23 / 41
23 忘れてたけど早く鞄を何とかしてくれ
しおりを挟む
それからも登録者通知は鳴りやまず、私のアイチューブはかなりの人に登録されていった。多分、前の20倍以上入ると思う。凄いなあ、まなやんさん。
そう思っていたらまなやんさんからメッセージが届いていた。
〈kanaさん、先日はありがとうございました。あの、すいませんが、なるべく早く会えませんでしょうか!〉
「なんだろう??結構切羽詰まってる様子だなあ……」
そんなちょっとした緊迫感をメッセージから感じ取ってすぐに返信した。
〈大丈夫ですよ、次の日曜日でもあの家電量販店のマクポで待ち合せますか?〉
〈助かります!お願いします!!〉
「ホントなんだろう??」
「じゃあぽんたにも会えますね!僕も連れてってください!」
「いやあ、ぽんたを連れて来てるか分からないじゃない?家でお留守番かもよ?」
「あっ……そうですね……でも、連れてってください!」
そうだね、家で一人でお留守番は嫌いみたいだもんね。暖かい手触りの油揚げの頭を撫でながら良いよと返事をする。油揚げは甘えん坊だなあ、と思う。
「油揚げ……本当にこんなんで神様業出来てたの?」
「あっ!疑ってるんですか!?僕が神様だっていう事を!」
ガーン、そんなオノマトペがしっくりきそうな青い顔をする。
「いや、神様って事は疑ってないけど、仕事出来てたのかなってところは疑ってる」
「もっとひどいっ!ちゃんと仕事してました!居るだけでお仕事になるんです~~~~」
あ、納得だわ。いるだけなら誰でもできるもんね。
「絶対、絶対失礼な事考えてる~~~うわああん!かなさんのいじわる~~~~~」
「あははは」
「わーわーっ!酷い酷い~~~!」
ぽてぽてと向かってくるけれど、短い豆みたいな手足では速度もない。人差し指で押し返せるレベルだ。でもこうして他愛のないやり取りをする……この部屋で誰かと楽しくしゃべっているなんて、油揚げを拾う前は考えられない事だった。
朝起きて会社に行き、くたくたになるまで働いて、夜遅く帰って来て疲れ切って寝てしまう。休みの日はたまった疲れを解消するのに大体寝て過ごす……それの繰り返し。人と会うのは会社だけ、人と喋るのは会社で仕事の話だけ、そんな生活。それに比べたらなんて楽しいんだろう。
「かなさん?」
「なあに?油揚げ」
「怖い事があったんですか?顔が怖くなってます。僕が慰めてあげましょうか?」
心配そうに油揚げがそっと寄って来て、私の前にちょこんと座った。油揚げは良い奴だ、ほぼいなり寿司だけど。
「大丈夫だよ、油揚げ。油揚げと暮らしていると楽しいなって思っただけだから」
胡麻粒の目が喜びで見開かれたようにみえる、気のせいかな?
「僕も楽しいです!わーい!」
ぴょん、ぴょん。油揚げは跳ねまわった。そんな油揚げの様子を見ているとこっちまでもっと楽しくなってしまう。ふふ、今となっては油揚げを拾ってよかった。あの高かった鞄の四角い油じみも良い思い出……いや、何とかしたい……。
そう思っていたらまなやんさんからメッセージが届いていた。
〈kanaさん、先日はありがとうございました。あの、すいませんが、なるべく早く会えませんでしょうか!〉
「なんだろう??結構切羽詰まってる様子だなあ……」
そんなちょっとした緊迫感をメッセージから感じ取ってすぐに返信した。
〈大丈夫ですよ、次の日曜日でもあの家電量販店のマクポで待ち合せますか?〉
〈助かります!お願いします!!〉
「ホントなんだろう??」
「じゃあぽんたにも会えますね!僕も連れてってください!」
「いやあ、ぽんたを連れて来てるか分からないじゃない?家でお留守番かもよ?」
「あっ……そうですね……でも、連れてってください!」
そうだね、家で一人でお留守番は嫌いみたいだもんね。暖かい手触りの油揚げの頭を撫でながら良いよと返事をする。油揚げは甘えん坊だなあ、と思う。
「油揚げ……本当にこんなんで神様業出来てたの?」
「あっ!疑ってるんですか!?僕が神様だっていう事を!」
ガーン、そんなオノマトペがしっくりきそうな青い顔をする。
「いや、神様って事は疑ってないけど、仕事出来てたのかなってところは疑ってる」
「もっとひどいっ!ちゃんと仕事してました!居るだけでお仕事になるんです~~~~」
あ、納得だわ。いるだけなら誰でもできるもんね。
「絶対、絶対失礼な事考えてる~~~うわああん!かなさんのいじわる~~~~~」
「あははは」
「わーわーっ!酷い酷い~~~!」
ぽてぽてと向かってくるけれど、短い豆みたいな手足では速度もない。人差し指で押し返せるレベルだ。でもこうして他愛のないやり取りをする……この部屋で誰かと楽しくしゃべっているなんて、油揚げを拾う前は考えられない事だった。
朝起きて会社に行き、くたくたになるまで働いて、夜遅く帰って来て疲れ切って寝てしまう。休みの日はたまった疲れを解消するのに大体寝て過ごす……それの繰り返し。人と会うのは会社だけ、人と喋るのは会社で仕事の話だけ、そんな生活。それに比べたらなんて楽しいんだろう。
「かなさん?」
「なあに?油揚げ」
「怖い事があったんですか?顔が怖くなってます。僕が慰めてあげましょうか?」
心配そうに油揚げがそっと寄って来て、私の前にちょこんと座った。油揚げは良い奴だ、ほぼいなり寿司だけど。
「大丈夫だよ、油揚げ。油揚げと暮らしていると楽しいなって思っただけだから」
胡麻粒の目が喜びで見開かれたようにみえる、気のせいかな?
「僕も楽しいです!わーい!」
ぴょん、ぴょん。油揚げは跳ねまわった。そんな油揚げの様子を見ているとこっちまでもっと楽しくなってしまう。ふふ、今となっては油揚げを拾ってよかった。あの高かった鞄の四角い油じみも良い思い出……いや、何とかしたい……。
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。
10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。
その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。
それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー?
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる