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その他の話
3 ヒューの大冒険3
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ガタゴト揺れる乗合馬車は乗り心地が悪かった。お城から城下町まで向かうアディと一緒に乗った馬車が特別だったとやっと気が付いた。僕、やっぱり大事にしてもらったんだ。
「貴族とお話?できる訳ないじゃん!だって貴族だよー、住む世界が違う」
「だよねー毎日美味しいものを食べてパーティして過ごしてるんだろ?良いよな、羨ましい!」
「……」
毎日パーティなんかしないし、一生懸命仕事をしている。終わらなくて徹夜で書類を書いている部署もあるし、騎士達は大怪我を負って帰ってくる人もいる。僕はこの馬車に乗り合わせた人達の話を静かに聞いていた。僕の暮らしていた環境はとても特別だった。何しろ僕がカイリさんを殺してしまったと思い込んで6年間ずーっと引きこもりを出来たのは全部アディのお陰だった。普通ならどんなに嫌でも働けと引っ張り出されて働けなきゃ捨てられる、そういう事らしい。
「僕は……本当に役立たずだな……」
「元気出せよ、おまえにも何かできることがあるだろ?それを生かせばいいんだ。ティーゲはいいぞ、最近充電池とかいうのが開発されてな、魔道具が安く手に入るようになったんだ。きっとあそこは発展していくぞ」
「なんでも行方不明になっていた王太子の運命のつがい様が大した人物で充電池もそのつがい様が開発したんだと、すげえよな」
「……うん、すごい……カイリさんは、とてもすごい……」
みんな口々にカイリさんを褒めたたえている。僕は……僕はやっぱり役立たずだ。
ティーゲまでの道のりは魔物に襲われることなく順調に進んだ。
「大抵鳥の魔物に位は襲われると思ったんだがなあ……? 」
「茂みががさついた時もあったけれど、逃げてったんだよなあ……」
「……客の中に魔物が恐れるくらいの強い力を持ったヤツがいたのかな? 」
「んな馬鹿な」
馬車を運転していた人達が何か話していたけれど、無事についたなら良かったじゃないか。一緒に乗ってきた人たちに手を振って僕はまっすぐティーゲ王宮を目指した。だってカイリさんはリオウ王太子のお嫁さんになったんだから王宮に住んでいるはずだ。
「……そういえば、王宮に僕、入れて貰えるわけないよね」
門番さんに止められて、やっと気が付いた。ボクがいくら名乗ってもティーゲの人達には僕が何者か分からないのは当たり前だ……ボクは馬鹿だ、役立たずの上に馬鹿なんて……もう死にたい。
「わっ!物凄く強い人がいる!ねね、おにーさん何者!? 」
「え?」
上から声がかかった。見上げるとお城をぐるっと囲む城壁の上から誰かが僕を見ている。誰だろう?ちょっと逆行になって良く見えない……?
「おにーさん!キーチェとあそぼー! 」
「ん?わっ!!!」
何かが降ってきた!形は人間だけれど、尻尾があるから獣人だ!ぶうん、と音が鳴るくらい尻尾を振り、空中へ飛び出した、良い身のこなし!くるくる回って、きっと無傷で着地する。
なんか凄い子が僕の前にすたっと降り立った。
「貴族とお話?できる訳ないじゃん!だって貴族だよー、住む世界が違う」
「だよねー毎日美味しいものを食べてパーティして過ごしてるんだろ?良いよな、羨ましい!」
「……」
毎日パーティなんかしないし、一生懸命仕事をしている。終わらなくて徹夜で書類を書いている部署もあるし、騎士達は大怪我を負って帰ってくる人もいる。僕はこの馬車に乗り合わせた人達の話を静かに聞いていた。僕の暮らしていた環境はとても特別だった。何しろ僕がカイリさんを殺してしまったと思い込んで6年間ずーっと引きこもりを出来たのは全部アディのお陰だった。普通ならどんなに嫌でも働けと引っ張り出されて働けなきゃ捨てられる、そういう事らしい。
「僕は……本当に役立たずだな……」
「元気出せよ、おまえにも何かできることがあるだろ?それを生かせばいいんだ。ティーゲはいいぞ、最近充電池とかいうのが開発されてな、魔道具が安く手に入るようになったんだ。きっとあそこは発展していくぞ」
「なんでも行方不明になっていた王太子の運命のつがい様が大した人物で充電池もそのつがい様が開発したんだと、すげえよな」
「……うん、すごい……カイリさんは、とてもすごい……」
みんな口々にカイリさんを褒めたたえている。僕は……僕はやっぱり役立たずだ。
ティーゲまでの道のりは魔物に襲われることなく順調に進んだ。
「大抵鳥の魔物に位は襲われると思ったんだがなあ……? 」
「茂みががさついた時もあったけれど、逃げてったんだよなあ……」
「……客の中に魔物が恐れるくらいの強い力を持ったヤツがいたのかな? 」
「んな馬鹿な」
馬車を運転していた人達が何か話していたけれど、無事についたなら良かったじゃないか。一緒に乗ってきた人たちに手を振って僕はまっすぐティーゲ王宮を目指した。だってカイリさんはリオウ王太子のお嫁さんになったんだから王宮に住んでいるはずだ。
「……そういえば、王宮に僕、入れて貰えるわけないよね」
門番さんに止められて、やっと気が付いた。ボクがいくら名乗ってもティーゲの人達には僕が何者か分からないのは当たり前だ……ボクは馬鹿だ、役立たずの上に馬鹿なんて……もう死にたい。
「わっ!物凄く強い人がいる!ねね、おにーさん何者!? 」
「え?」
上から声がかかった。見上げるとお城をぐるっと囲む城壁の上から誰かが僕を見ている。誰だろう?ちょっと逆行になって良く見えない……?
「おにーさん!キーチェとあそぼー! 」
「ん?わっ!!!」
何かが降ってきた!形は人間だけれど、尻尾があるから獣人だ!ぶうん、と音が鳴るくらい尻尾を振り、空中へ飛び出した、良い身のこなし!くるくる回って、きっと無傷で着地する。
なんか凄い子が僕の前にすたっと降り立った。
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