【完結】油揚げの動画配信サービス始めます。妖怪はwebの海を行く。

鏑木 うりこ

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39 こ、こいつら付き合ってるな!?

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「嘘よ、嘘よ、嘘よ!!」

 香山さんは叫びながら取り乱している。でも私だって動画をあんな風にされて、しかも悪意って言うのをぶつけられて……かなり頭に来ていたんだ。それにきっぱりはっきり断らないと何か厄介な事になりそうだったし。

 香山さんのご両親は平野……マカロンさんに

「後日改めて連絡します」

 と言い、私には

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。今後このような事はないように私達で見張ります。今日の所は連れ帰ります」

「離して!お父さん、お母さん!!」

 暴れながら香山さん一家は帰って行った……。

「なんなんだろう……あの人は」

「基本的に話は通じないし、嘘……というより妄想と現実の境界があやふやみたい。いい迷惑だよね」

「同じ人間なのに理解出来ないって、こういう事なのかな……」

 来てくれた警察の人にも一旦帰って貰い、喫茶店のマスターにお礼を言って店の方に戻らせてもらった。

「せっかくだし、パフェでも」

 マカロンさんの提案でまたパフェを注文することになった。美味しいんだけどそれより先にマカロンさんが身を乗り出して話し始める。

「それよりカナさん!シラスたんがおっきくなっちゃった!」

「あはは~!良い名前でしょ?白洲啓介。マカがつけてくれたの」

 そして当の本人はのんびりとしてほんわか笑っている。シラスだから白洲ってどういう事なの?

「う、うん……普通の人間サイズだね……」

 あの小魚が急成長である。

「こんなにおっきくなっちゃうと私が作った服を着て貰えないんだけど!」

「その時はちゃんとドールサイズになるって言ってるでしょう?大きさ結構自由自在なんだから~」

「ドールサイズのシラスたんとラブラブデートしたかったのに!」

「かなさんを驚かそうって言ってたのはマカだよね??」

 えっ……何?この二人滅茶苦茶仲が良いの?なんか……

「恋人同士みたいですね」

「油揚げもそう思う?」

「はい!」

 鞄の中から声がして狐のぬいぐるみに戻った油揚げが屈託ない笑顔をしている。

「油揚げや、これはもしかして惚気られている、という奴なのでは?」

「そうでしょうか?ただ、カナさんのお見立ては最高に正しかったってことかなって!」

 油揚げは本当にいい奴!二人をうらやむより先に私の事を褒めてくれるなんて……。

「油揚げ~ありがとう。さっきはちゃんと油揚げになっててくれてありがとうね~」

「僕もああいう悪意をドロドロさせている人の所には行きたくありませんし!」

 大丈夫、油揚げをあの人に上げる気なんてこれっぽっちも起きなかったよ!マカロンさんとシラスがイチャイチャしてるなら私だって油揚げと楽しくおしゃべりだ。傍から鞄に向ってぼそぼそいってる寂しい女だけどね……。

「と、とにかくかなさんにはお礼を言いたくて。シラスが家に来てから楽しくて楽しくて。こうやって一緒に出掛けてくれるのも嬉しいし、作った服を着てくれるのも嬉しいし……」

 マカロンさんは照れ笑い。ああ、良かった、マカロンさんも笑顔だし、シラスも嬉しそうだ。私は良い事をしたと思う。

「カナさんは巫女としての能力が高いですから、適所に振り分け連れて行ってくれる……。ありがとうカナさん。カナさんのお陰で私は消えずにすみましたし、こうして毎日楽しいです。これからも色んな人達がカナさんに助けを求めると思いますが、どうかお力の及ぶ範囲でいいので助けてやってください」

「巫女?誰が??」

「かなさんが、油揚げさんの巫女でしょう?狐の巫女ってこの辺りじゃ結構有名人ですよ」

 へ……初耳なんだけど……?あとこの辺りってなに?え??

「どゆこと?」

 私はシラスより油揚げに聞いてみた。狐の巫女、狐っていったら油揚げだろう??

「し、知りません……けど」

 なんともまあ頼りない返事が返ってきちゃった。もう、油揚げはこういう時困る!

「……もしかして、油揚げさんに自覚はないんですか??あんなにかなさんと一緒にいるのに!因みにマカは私の巫女ですよ?海神の巫女、素敵でかっこ良いでしょう」

「巫女って言っても大してやる事ないけどな!毎日シラスたんをお風呂に入れたりするだけだもん!」

「やっぱ付き合ってるんだ」

「え!?いや、そういうときはシラスたんは半分魚だし!?」

 これは付き合っているに違いないぞ!!一緒にお風呂入るんだ!きゃーーーー!

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