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37 理解できないよ

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 香山さんのご両親と警察がやってきた。

「誠に申し訳ございません!!」

「お父さんお母さん、私は悪くない。あの人が私にぬいぐるみをくれるって言ったのに、勝手にあの人が文句をつけて来たのよ」

 なんと黙って口を噤んでいた香山さんの態度が一変した。最初のあの人で私を指差し、後から「文句をつけたあの人」でマカロンさんを指差したのだ。

 これには私もマカロンさんもシ、シラス……いや白洲さんも絶句した。事の成り行きを見守っていたこの喫茶店のマスターもだ。

「こ、この子は!また妄想を!」

 香山さんの父親は驚いたが、母親はなんと同調した。

「ほ、ほんとなの?博子」

「本当よ、お母さん。私は確かにあの人がぬいぐるみをくれるって連絡くれたからここに来たの。なのに、あの人から私に絡んできたのよ。私、あの人が居るなんて知らなかったもの。いたら会わないように約束したから来なかったわ。日にちをずらして貰ったもの。そうでしょう?」

 私に、にこりと笑いかけた。その笑みが黒くて良くない気にまみれていた。ああ、スマホの画面を通して向けられた悪意、それそっくりだった。間違いない、あの書き込みをしたのはこの香山さんに間違いない。酷い圧が高い笑み。気持ち悪くて吐きそうだ……。

「カナさん!」

 シラスが少し大きな声で名前を呼んでくれる。黒い気がぱっと掻き消える。

「なんて奴。大丈夫ですか、カナさん!」

「え、ああ……ありがとうシラス……。アレはやっぱりあの人なんだね……良く分かったよ」

 怖い、あの香山さんは怖い。

「シラス?シラスたん!?ああ!ホントだ!よく見たらシラスたんそっくり!!かっこいい、王子様だ!わ、私、香山博子!ヒロりんって呼んでください~~」

「博子!?」

 今までシラスを視界に入れていなかったのか、突然シラスを認識した香山さんは信じられない事を言い出した。これには香山さんの母親も顔を青くする。今、そんな話を高テンションで話しかけられても本当に気味が悪いだけだ。

「申し訳ないけれど、香山博子のご両親。以前の約束を覚えていらっしゃると思います。私とその周囲の人に迷惑をかけるようなら……」

 香山さんのご両親は青い顔だ。

「で、でも博子はそちらの方と友達だと……」

 私の方を指差す。えっ友達なんかじゃないですけど!?

「じゃあ、あの方のお名前を知っていますか?」

 ご両親はシラスに一生懸命話しかける香山さんの肩を揺する。

「博子!博子!あの方と友達なんでしょう?あの方の名前はなんて言うの?知っているんでしょう!?」

「え?kanaでしょう?」

「苗字は?」

「……知らない……」

「博子……あなた、本当にあの人の友達なの?」

「友達よ!ネットで仲良くした友達なんて本名知らない事なんていっぱいあるわよ!」

 それはあるかもしれない……私だってダークマカロンさんの名前がぼんやりとしか思い出せないし、まなやんさんの本名は知らない……名前はマナブ何だろうという事だけはぽんたの台詞から分かったくらいだ。

「あの……私、その人の友達ではありません。むしろ迷惑をかけられて気持ち悪い思いをしました。友達なんて言わないでください」

 はっきり言ってやった。

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