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40 仲良きことは美しき哉?

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「まあ、ここまでおっきくなっちゃったシラスの事を相談したいのもあったし、なんとなくあの人じゃないかと思ったのもあったし……ごめんなさい、迷惑をかけてしまって」

「ううん、この場合マカロンさんは何も悪くない事くらい私だってわかる。シラスは、マカロンさんじゃなきゃダメだって思ったから」

 大変でしたね、と言いながらお店の店長さんがパフェを持って来てくれた。とろりとチョコレートがかかり、生クリームがこの前より増量されている。増量されたことで少しだけ変な形になったパフェが目の前に置かれた。

「お騒がせしました」「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 私とマカロンさんは同時に店長さんに謝罪する。人のいいおじさん、といった風体の店長さんは目元の笑い皺を少し濃くして

「長く人と接する仕事をしていますが、あれほど強烈な人は中々いませんね。お二人が悪い訳ではない事は分かっていますよ」

 と、笑ってくれた。凄くいい人でこっちも自然と笑顔になる。せっかくだし、パフェが溶ける前に美味しくいただこうと思う。

「かなさん、かなさん。良ければ油揚げさんとお話をしてもいいですか?」

「あ、うん。どうぞ」

 マカロンさんの隣に座っているシラスに鞄を渡すと、上から開いて中で見上げていた油揚げとぽそぽそと小声で話し始める。

「シラスさん、おっきくなったねえ~すごいねえ~」

「ありがとう、これも油揚げさんのおかげだよ。あの時かなさんと油揚げさんの所にいけなきゃ私はきっと今頃誰かの栄養になってた」

「栄養!」

 鞄の中に向ってブツブツ言っているシラスはちょっと不気味だけれど、他の人からみづらい席なので大丈夫だろう。

「あの人の両親……父親の方はかなりまともだから、大丈夫だとは思うけど。こっちの理解に及ばない事をしてくる人だから、怖い思いをさせて本当にごめんなさい」

 マカロンさんは本当にすまなさそうに深く深く頭を下げて謝ってくれた。マカロンさんが悪い訳じゃない、むしろ彼女も被害者なのに。

「多分、大丈夫です。でもネットってそう言うところ怖いですけど……続けて行こうとは思います。マカロンさんもシラスの写真増やすんですよね、あの見えそうで見えない奴」

 太もものギリギリまで透けてるスカートとかぐぐっと切れ込みが入ったチャイナドレスとか。マカロンさんの隣でブッ!とシラスが吹き出したけど、マカロンさんは目をキラキラさせて「勿論ですとも!」とテンション高く答えた。

「見えそうで見えない……最高にイイ……!そうそう!カナさん、サイトに上げてない分の見ます!?足がお魚バージョンとかヤバすぎのとかあるんですよ!イヤアア!シラスたん最高ッ!」

「マカ!?や、やめてください!カナさんに見せないで!!」

 スマホの写真を高速でスクロールしてくるマカロンさんとそれを阻止しようと手をバタつかせるシラス。とっても楽しそう。鞄の中からこっそり油揚げが出て来て

「シラスさん、本当に楽しそうですね」

 と狐目を細めたので、

「うん。良かった……栄養にならなくて」

 ぬいぐるみの油揚げをそっと抱き寄せた。

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