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33 悪意

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 嫌な感じがする……。

「かなさん、今日はアイチューブしないんですか?」

 会社から帰り、夕飯を食べた後……いつもなら撮影なんかをしてアイチューブにアップする作業に当てている時間。

「うーん……なんか、ちょっと」

 何故か気乗りがしなかった。もう少し油揚げの信者(?)を増やしてあげたいから、新作をアップしたいんだけれども、心が向かない……。それでもとりあえず自分のページを開いてみた。

「なに、これ……」

「かなさん?」

「あ、荒らしだ……」

 コメント欄が酷い書き込みで溢れている。ただずっと「羨ましい」と書かれ続けている……。怖い……。ちょうどスマホがメッセージの着信音を鳴らした。必要以上にびっくりして飛び上がるとまなやんさんだった。

〈気にせず削除しちゃっていいと思う……僕なんてしょっちゅうだけどね!〉

「あ、見たんだ……まなやんさん」

 どこまでも続く「羨ましい」の文字列。見た目も気持ち悪いけれど……なんだろうそれ以上に目や耳から何か良くないものが画面を通してやってくるそんな感じ……。

「かなさん!!」

「あ、あぶらあげ……」

「かなさん、どこからか「悪意」をぶつけられています!画面を閉じて!」

 油揚げには似合わない鋭い声に、慌ててスマホを閉じた。

「かなさん!かなさん!気が付くのが遅れてごめんなさい!」

「あ、油揚げ……大丈夫、だよ。なんだったのあの感じ……」

 油揚げがぴょんと私の手のひらの上に乗った。凄く怒った顔をして辺りをバタバタと蹴飛ばしたりしている。

「人間の悪意です……画面越しにあんなに強い悪意をぶつけられるなんて。思えば信じる心も集める事ができたんだから、悪意だって集めちゃうのに……頑張って祓いましたけど、まだ残ってるかも。今日は私もかなさんの横で寝ますね!」

「人間の悪意……それが、画面越しに?」

 こくり、油揚げは頷く。

「楽しい気持ちとか嬉しい気持ちとか……そう言うのの逆の感情ですね。凝り固まると厄介なものを生み出しかねません。私もこんな強い悪意が画面から出てくるなんて思ってもみませんでした。今日はもう寝ましょう?悪意を向けられるなんてとても疲れることです」

「え……そ、そうだね……」

 その日は油揚げの提案に従って早めに就寝した。そうだ、ネットは匿名の悪意を向けられる事があるんだ。今まで画面越しで出会った人たちは全員気持ちのいい人ばっかりだったから、忘れかけていた。
 悪意、悪意……私の何気ない言動や動画が誰かの傷に触ったんだろうか。そう思うとなんだか怖くなってくる。少しアイチューブが怖くなってきた。

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