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14 狙って待機していたのかと
しおりを挟む「やっぱりやだな……」
ツルツルと手触りのいい、元の世界でいうならシルクのパジャマを着てベッドに入る。
「ではお休みなさいませ、ハルト様。良い夢を」
「お休みなさい、シア」
そう挨拶をして、扉が閉じられたのを確認してしてから、考え込みそして独り言を呟いた。
「スーリエとジゼルさんとヤる……考えたくない」
しかも100%抱かれる方だ、だってないもの。二人とも良い人だし、優しい。人間的に優れた人格者ということも分かった。でもこれとそれとは話が違う。
「だって付き合っている訳でもないし、更に二人だぞ……?」
ジゼルさんにも色々質問すると、青葉が欲しがっていたスキルの一つ、物理防御を持っているようだ。つまりはスーリエとジゼルさん、二人に抱かれるということ……無理だ。
「でも」
それじゃあいつになったら魔王を倒せるのか。5年後? 6年後? それまでの間、この国やこの世界の人達が何人亡くなるんだ?
「俺のせいで……」
今日だって城に暴れていた魔獣のせいで怪我人が出たという報告が入って来たのを聞いた。働いている人の中に、過去の戦いで酷い怪我を負ったという人もいた。勿論、亡くなった人も数多くいると聞いている。
「俺が少し我慢すれば、すべて丸く収まる……」
そりゃ……恋人もいない前の人生だったから、誰かのことを忘れられないとかそういうのはない。学生時代だってモテる方じゃなかったから非リアの友達とゲームばっかりしてた。会社に行っても浮かれる話なんてなくて、同期の気の合う奴らとたまに飲む程度でその場に女性は殆どいない。
「でもなー……」
好きでもない相手とそんなこと。というかもし仮に俺が誘ったとして、ジゼルさんやスーリエに拒否されたらどうすんだ? 恥ずかしすぎないか!?
「いや! 無理だろう!」
ついそこで大きな声が出たのが大失敗だった。すぐさま控え目に扉がノックされ、返事をする前にシアが音もなく滑り込んできた。ほんと足音がしない奴だな。そのまますっとベッドの横までやって来るんで俺が起き上がる暇もないくらいの速さだ。
「どうかなされましたか? ハルト様」
「あ、いや。何でもないよ!?」
俺の勝手な妄想でつい声が出ちゃっただけなんだから! 慌てて取り繕うけれど、シアの目がなんだか鋭い気がする。気になるけれど、ベッドの上に上半身を起こす。寝たままなんて行儀が悪過ぎる。
「本当に?」
「あ、ああ……もちろん」
何だろう、腹の奥の隠しておきたいことを探られているような気がする……俺の隠したいこと、今はあれだ。もし、ジゼルさんやスーリエを誘ったら二人は提案に乗ってくれるだろうか、って思ったことだよな?
「ハルト様、どうなさったのですか? 私に教えてくださいませんか?」
「え……あ、ああ」
何だろう、シアの声がやけに響いてる聞こえる……何か、何か起こっている……それはわかる気がする。でもシアだ、シアだぞ? 俺の嫌がることは一つもしなさそうなシアが俺の不利になることはするかな……? いや、しないだろうなぁ……なら、シアに聞いてみてもいいかも知んないよな?
「なあ、シアなら……どうする……? 俺がさ、エッチなこと、しようって、いったら……」
あれ? だからって俺、そんなこと聞いていいのか? 何か、何かのスキルで隠し事を喋らされている気がする……。
「あ、あのハルト様……エ、エッチとは。もしかして、私がハルト様を……抱いて、良いと……?」
何でシア、しどろもどろなんだあ? もし、仮にの話だよ? 今、どうこうしようって訳じゃないのに……ていうか、どっちなんだぁ?
「うん、そう……」
「喜んでっ!!」
「うわっ?!」
バチン! と大きな音がして何かが弾けた。俺の言葉に被せ気味に答えたイエスの台詞だが、あれ? 俺、何言ってんだ?!
「今すぐですか! ええ、お任せ下さい! 一晩中気持ち良くさせて差し上げますよ!!」
「ひいっ?! ち、ちが、違うっ! 例えば、例えばの話ぃーー! シア、ちょ、ちょっと! 話を聞いてうわ、うわーーっ! 誰かぁーー!」
がばっ、というかドサッというか、上からシアにのし掛かられて、俺は情けなくも悲鳴を上げてしまった。
「くそっ奴等め! 詰めてやがったか! いやまだ今ならイッパツくらい……っ」
「シア?! ちょ、ちょっとやめて?!」
無理矢理ズボンを引っ張らないでっ裂けちゃうっ!
「ハルト様ッハルト様ぁーー!」
「ちょ、ちょっと! きゃーー!」
俺の悲鳴か、裂かれる絹の悲鳴か。ビリビリになったズボンを死守していると扉がバカンっ! っと音を立てて破壊された。
「執事め! 何か企んでると思ったらやはりか!」
「あなた、ハルト様に何をしようとしてらっしゃいました?!」
どうやらジゼルさんに体当たりされて扉は壊れたようだ。壊れた破片と共にジゼルさんとスーリエが飛び込んでくる。君達も存外速いな?!
「お前らだって隙あらば忍び込もうとしていたくせに!」
「うっ」
「そ、そんなこと、ああああありませんんんん」
「何より近くにいただろ!」
シアによく分からない指摘をされ、ジゼルさんは言葉に詰まるし、スーリエは分かりやすく動揺している……。
「お前に言われたくない!ハルト様から離れろ、獣め!」
「ううっ! 千載一遇のチャンスだったのに……」
場は混乱真っ只中だが、俺の疑問は一つ解消された。誘えば応じて貰えそう、ということだけはよーく分かった気がする。
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