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10 ぽんた、凄い子
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「ごめんなさい、カナさん……」
「良いんだよ、ぽんた。お帰り。ゆっくり探しなよ。さ、部屋に入って」
私の借りているアパートの扉の横に蹲っている少し汚れた羊毛フェルトのタヌキを見つけたのは偶然だった。
「戻って来て良いって言ったでしょ?あんな所にいたら風邪をひくよ」
「ありがとう、カナさん」
ぽんたのパートナー探しは難航している。
「神様は八百万、日本人は1.2億人もいるんだよ。なかなか出会えなくても仕方がないでしょ?」
「……そう、ですね。神様の数より人間の数の方が多いんですものね」
私だって知っている。八百万はたくさん、って意味って事くらいは知ってる。でも、ぽんたの気が少し紛れると良いなと思って言ってみた。
ぽんたには伝わった。
「そんなにいるんだねぇ、凄いねぇ神様って!」
油揚げには伝わって居ないみたいだった。ぽんたのつぶらな目が残念な物を見る目に変わっている。
真面目なぽんたは何度も一人で探しに行き、2.3日するとしょんぼり帰ってくる。
時に泥だらけになり、ゴミだらけになり。昨日はぐっしょり水に落ちたらしい。
「ごめんなさい、カナさん」
「良いよ、全然平気だよ」
ぬるま湯にぽんたをつけて、お洒落着洗剤で優しく洗ってあげる。その間、ウチの油揚げと来たら、ごろごろしているだけ!もう!ぽんたと見比べちゃうよ!
「かーなーさーん、動画撮ってー」
「誰が油揚げの静止画なんて見たいのさ!」
私はぽんたが油揚げを持ち上げている動画をアップしか出来なかった。
「私が主役じゃないみたい……」
「そりゃそうでしょ!」
「あはは!」
ぽんたが笑ってくれたし、コメントもついたしまあよかったかな?頑張れ、ぽんた。
「カナさん!」
「ぽんたお帰り、あれ?どうしたの?」
扉を開けるなり、鼻をふんふんさせたぽんたがとびこんできた。
「それよりカナさん!最近調子が悪いとかありませんか!」
「え?そういえば少し喉が痛いような……?風邪かな?」
少し疲れがたまったのかな?そんな気がする。ぽんたはぎゅっと口を一文字にする。
「カナさん!お掃除はあとでボクがちゃんとします!だから僕のそばに来て!いなりも!」
「ぽんた?」
ぽんたの真剣な様子に、私は油揚げの乗った皿を持ってぽんたの近くに立った。
「仙術!木の葉舞」
ぽんたが何か技を使った!すごい!ぽんた!ぽんたから枯れ葉がぶわーーーっと出てきて部屋中に広がった。……え?枯れ葉を部屋にばらまいたの!!??ぽんた!?掃除ってそういうことなの!?
「ぽ……」
声をかけようとしたけれど、ぽんたはやっぱり真剣な顔でじーっとしている。なんだろう?部屋中に枯れ葉が巻き散らかされ、ぽんたはじっとしている……。
誰も何も動いていないのに、部屋の左隅の枯れ葉がカサリと小さく揺れた。
「そこだッ!!」
なんと羊毛フェルトのポンタがリアル狸に変化して、その動いた葉っぱの元に飛びつき何かとけんかを始めた。
ギャワン!ギャン!シャーーー!獣の争う音がして、私は油揚げを持ったまま逆の隅っこに避難していた。怖いよ!
静かになるとぽんたはリアル狸のまま、口に紐を咥えて隅っこから姿を現した。
「ぽんた?ぽんた、大丈夫……ヒッ!!」
ぽんたがくわえていたのは紐じゃなくて蛇だった!
「良いんだよ、ぽんた。お帰り。ゆっくり探しなよ。さ、部屋に入って」
私の借りているアパートの扉の横に蹲っている少し汚れた羊毛フェルトのタヌキを見つけたのは偶然だった。
「戻って来て良いって言ったでしょ?あんな所にいたら風邪をひくよ」
「ありがとう、カナさん」
ぽんたのパートナー探しは難航している。
「神様は八百万、日本人は1.2億人もいるんだよ。なかなか出会えなくても仕方がないでしょ?」
「……そう、ですね。神様の数より人間の数の方が多いんですものね」
私だって知っている。八百万はたくさん、って意味って事くらいは知ってる。でも、ぽんたの気が少し紛れると良いなと思って言ってみた。
ぽんたには伝わった。
「そんなにいるんだねぇ、凄いねぇ神様って!」
油揚げには伝わって居ないみたいだった。ぽんたのつぶらな目が残念な物を見る目に変わっている。
真面目なぽんたは何度も一人で探しに行き、2.3日するとしょんぼり帰ってくる。
時に泥だらけになり、ゴミだらけになり。昨日はぐっしょり水に落ちたらしい。
「ごめんなさい、カナさん」
「良いよ、全然平気だよ」
ぬるま湯にぽんたをつけて、お洒落着洗剤で優しく洗ってあげる。その間、ウチの油揚げと来たら、ごろごろしているだけ!もう!ぽんたと見比べちゃうよ!
「かーなーさーん、動画撮ってー」
「誰が油揚げの静止画なんて見たいのさ!」
私はぽんたが油揚げを持ち上げている動画をアップしか出来なかった。
「私が主役じゃないみたい……」
「そりゃそうでしょ!」
「あはは!」
ぽんたが笑ってくれたし、コメントもついたしまあよかったかな?頑張れ、ぽんた。
「カナさん!」
「ぽんたお帰り、あれ?どうしたの?」
扉を開けるなり、鼻をふんふんさせたぽんたがとびこんできた。
「それよりカナさん!最近調子が悪いとかありませんか!」
「え?そういえば少し喉が痛いような……?風邪かな?」
少し疲れがたまったのかな?そんな気がする。ぽんたはぎゅっと口を一文字にする。
「カナさん!お掃除はあとでボクがちゃんとします!だから僕のそばに来て!いなりも!」
「ぽんた?」
ぽんたの真剣な様子に、私は油揚げの乗った皿を持ってぽんたの近くに立った。
「仙術!木の葉舞」
ぽんたが何か技を使った!すごい!ぽんた!ぽんたから枯れ葉がぶわーーーっと出てきて部屋中に広がった。……え?枯れ葉を部屋にばらまいたの!!??ぽんた!?掃除ってそういうことなの!?
「ぽ……」
声をかけようとしたけれど、ぽんたはやっぱり真剣な顔でじーっとしている。なんだろう?部屋中に枯れ葉が巻き散らかされ、ぽんたはじっとしている……。
誰も何も動いていないのに、部屋の左隅の枯れ葉がカサリと小さく揺れた。
「そこだッ!!」
なんと羊毛フェルトのポンタがリアル狸に変化して、その動いた葉っぱの元に飛びつき何かとけんかを始めた。
ギャワン!ギャン!シャーーー!獣の争う音がして、私は油揚げを持ったまま逆の隅っこに避難していた。怖いよ!
静かになるとぽんたはリアル狸のまま、口に紐を咥えて隅っこから姿を現した。
「ぽんた?ぽんた、大丈夫……ヒッ!!」
ぽんたがくわえていたのは紐じゃなくて蛇だった!
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