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23 忘れてたけど早く鞄を何とかしてくれ

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 それからも登録者通知は鳴りやまず、私のアイチューブはかなりの人に登録されていった。多分、前の20倍以上入ると思う。凄いなあ、まなやんさん。

 そう思っていたらまなやんさんからメッセージが届いていた。

〈kanaさん、先日はありがとうございました。あの、すいませんが、なるべく早く会えませんでしょうか!〉

「なんだろう??結構切羽詰まってる様子だなあ……」

 そんなちょっとした緊迫感をメッセージから感じ取ってすぐに返信した。

〈大丈夫ですよ、次の日曜日でもあの家電量販店のマクポで待ち合せますか?〉

〈助かります!お願いします!!〉

「ホントなんだろう??」

「じゃあぽんたにも会えますね!僕も連れてってください!」

「いやあ、ぽんたを連れて来てるか分からないじゃない?家でお留守番かもよ?」

「あっ……そうですね……でも、連れてってください!」

 そうだね、家で一人でお留守番は嫌いみたいだもんね。暖かい手触りの油揚げの頭を撫でながら良いよと返事をする。油揚げは甘えん坊だなあ、と思う。

「油揚げ……本当にこんなんで神様業出来てたの?」

「あっ!疑ってるんですか!?僕が神様だっていう事を!」

 ガーン、そんなオノマトペがしっくりきそうな青い顔をする。

「いや、神様って事は疑ってないけど、仕事出来てたのかなってところは疑ってる」

「もっとひどいっ!ちゃんと仕事してました!居るだけでお仕事になるんです~~~~」

 あ、納得だわ。いるだけなら誰でもできるもんね。

「絶対、絶対失礼な事考えてる~~~うわああん!かなさんのいじわる~~~~~」

「あははは」

「わーわーっ!酷い酷い~~~!」

 ぽてぽてと向かってくるけれど、短い豆みたいな手足では速度もない。人差し指で押し返せるレベルだ。でもこうして他愛のないやり取りをする……この部屋で誰かと楽しくしゃべっているなんて、油揚げを拾う前は考えられない事だった。
 朝起きて会社に行き、くたくたになるまで働いて、夜遅く帰って来て疲れ切って寝てしまう。休みの日はたまった疲れを解消するのに大体寝て過ごす……それの繰り返し。人と会うのは会社だけ、人と喋るのは会社で仕事の話だけ、そんな生活。それに比べたらなんて楽しいんだろう。

「かなさん?」

「なあに?油揚げ」

「怖い事があったんですか?顔が怖くなってます。僕が慰めてあげましょうか?」

 心配そうに油揚げがそっと寄って来て、私の前にちょこんと座った。油揚げは良い奴だ、ほぼいなり寿司だけど。

「大丈夫だよ、油揚げ。油揚げと暮らしていると楽しいなって思っただけだから」

 胡麻粒の目が喜びで見開かれたようにみえる、気のせいかな?

「僕も楽しいです!わーい!」

 ぴょん、ぴょん。油揚げは跳ねまわった。そんな油揚げの様子を見ているとこっちまでもっと楽しくなってしまう。ふふ、今となっては油揚げを拾ってよかった。あの高かった鞄の四角い油じみも良い思い出……いや、何とかしたい……。


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