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21 まなやんさん。
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「俺、アシスタントにぽんた君みたいなツッコミたぬき欲しくて」
「ツッコミたぬき!?」
「あと……実は好きなんだよね、ぬいぐるみ。手触りとか……ああ!もう言うけど、夜ぬいぐるみがないと寝れないタイプなんだよ!」
「あはは……」
私はまなやんさんとコーヒーショップでコーヒーを飲んでいる。だってまなやんさん、ずっとぽんたを触っているんだもん。返してくれないの……。
「可愛いなー本物可愛いなー!なー?ぽんた、うちに来ない?絶対大事に、するよ?」
大事に、の後で私をチラッと見るのはご愛嬌だろう。
「あれ……」
にぎにぎ、さわさわされているぽんた、満更でも無さそうな顔だ……。これは?
「あの、少し待ってくださいね!」
失礼します、と断ってから私はフリマアプリを立ち上げる。
「えーと、あ!入札なしだ、良かったぁ」
「え?入札って……」
まなやんさんがスマホを覗き込んで来たから見せてあげる。
「ぽんたを売りに出してたんです」
「買います!10万で良いですか?!」
「いえいえいえ!!!」
ぽんたは1000円ですし!急いで売るのを取り止める。よしよし。
「差し上げます、可愛がってやってくれますか?」
「あ、待ってね。手持ちがないや、今銀行行ってお金下ろしてくるから。15万でいいかな?」
「差し上げますって!」
しかも増えてるし!!
「いや、こんなに可愛いたぬきをただでは貰えないよ!せめてお金を払わせて欲しい!」
「いえいえいえ!」
何度も何度も繰り返して、コーヒー代と1000円で納得して貰った。
「うわー!ぽんた!今日から君は前島ぽんただよー!かーわいーなーー!」
まなやんさんはぽんたを頬ずりしてとても喜んでいる。そしてぽんたもそれに悪い気はしていない。
自然、二人でいるのがとっても自然な感じがする。ニョロ助もそうだし、ちゅんこもそう。これは、そうなんだろうな。
まなやんさんと別れ、歩き出すと鞄の中で油揚げがしんみりしていた。
「ぽんたが行ってしまいました」
「そうだね」
いなり寿司がちょこんと顔を覗かせた。
「ぽんた、すごく楽しそうでした」
「そうだね」
「まなやんさんがぽんたの大事な人なんでしょうか?」
「……そんな気がするよ」
「良かった……ぽんた」
そうしてカバンの隅で丸くなって泣いていた。嬉しいけど、寂しいんだろう。なんだかんだで良いコンビだったからね。
しばらくそっとしておいてあげようと家に帰った。油揚げはカバンから出るとは言わず、とうとうカバンの中で寝てしまったようだった。
「ツッコミたぬき!?」
「あと……実は好きなんだよね、ぬいぐるみ。手触りとか……ああ!もう言うけど、夜ぬいぐるみがないと寝れないタイプなんだよ!」
「あはは……」
私はまなやんさんとコーヒーショップでコーヒーを飲んでいる。だってまなやんさん、ずっとぽんたを触っているんだもん。返してくれないの……。
「可愛いなー本物可愛いなー!なー?ぽんた、うちに来ない?絶対大事に、するよ?」
大事に、の後で私をチラッと見るのはご愛嬌だろう。
「あれ……」
にぎにぎ、さわさわされているぽんた、満更でも無さそうな顔だ……。これは?
「あの、少し待ってくださいね!」
失礼します、と断ってから私はフリマアプリを立ち上げる。
「えーと、あ!入札なしだ、良かったぁ」
「え?入札って……」
まなやんさんがスマホを覗き込んで来たから見せてあげる。
「ぽんたを売りに出してたんです」
「買います!10万で良いですか?!」
「いえいえいえ!!!」
ぽんたは1000円ですし!急いで売るのを取り止める。よしよし。
「差し上げます、可愛がってやってくれますか?」
「あ、待ってね。手持ちがないや、今銀行行ってお金下ろしてくるから。15万でいいかな?」
「差し上げますって!」
しかも増えてるし!!
「いや、こんなに可愛いたぬきをただでは貰えないよ!せめてお金を払わせて欲しい!」
「いえいえいえ!」
何度も何度も繰り返して、コーヒー代と1000円で納得して貰った。
「うわー!ぽんた!今日から君は前島ぽんただよー!かーわいーなーー!」
まなやんさんはぽんたを頬ずりしてとても喜んでいる。そしてぽんたもそれに悪い気はしていない。
自然、二人でいるのがとっても自然な感じがする。ニョロ助もそうだし、ちゅんこもそう。これは、そうなんだろうな。
まなやんさんと別れ、歩き出すと鞄の中で油揚げがしんみりしていた。
「ぽんたが行ってしまいました」
「そうだね」
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「ぽんた、すごく楽しそうでした」
「そうだね」
「まなやんさんがぽんたの大事な人なんでしょうか?」
「……そんな気がするよ」
「良かった……ぽんた」
そうしてカバンの隅で丸くなって泣いていた。嬉しいけど、寂しいんだろう。なんだかんだで良いコンビだったからね。
しばらくそっとしておいてあげようと家に帰った。油揚げはカバンから出るとは言わず、とうとうカバンの中で寝てしまったようだった。
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