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その他の話
10 ヒューの大冒険10
しおりを挟む「僕が出たらすぐに扉を閉めて鍵をかけて。もしアディが捕まったら、僕負けちゃう」
「……分かった」
まだ心配そうに眉毛をへにょっとしているアディに笑いかけて、僕は馬車の扉から飛び出した。結構な距離をジャンプ出来るものだなあなんて思うけれど、数日遊んだキーチェとかケイティちゃんの方が僕よりうんとジャンプしたっけ。
「さあて?どこの誰だい?僕を僕だと知っての襲撃みたいだけど、僕はアディほど優しくないんだからね?」
「ヒュー様!なぜ出て来られた!早く馬車にお戻りください!」
騎士達が慌てて振り向くけれど、もうみんなあちこち怪我をしているし顔色も悪いじゃない。きっと何度か打ち合って駄目だなって分かったんでしょ?
「ヒュー!?するとあの男が異世界人か」
騎士が僕の名前を呼ぶから皆僕に気が付いたみたい。今見えているだけで剣を持っているのが6人、魔法使いっぽいのが二人、木の上から弓をで狙っているのが三人、あと隠れて見守っているのが一人。うん、ちょうどぴったり。木の上の三人と隠れている人は気配を消しているつもりなんだろうけど、漏れ漏れだからすぐ気がついちゃった。
「あいつだ、あいつを捕らえろ!」
剣を持って一番後ろにいる奴がきっと命令する人でこの場で一番偉い人で隊長さん。実力はその人の前にいる人が一番強いかな。
「騎士さん達、下がって。君らじゃ勝てない。君らは馬車を守って欲しいな、わかるだろ?」
僕がまっすぐ敵の一番偉い人を睨みながら剣を抜くと、皆ハッとして頷きながら後退した。そうそう、アディをしっかり守ってくれれば僕は大暴れできちゃうからね。
「この人達……獣人、狐の獣人かな……僕ね、リオウ王太子に聞いたんだ。獣人との渡り合い方ってやつをさ」
多分これが初めての実践になるんだろうけれど、なんだろう?全然負ける気がしない。だって怖くないんだ、キーチェより、ケイティより……その下の兄弟たちより全然この狐獣人たちは怖くない。
「かかれ!」
一斉に飛び掛かってくる狐さん達を低い姿勢で一歩前に踏み込んで躱す。うん、なんてことはない。
「歯向かう獣人がいたらぶん殴って黙らせるのが一番なんだって!獣人は強さが正義だから……強い人が正しいんだってさ!! 」
フォンッと剣を横に振る。キーチェが「わああ、びっくりしたあ!靴の底が鉄じゃなかったら服が切れてたよ」ってくらいの早さの牽制だったのに、二人の狐がまともに吹っ飛んで立ち木にぶつかった。
「ギャン!」「キャインッ!」
「ありゃ?これくらいでも避けれないのか……まあ真っ二つにはなってないよね?結構痛そうだけど」
向こうの隊長さんが青い顔をしたみたいだけど、僕はどれだけ見くびられていたんだろうなあ?
「つ、強い……!援護を」
「させないよ!」
その辺の石を二つ拾って、魔法を使おうとしていた狐さんにぶつける。キャンッって声が二つしたから命中したみたい。
「な、なぜ場所が……!」
「あんだけ殺気が出てたらすぐわかるでしょーに。ちょっとくらいの怪我は我慢してほしーものだよ」
そのまま踏み込んで、剣を持った狐さん達をベチンベチンと叩いてやった。剣の刃の部分じゃなくて平らな所で叩いたのに、皆一発で目を回してしまった。
「ほいほいっと」
「うっ!」
隊長さんは剣の柄で殴るとそのまま気を失った。やばいと悟ったのか伝令役っぽい人がそっと駆け出そうとしたので、流石にその人の足は切っちゃった……あっ切り落としたんじゃないよ、走れないようにしただけ!
「撃ち落とされたくなかったら降りといで! 」
木の上に隠れていた弓を持った三人に呼び掛けると一人は一生懸命弓を射かけて来たんで、その辺に落ちてた枯れ木をぶん投げて落としてやったら、残りの二人は手を上げて出て来た。
「よし、これで近くには誰もいない。皆-縛るの手伝って~~」
「……ヒュ、ヒュー様ってこんなにお強かったんですね……」
「えっへん!凄いでしょ」
そう胸を張ってみたけれど、今日の事はキーチェやケイティちゃんと遊んだから出来たことがほとんどだった。流石カイリさんの子供達は凄い~
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