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19 もっちゃっもっちゃっ

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「兄ちゃん……」

「お姉ちゃん……」

「うっ!」

「ご、ごめんね?みんな……わ、私達魔王軍と戦う為に強くならなきゃ……」

 弟妹達の悲しみの眼差し、眼差し、眼差し……。

「タトぉーーーー!」

「なんか、ごめん」

「こんな目を向けられたら食えねえだろ!普通!!」

 虹のモヤを纏ったミニトメィトは一房だったので8個ついていた。コーディ達に二つづつ食べてもらおうと思ったが、見つかってしまった。

「あーーっ!キラキラお野菜!私にもちょうだい!」

「俺にも!俺にもーーー!」

「コラっ!あなた達はこないだ食べたでしょう?!」

 母さんと姉さんが止めてくれたけど遅かった。

「だって!食べたい!食べたい!」

「食べたーい!!」

 騒ぐ暴れる、まだ小さい子供達はこのとてつもなく美味い野菜が大好きだ。勿論俺も好きだけどさ。

「仕方がない、コーディ達は一個づつ食べてくれ。残りの四つは切ってチビ共に食わせよう」

「うう、そうしてください。あの子達の前で私達だけ食べるのは心が痛すぎます」

 マリアンヌも涙ぐみながら言ってくれた。すまん……!


「う、ま、い、ぞーーーー!」

 口からビームが出そうなほど仰け反って大袈裟にコーディは叫ぶ。でも本当に美味いんだよなぁー俺も出来れば食べたい!

「な、何かしら…。この小さな粒を噛み潰した時、溢れんばかりの甘い果汁!」

「うめぇ!じゅわってしてすげー美味い!」

「なんなのかしら?食べた事があるような、ないような……とにかく美味しいわ……もっと食べたい……」

 4人とも小さいミニトメィトをもっちゃもっちゃとずーっと口の中で噛み締めている。

「おいちー!」

「ほっぺ落ちちゃうー!」

 チビ共ももっちゃもっちゃずーっと齧っている。そうだな、噛み締めるが良いぞ、うん。

 口の中のトメィトが無くなってもしばらく目を閉じて余韻を味わっていたようだ。

「あっ!そうだよ、マリアンヌ!鑑定してみてくれ」

 最初に我に返ったコーディがまだぽけーっと口を動かしていたマリアンヌに声をかける。

「え?あ、はい!「鑑定!」コーディ、勇者、15歳。レベル100!突破しています!99を突破しています!!」

「来たーーーー!」

「マジか!俺はどうだ?!マリアンヌ!」

「はいっ!「鑑定!」カナン、戦士、18歳。レベル100!」

「おおおーーー!来たぞー!」

「わ、私もよね?!」

「はい!シシリー、魔法使い、17歳。レベル100です!!」

「嘘、本当に……す、凄い、凄いわ!私達伝説の勇者なんだわ!!」

 三人とも100ならきっとマリアンヌも100だろう。良かった、カンストは突破したみたい。

「これなら、きっと魔王にも勝てますよね!」

 嬉しそうにマリアンヌははしゃいでいるが、俺はそんなに甘いもんじゃないと思っている。

「どうした?タト。そんな険しい顔して。便秘か?」

「野菜たくさん食うからそれは無い」

「確かに!」

 確かにじゃねーよ。阿呆コーディ!

「まあ、聞けコーディ。良くさRPGなんかでボスキャラってさ、レベル高いだろ?プレイヤーキャラのカンストが99でもボスキャラは150レベルとか。相手は魔王なんだろ?あり得そうじゃないか?」

「あ、ある!それあるかも!で、改心して仲間になったらレベル1になってる奴!」

「あれ腹立つよなー!」

 じゃなくて!

「ミニトメィト一個でどこまで上げれるか分からないけれど、これで絶対勝てるとは限らないと思うんだよ」

 はしゃいでいたマリアンヌとシシリーもゆっくり動きを止めた。

「俺はコーディ達に死んで欲しくないし、この村も無くなって欲しくない。もっとレベルを上げるべきなんじゃないかな……?」

 慎重な意見かも知れないけど、俺達がいる世界にはゲームの時のようにコンテニューしたら生き返れる、そんな機能があるようには思えない。


 いくら阿呆でもこれだけ付き合いのある幸田コーディが死ぬのはやっぱり嫌だ。


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