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1 晴翔と青葉
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俺、柏木晴翔(はると)と柏木青葉(あおば)は兄妹だ。俺は今年で24、青葉は明日で18歳になる。子供の頃に両親は離婚し、俺と青葉は母さんについていき、母子家庭で暮らしていた。そんな母さんを2年前に事故で亡くし、今は青葉と二人暮らし。俺達は二人で協力しながら生きてきた。
「いいでしょう! 兄ちゃん」
「あー……もう、分かったよ」
「やったぜ!」
青葉は女子高生なのに少し口が悪く……ちょっと癖が強い。
「この百合エロゲマジでやりたかったんだ! 健全版じゃもう我慢できねぇ!」
「あはは……」
女の子同士がイチャイチャする、俗にいう百合が大好きなのだ……それでも俺に迷惑をかけない配慮なのか、律儀に18歳になるまでR18には絶対手を出さないでいた。
そんな青葉の誕生日は明日。明日18歳になる。だから明日パッケージを破るという約束で、今日の仕事終わりに待ち合わせ、青葉一押しの18禁ゲームを買ったのだ。
「へへへ、やったね!」
「明日はやり込みたいんだろ? この後、誕生日の前祝いで飯でも食いに行くか?」
「わお! 兄ちゃん、分かってるー! ファミレス行こう、ケーキも頼んでいいか?!」
「勿論だ。でもケーキくらいは明日の方が良いんじゃないか?」
「明日も食うけど、今日も食うんじゃい!」
大型量販店の袋をご機嫌にブンブン振り回し、青葉は歩く。母さんの遺産はあるけれど、そう多くない。何かと辛抱しながらの暮らし。今日くらいは奮発したっていいだろう。青葉もそれは分かっていて、ウチの食卓は結構物悲しい……でも文句ひとつ言わない。ついでに青葉は頑張って頑張って授業料の安い大学へしかも奨学金で進むことが決まっている。女子高生なのに友達と遊び回るのも控えめにしているのも知っている……。
「青葉、信号」
「おっ、やべぇやべぇ。ゲームするまで死ねねぇぜ!」
「ははは」
俺と青葉は交通量の多い交差点で立ち止まる。ファミレスまではもうすぐ、何を食べようか? なんて他愛もない話をしていたその時だった。
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
俺達は誰かに思いっきり後ろから突き飛ばされ、道路に身を投げ出される。
「う、うわーーーーっ!」
「きゃーー!!」
運も悪かったんだろう。大型のトラックがちょうど走り込んでくるなんて。
幸いなことに、痛みは感じなかった。
「あ、あお、ば」
「にぃ……ちゃん、はは……死んでも、死にきれ、ないよぉ……」
俺達の意識は途切れ、真っ暗になった。
「うん、君らじゃなかったの」
「押した人?」
「そうなんだよ、そいつも自業自得でさ勢い余って転がり出て死んだけど、逃げられた……ごめん」
「謝られても、どうしようもないんでしょう?」
「……ごめん……」
青葉の声と、やけに響くきれいな女の人の声が聞こえる。ここは病院か? 俺らかなりやばそうな感じだったけど、何とか生き残れたのか?? 入院費どうしよう、会社は欠勤しないといけないな。クビになんなきゃいいけど……。
「あおば……無事?」
とりあえず俺の口から出たのは妹の無事を確かめる言葉だった。
「兄ちゃん、起きたか? 無事じゃないよ。見てくれ、ゲームがぐっちゃぐっちゃ。これじゃ出来ねぇんだよ」
「はは、ゲームならまた買えばいいさ。お前が無事で本当に良かった」
「兄ちゃん、もうゲームは買えないし、私らも無事じゃなかったんだよ」
目を開けて妹の姿を確認する。怪我もなくていつも通り、壊れたゲームを悲しそうに持っている。
……そう、怪我ひとつしていない。ゲームは原型がわからないくらいに酷い有様なのに。そして、体が微妙に透けて向こう側が見える……そして頭の上に漫画で見たことのある天使の輪が一つ、柔らかな光を放っていた。
「ま、まさか」
