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14 熊鍋、食べるよ

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「はいやー!」

 ずばっ!ずばば!庭の片隅にある解体小屋の梁に熊を吊り下げて、姉さんが華麗に解体している。

「確かに熊って大きくて重いけど……私達、持てるわ……」

「知らなかったよな……レベルがそんな事になってるなんて」

 横で毛皮や肝なんかを受け取りつつ、溜息をついた。

「……待てよ、てぇことは俺の野菜を分けた近所の連中は……?」

「ポン婆ちゃんとか結構食べたよね?」

「婆ちゃんすげー強かったりして!」

 あはははは!と姉ちゃんと笑ったけど、怖くてマリアンヌさんに鑑定してくれって言えなかった……。
 そう言えば婆ちゃん、歳のくせに足早いよな……?最近体が痛いとか聞かなくなったな……?

「ほい、一丁上がり!」

「ご苦労さまー」

 流石姉ちゃん、熊を綺麗に解体出来た。

「今日は熊鍋ね!お客さんも多いし」

 お、良いねぇ!肉食いたいもんな!

「野菜あったかなー?」

 ネギィにゴーボー、デェーコンにキャロ……うんうん、どれも良い感じに庭で育ってた。俺は慣れた手つきで抜くけど、デェーコンは途中で折れちゃった。しゃーない掘り出そ。

「あと、トーフな……」

 神ちゃんが「ユドーフってなんだぁーーー!」と叫んだ事があって、あいつまた事象を歪めて作ってんだよ、トーフの実をさ。
 白っぽい椰子の実みたいなのにふるふるの柔らかいトーフがみっちり詰まってる。充填豆腐って感じのやつ、ちなみにこれは絹。向こうの実の皮に軽い編み目みたいなのが付いてるのが木綿。明日くらいが食べ頃かな……?

「タトー!今日の夕飯は熊かーー!?」

 元凶が家の中を飛び回ってる。こんなムチムチのちんちくりんなんだけれど、本当に神様なのかなあ?

「熊鍋にしようって。野菜をいっぱい入れて食べよう、お客さんも多いし、きっとコーディ達暫くいそうだもん」

「野菜食ってワーワー言ってる」

「ま、そりゃねえ……」

 あの後暫く正座させられてコーディ達のレベルアップ物語を聞かせられた。

「俺達はなあ!ただのんびり過ごしてたんじゃないぞ!!毎日毎日ダンジョンに籠り、たくさんの敵と戦って!戦って!戦ってぇ!!!」

「そうよっ見なさいよ、私達なんて年頃の女の子なのに、体は傷だらけ……。服の下は見せられないわ……でも、この世界の為に、魔王を倒さなければって……」

「それなのに……野菜食べるだけで……レベルがあがるだなんてー!」

「お、このマルハッカ大根美味いなぁ~ミッソンもしょっぱいんだけれど美味い!もっと食べたいなあ」

 泣いたり怒ったりされながら、むしゃむしゃ、むしゃむしゃ野菜を食べては

「ピロンっていったああん!!」

「見てみます……上がってます、あがってまあああす!」

「うわあああん、タト!おかわりぃ!」

「もうねえよ!!夕飯に食え!」

 大賑わいになってしまった……。


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