だから、リンネにするか」
「適当に決めないで!リーヤ!でもそれ良い!そうして!」
「お、弟……?」
兎はやっと顔を上げた。
「そうよー!まあうちの看板娘?になってね!うちは本屋だから、結構腕力いるからねー!」
「ほ、本屋……ぼ、僕はもう殴られたりしない……?」
リンダはにっこり笑って
「大丈夫よ、もうあなたを殴る人はいないわ。お姉ちゃんが追っ払ってあげる」
洗うとかなり手触りの良かった柔らかい金髪をぽんぽんと撫でる。
「ぼ、ぼく、僕……ぼく……うわああああーーん!」
「あらあら」
リンネと名付けた兎はリンダに抱きついて泣き出した。もう懐いたのか?うん、これなら逃げ出すこともなくバリバリ稼いでくれるだろう。
買ってすぐ逃げ出す奴隷なんて売ったらこっちの商売も上がったりだ。ま、逃げ出せないようにもするんだけどな。
「おい、そろそろ契約するぞ」
「はーい」
リンダはよしよしと兎の頭を撫でながら、元気に返事をした。
少しでも見た目を良くするために、兎を洗っていたら、ぽつりと呟いた。
「ああ、俺が買った」
汚い奴隷を洗う為の浴室だが、結構広くいい作りになっている。ひねればお湯が出る高価な魔道具も仕込まれている。上からさあささと暖かいお湯をかけられ、兎は項垂れながら抵抗はしない。
「僕はまた売られるんですか」
「ああ、もう少ししたら買い手が来る」
淡々と全てを諦めた兎はそうですか、とだけ呟いた。涙も流さない。きっともうとっくの昔に使い切ったんだろう。だが、そんな事は俺には関係ない。俺はこの安く仕入れた奴隷を高値で捌く、それだけだ。
兎には大小様々な怪我があり、傷も古い物から新しい物まで所狭しと並んでいる。苛立ちのはけ口に奴隷を殴るなんて日常茶飯事だしな。
「やはり耳と腕と……ふむ」
泥や垢なんかを洗い流して石鹸で洗い、白い上から被るワンピースを適当に着せた。
「……こんなきれいな服、久しぶりです」
「……」
折れていない方の手を引く、やはり歩き方がおかしい。その辺は客の要望に従うか。
「リーヤ!リーヤ!頼んでた子が入ったって!!見せてーー!」
騒がしい女の声が狭い店に響く。リンダめ、もう来たか。
「ほら、お前をご所望のご主人様だ」
兎はぎゅっと顔を顰め、握っている手に力を込めた……俺に助けを求めたって無駄だ。俺はお前を売り払う悪い奴隷商なんだからな。
「きゃーーー!超可愛い!買う買う!」
「兎か、狐獣人の若いの一匹。確かに」
リンダは兎をぎゅっと抱きしめた。
「好みー!超可愛い!お姉さんが可愛いがって上げるからねー!」
そう言われて、兎はすくみ上がった。買い主がまだ若い女だとしても、どんな目に合わせられるか分かったものでは無いからな。可愛がられる、その言葉はこの兎にとっては恐怖の言葉だろう、どういう「可愛がられ方」をしたのか一目瞭然の体をしているんだから。
「リンダ基本料金は50万ゴールドからだ」
「オッケー!オプション頼むわ」
「どうする?」
7000で仕入れた奴隷を50万で売るんだ、どうだ、汚いだろう?
「腕は基本に入れていい。使えなきゃ仕事にならん」
「わお!リーヤ太っ腹!じゃあ、耳とこのお肌は見た目が悪いわ、顔だけ……やっぱり全身治して!お姉さん頑張って稼ぐから!」
俺は販売記録にメモをしていく。
「名前は?」
俺たちの会話を聞いていたかいないのか分からないが、兎はぶんぶんと首を振った。ないのか、忘れるよう言われたのかまあどうでもいい。
「リンダの弟だから、リンネにするか」
「適当に決めないで!リーヤ!でもそれ良い!そうして!」
「お、弟……?」
兎はやっと顔を上げた。
「そうよー!まあうちの看板娘?になってね!うちは本屋だから、結構腕力いるからねー!」
「ほ、本屋……ぼ、僕はもう殴られたりしない……?」
リンダはにっこり笑って
「大丈夫よ、もうあなたを殴る人はいないわ。お姉ちゃんが追っ払ってあげる」
洗うとかなり手触りの良かった柔らかい金髪をぽんぽんと撫でる。
「ぼ、ぼく、僕……ぼく……うわああああーーん!」
「あらあら」
リンネと名付けた兎はリンダに抱きついて泣き出した。もう懐いたのか?うん、これなら逃げ出すこともなくバリバリ稼いでくれるだろう。
買ってすぐ逃げ出す奴隷なんて売ったらこっちの商売も上がったりだ。ま、逃げ出せないようにもするんだけどな。
「おい、そろそろ契約するぞ」
「はーい」
リンダはよしよしと兎の頭を撫でながら、元気に返事をした。
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