「あなた方のイメージにある天国という形を取らせていただきました。柏木晴翔、柏木青葉……死ぬ運命ではなかったあなた方を手違いで殺してしまった、許してくれとはいえない」
俺達は死に、別の世界に移動することになった。
「いいでしょう! 兄ちゃん」
「あー……もう、分かったよ」
「やったぜ!」
青葉は女子高生なのに少し口が悪く……ちょっと癖が強い。
「この百合エロゲマジでやりたかったんだ! 健全版じゃもう我慢できねぇ!」
「あはは……」
女の子同士がイチャイチャする、俗にいう百合が大好きなのだ……それでも俺に迷惑をかけない配慮なのか、律儀に18歳になるまでR18には絶対手を出さないでいた。
そんな青葉の誕生日は明日。明日18歳になる。だから明日パッケージを破るという約束で、今日の仕事終わりに待ち合わせ、青葉一押しの18禁ゲームを買ったのだ。
「へへへ、やったね!」
「明日はやり込みたいんだろ? この後、誕生日の前祝いで飯でも食いに行くか?」
「わお! 兄ちゃん、分かってるー! ファミレス行こう、ケーキも頼んでいいか?!」
「勿論だ。でもケーキくらいは明日の方が良いんじゃないか?」
「明日も食うけど、今日も食うんじゃい!」
大型量販店の袋をご機嫌にブンブン振り回し、青葉は歩く。母さんの遺産はあるけれど、そう多くない。何かと辛抱しながらの暮らし。今日くらいは奮発したっていいだろう。青葉もそれは分かっていて、ウチの食卓は結構物悲しい……でも文句ひとつ言わない。ついでに青葉は頑張って頑張って授業料の安い大学へしかも奨学金で進むことが決まっている。女子高生なのに友達と遊び回るのも控えめにしているのも知っている……。
「青葉、信号」
「おっ、やべぇやべぇ。ゲームするまで死ねねぇぜ!」
「ははは」
俺と青葉は交通量の多い交差点で立ち止まる。ファミレスまではもうすぐ、何を食べようか? なんて他愛もない話をしていたその時だった。
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
俺達は誰かに思いっきり後ろから突き飛ばされ、道路に身を投げ出される。
「う、うわーーーーっ!」
「きゃーー!!」
運も悪かったんだろう。大型のトラックがちょうど走り込んでくるなんて。
幸いなことに、痛みは感じなかった。
「あ、あお、ば」
「にぃ……ちゃん、はは……死んでも、死にきれ、ないよぉ……」
俺達の意識は途切れ、真っ暗になった。
「うん、君らじゃなかったの」
「押した人?」
「そうなんだよ、そいつも自業自得でさ勢い余って転がり出て死んだけど、逃げられた……ごめん」
「謝られても、どうしようもないんでしょう?」
「……ごめん……」
青葉の声と、やけに響くきれいな女の人の声が聞こえる。ここは病院か? 俺らかなりやばそうな感じだったけど、何とか生き残れたのか?? 入院費どうしよう、会社は欠勤しないといけないな。クビになんなきゃいいけど……。
「あおば……無事?」
とりあえず俺の口から出たのは妹の無事を確かめる言葉だった。
「兄ちゃん、起きたか? 無事じゃないよ。見てくれ、ゲームがぐっちゃぐっちゃ。これじゃ出来ねぇんだよ」
「はは、ゲームならまた買えばいいさ。お前が無事で本当に良かった」
「兄ちゃん、もうゲームは買えないし、私らも無事じゃなかったんだよ」
目を開けて妹の姿を確認する。怪我もなくていつも通り、壊れたゲームを悲しそうに持っている。
……そう、怪我ひとつしていない。ゲームは原型がわからないくらいに酷い有様なのに。そして、体が微妙に透けて向こう側が見える……そして頭の上に漫画で見たことのある天使の輪が一つ、柔らかな光を放っていた。
「ま、まさか」
「あなた方のイメージにある天国という形を取らせていただきました。柏木晴翔、柏木青葉……死ぬ運命ではなかったあなた方を手違いで殺してしまった、許してくれとはいえない」
俺達は死に、別の世界に移動することになった。
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