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9 とうがらし、ドン!

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「タト!頼む」

「任せろ」

 俺はちっちゃいお手製の弓に特製の矢をつがえた。

「タト!そんなんで熊なんか倒せねぇだろ!」

 だいぶ後ろからコーディの声が聞こえたけど、まあ任せておけ。

 びょん、と変な音が鳴ったけど、俺の放った矢は熊達の真ん中ら辺まで飛んでってぽひゅっと弾けた。

「熊……ってあれ、熊じゃねーよ!モンスターだ!デッドリーベアの群れじゃねーか!」

 コーディうるさい。あれはただの熊だろ、しょっちゅう出てくる奴らだぞ。

「下がって!タト君!あんな大群、まずいわ!」

 コーディの仲間の女の人が前へ出ようとするから俺は慌てて止める。

「それ以上前へ行かないで!トウガラシを打ち込んだから!」

「と、トウガラシ……?」

 よく見なくてもわかるんだけど、俺が矢を打ち込んだ場所から赤っぽい煙が上がっているんだよね。

「鏃をトウガラシにした特製なんだ。衝撃で弾けるように工夫してあるから、あの霧が晴れるまで近づいたら駄目」

「と、トウガラシってあのトウガラシでしょう?確かに辛いかも知れないけどその程度じゃ……え?!」

 グオオオオ!グギャアア!と熊達の辛い叫び声が響き渡る。

「タトんちの庭のトウガラシ、めちゃくちゃ辛いんだよなー」

「間違えて食った村長の息子、酷い目にあったっけな!」

「ちげーよ、あれは辛い種類なの。あんなんバリバリ齧るのが間違ってんだよ」

 なんかデス系のタバスコの材料になるとかならないとかの種類らしい。弟や妹達に絶対に触るなって教えてあるくらい辛い。

「え、嘘」

 赤い霧が晴れて行く。そこには何か悲惨な表情で白目を剥いた熊達の死体と、死にきれずのたうち回る熊達、しっぽを丸めて逃げ帰る熊達の姿がある。いつも通りだ。

「んじゃ、倒せそうな熊達、狩っちゃおう」

「オーケー」

 後は闇雲な突進に気をつけて苦しんでいる熊達を
遠巻きに矢を射かけて終了だ。

「大漁なんだけど、この熊肉辛いんだよなあ!」

「水でさらせよ。辛み抜けるだろう……?熊なんて基本臭いがきついんだからいっぱい血抜きしないと」

「そうなんだけどさあ~」

 仕方がないだろう?トウガラシ弾で倒してるんだから。わがまま言うな!

「爆発地点から離れた熊を食えば良いだろ?」

「そうするよ」

 熊狩りに出てたのは全部で10人。熊は20匹はいるかな……?

「この爆心地近い熊達は色々無理だから近寄らないでおこう」

 心なしか周りの草も枯れてる……木も枯れてる……気のせいだな!

 みんなはそれぞれに引きずったり、台車を家から持って来たりと熊を持って帰った。俺も一匹引きずってる。後でもう一匹分取りにこよ。

「お待たせー。コーディ久しぶりー。大きくなったなぁお互いに。てかやっぱそっくりだなぁ、流石双子!」

「タ、タトさん?なんでそんなに魔獣狩ってるのかな……?しかも、なんて方法で……」

 まだ言うか。

「ただの熊だって!こいつらいつも来るんだよ!今月だけでもう2回来てるぞ」

「はあ?!そいつら魔王軍の魔獣部隊じゃねーのか?!」

 そんな訳ないだろう?こんな平和な村に魔王軍が何しに来てんだよ。

「まあ、都会に行っててコーディは村の事知らないのは分かるけどさ。まあ、家に帰ろう?狭いけど歓迎してするよ、何もないけどね!」

 まだコーディはなんだかんだ言ってるし、コーディの仲間達は青い顔してるしだけど、ここで熊を引きずったまま立ち話してるのもなんだからね。

「あ……うん……」

 とりあえずコーディたちと一緒に帰路についた。





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