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35 お姫様ではないので
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喫茶店の店長さんは気を利かせてか、奥の部屋を貸してくれた。いや、お店で言い合いをしているよりマシだからかもしれない。
「この人の名前は香山博子。去年示談で済ませたけれど、リアルに私の家に来てね、留守中に侵入して警察沙汰になったのよ。次迷惑をかけたら警察に行くって忘れてないわよね」
「あ、貴方には迷惑かけてないでしょう!?」
「私の周りに迷惑をかけたという事は私にも迷惑が掛かってるの!」
この香山博子と言う人の両親と警察が来る間、マカロンさん……本名を平野かさねさんと言うらしいのだけれど……言い合いは続いていた。それより私はシラスが気になってしょうがない、さりげなく香山さんから私を遠ざけてシラスは立っている。
「シラス……白洲さん……?シラスだよね」
私はそっとシラス?に話しかけてみた。そうするとシラスはまあなんというか柔和なイケメン顔をこれまたイケメンに微笑んで
「そうですよ、カナさん。私、成長期だったみたいです」
「そ、そうだったんだ」
「ふふ、かさねさん……いえ、マカが凄かったってだけなんですけどね」
こそこそとシラスと……あと鞄を引き寄せて油揚げにも見えるように三人で内緒話を始めた。
「シ、シラスさん、おっきい!」
「ええ、とうとう油揚げさんに乗れなくなってしまいました」
「ぺっちゃんこになっちゃう!」
油揚げは青い顔をしている。もう、冗談だよ。
「元々私は人魚ですから、半分は人間の体です。大きさと鰭なんかを隠せば、ほらこの通り。人として振る舞えるんです」
「えーと……足は痛くないの?」
きょとん、とシラスは目を丸くしてからほんの少し考えて……。
「カナさん。それはあれですよね、童話の人魚姫のお話で陸に上がった人魚は足がナイフを踏むように痛むっていう……」
「それです」
「かなさん……私はオスですってば……お姫様じゃないし、それに私は妖怪の類ですからね。足は痛く無いですよ!ただ、走っても早くはないです!あはは」
「でもシラスさんは女の子のお洋服着てました。可愛かったですよ」
おっと鞄の中から油揚げがナイスアシストしてくれた。うん、なんか凄いフリフリだったよね。
「あれはマカの趣味ですよ……私としてはフリフリスカートよりかっこいい王子様みたいな服の方を注目していただきたかったんですけれど」
「あれもかっこよかったですー!シラスさんは王子様だったんですね!」
鞄の中で黒豆の目をキラキラさせて油揚げがシラスを見上げている。
「ふふ、油揚げさんにも褒められるなんて嬉しい。ちょっと恥ずかしかったですが、着てよかったです」
あれは恥ずかしがってなかったと思う、ノリノリだったよね?とツッコミは入れないでおこうかな……。
「まあ、見て貰えた通り、マカはああいうお洋服を作るのが大好きで、さらに上手なんです。で、マカの信者って言う人がいっぱいいまして。そのおかげで私はこうしてこの大きさまで戻れたんです。マカってすごいでしょう?」
「うん!マカちゃんすごい、すごい!」
ぴょんぴょんと鞄の中で油揚げが跳ねている。
「……そのせいでカナさんにご迷惑をおかけしたようです。ほとんどいないのですが、あの香山という女性のような人がたまに現れるんですって」
マカさんは本当に仁王立ちで怒っている。まだ香山さんのご両親と警察はついていないけれど……香山さんは大人しく椅子に座っていた。
「どういう事かよくわからないんだ、シラス、理由を知っていたら教えてくれる?」
「ええ、勿論ですよ」
シラスは私の身に何が起こったか教えてくれた。
「この人の名前は香山博子。去年示談で済ませたけれど、リアルに私の家に来てね、留守中に侵入して警察沙汰になったのよ。次迷惑をかけたら警察に行くって忘れてないわよね」
「あ、貴方には迷惑かけてないでしょう!?」
「私の周りに迷惑をかけたという事は私にも迷惑が掛かってるの!」
この香山博子と言う人の両親と警察が来る間、マカロンさん……本名を平野かさねさんと言うらしいのだけれど……言い合いは続いていた。それより私はシラスが気になってしょうがない、さりげなく香山さんから私を遠ざけてシラスは立っている。
「シラス……白洲さん……?シラスだよね」
私はそっとシラス?に話しかけてみた。そうするとシラスはまあなんというか柔和なイケメン顔をこれまたイケメンに微笑んで
「そうですよ、カナさん。私、成長期だったみたいです」
「そ、そうだったんだ」
「ふふ、かさねさん……いえ、マカが凄かったってだけなんですけどね」
こそこそとシラスと……あと鞄を引き寄せて油揚げにも見えるように三人で内緒話を始めた。
「シ、シラスさん、おっきい!」
「ええ、とうとう油揚げさんに乗れなくなってしまいました」
「ぺっちゃんこになっちゃう!」
油揚げは青い顔をしている。もう、冗談だよ。
「元々私は人魚ですから、半分は人間の体です。大きさと鰭なんかを隠せば、ほらこの通り。人として振る舞えるんです」
「えーと……足は痛くないの?」
きょとん、とシラスは目を丸くしてからほんの少し考えて……。
「カナさん。それはあれですよね、童話の人魚姫のお話で陸に上がった人魚は足がナイフを踏むように痛むっていう……」
「それです」
「かなさん……私はオスですってば……お姫様じゃないし、それに私は妖怪の類ですからね。足は痛く無いですよ!ただ、走っても早くはないです!あはは」
「でもシラスさんは女の子のお洋服着てました。可愛かったですよ」
おっと鞄の中から油揚げがナイスアシストしてくれた。うん、なんか凄いフリフリだったよね。
「あれはマカの趣味ですよ……私としてはフリフリスカートよりかっこいい王子様みたいな服の方を注目していただきたかったんですけれど」
「あれもかっこよかったですー!シラスさんは王子様だったんですね!」
鞄の中で黒豆の目をキラキラさせて油揚げがシラスを見上げている。
「ふふ、油揚げさんにも褒められるなんて嬉しい。ちょっと恥ずかしかったですが、着てよかったです」
あれは恥ずかしがってなかったと思う、ノリノリだったよね?とツッコミは入れないでおこうかな……。
「まあ、見て貰えた通り、マカはああいうお洋服を作るのが大好きで、さらに上手なんです。で、マカの信者って言う人がいっぱいいまして。そのおかげで私はこうしてこの大きさまで戻れたんです。マカってすごいでしょう?」
「うん!マカちゃんすごい、すごい!」
ぴょんぴょんと鞄の中で油揚げが跳ねている。
「……そのせいでカナさんにご迷惑をおかけしたようです。ほとんどいないのですが、あの香山という女性のような人がたまに現れるんですって」
マカさんは本当に仁王立ちで怒っている。まだ香山さんのご両親と警察はついていないけれど……香山さんは大人しく椅子に座っていた。
「どういう事かよくわからないんだ、シラス、理由を知っていたら教えてくれる?」
「ええ、勿論ですよ」
シラスは私の身に何が起こったか教えてくれた。
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