【本編完結】オマケ転移だった俺が異世界で愛された訳

鏑木 うりこ

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その他の話

11 ヒューの大冒険 11

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「僕はねえ、アディのお嫁さんになるんだから、他の獣人国には行かないよ!あ、でもアディは僕のこと嫌い……? 」

 狐さん達を撃退して僕はアディの国へ戻ってきた。全員生かして連れて帰ってきたからお城の偉い人が交渉とかしてくれるらしい。
 慰謝料とかぶんどって欲しいな!

「嫌いではない、ヒューの事は好きだよ」
「じゃあ、がぶっと一発行ってくんない!?」
「だがヒューはアルファだから……」
「大丈夫!なんとかなるから!さあっ」

 そしてアディの部屋で僕は首の後ろをアディの前に出している。

「がぶっと行くってカイリさんに聞いたんだから、やっちゃって!!」
「う、うう~ん……アルファがアルファを噛んだところで何が起こると」
「良いから早く!! 」
「わ、分かったから」

 ほとんどキれるみたいに大声を出しちゃったけど、アディはかじってくれた。

「ん、ンんんん……?もっと強く!」
「こう……? 」
「いたっ……いたたた……アディ痛い、ア、アディ……ッアディ! 」

 途中から物凄く強い力で噛まれて凄く痛かったけれど、アディは放してくれなかった。

「う、あ……?」

 荒い息が首筋にかかって、僕の言葉を聞いてないみたいなアディが少し怖かったけれど、僕の体に回された手がいつものアディと同じだったから力を抜いた。

「アディ……いつもありがとう……いつも優しくしてくれて嬉しい……アディ、大好き……」

 まだ夜でもなかったのに、僕はアディに噛まれたまますーっと寝てしまったらしい。痛いはずだったのに、その時は全然痛くなかったから不思議な感じだった。


「うにゃ……」
「ヒュー!大丈夫か! 」
「うん? あれ、ここアディの部屋?あ、僕寝てたの? 」
「ああ、首は……」

 目が覚めたら次の日で、僕はアディのベッドをほぼ占領して寝ていたらしい。首には白い包帯が丁寧にまかれていて、首の後ろにはきちんと噛んだ痕が残っている。

「……なんか全然変わらないね」
「そりゃあアルファがアルファを噛んだところで変わる訳がないだろう」
「そっかあ……じゃあこれから頑張るね! 」

 今日からアディのお嫁さんになる為にが頑張るぞ!!

「頑張ってどうにかなるものなのかな……」
「まずはお勉強する!キーチェだってしてるんだ。僕だって少しくらいするぞ」
「ふむ、それは頑張って貰おうかな?」
「うん! 」

 今日からの僕は一味違うぞ。まずは心配かけた皆に謝って、もうしないって誓ってから朝ごはんを食べよう。それから剣の稽古をしてから勉強するんだ。アディの役に立つためにね!

「アディ、皆に謝らなくちゃ」
「ふふ、先に朝食の方が良いと思うな。ほら、お腹が空いているだろう?いい匂いがここまで漂ってくるようだよ」

 へ?厨房も食堂も遠いぞ~アディ。

「こんな所まで朝ごはんの匂いがするわけないでしょー。アディったら鼻だけ獣人になったのかい?」
「あれ……?」
「でもお腹は空いたかも、ご飯に行こ-!」

 スンスンと鼻を鳴らしているアディと一緒に歩きだす。ほんとに獣人みたいなことしてるなあ、アディは。カイリさんを嗅ぎ回るリオウ王太子みたいだ。

「じゃあこの匂いは……?え……」
「今日の朝ごはんはなにかな~!僕の大好きなでっかいソーセージかな~?ぷるるんの目玉焼きかな~」

 その時、アディの目は目玉焼きみたいになってたらしいけど、朝ごはんの事しか考えてなかった僕はすっかり気が付かなかった。

「早くいこーアディ」
「え……あ、うん……そう、だね。ヒュー」
「ん? 」

 なんだか戸惑ったようなアディが不思議だったけれど、アディの戸惑いの正体を知るのはまだまだ後で、赤ちゃんがキャベツから産まれてこないのを知るのはそれよりもっともっと後のことだった。



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